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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
24/353

24 増員 1

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

強化と特訓により敵の親衛隊を正面から撃破したジン達だが、

それゆえに次なる刺客が放たれる事となった……。

「あぁ……また女の子になった……」

 二段ベッドの上にぺたんと座り込み、シャツの襟から胸を覗きながら溜息をつくナイナイ。

「ゲッゲー」

 向かいのベッドで応えるように鳴くダインスケン。

「ウェヘヘ、ずっと女でいる方が良いと思うっス」

 ダインスケンの上のベッドで涎を垂らしながら下卑た笑みを浮かべるゴブオ。

 その目はナイナイの細く華奢な太腿(ふともも)にくぎ付けである。寝間着に着替えるために上下ともに薄い下着だけであり、当然、足は丸出しだった。背中や腹もちらちら見えている。


「最近は女に戻るのが早いな。前は寝るまで男だった筈だがよ」

 二段ベッドの下で寝そべりながら言うジン。だが手にした本を読みながらなので、どこか上の空っぽさがある。

 本はヴァルキュリナから貰った観光ガイドだ。向かうスイデン国含めて数か国の物をまとめて借り、ここ数日寝る前に読んでいるのだ。


 剣と魔法と巨大ロボのファンタジー世界、インタセクシル。

 ここに召喚されて二十日以上が過ぎているが、ジン達が知っているのは艦内と荒野、壊滅した基地に街一つ。これでこの世界の事がわかったとはとても言えない。

 だからジンは今いる場所、この時代について少しでも知ろうとしていたのだ。


(ヴァルキュリナの下にずっといるかどうか、ちと雲行きに怪しい所もあるからよ……)

 魔王軍の基地で得た()()。それが自分達に明かされない事で、もやもやした不信感が拭えなくなっていたのだ。ヴァルキュリナ自身は正直だし悪人でもないだろうが、属する組織がある以上、やはりそれの利益をジン達より優先せざるを得ないだろう。


 よって……場合によってはこの艦を降りる事を、ジンは視野に入れ始めていた。この世界の事を知ろうとしているのもその一環である。

 そして現時点でわかった、重要な事が一つ。


 異世界からの召喚魔法は発達しているが、元の世界に帰す送還魔法はほぼ無いらしい。確実に成功した、という例は公式には皆無だという。


(そりゃ、確認のためには送った先の世界を調べなきゃならんから、断言できる例は無いのかもしれんが……好きに引っ張り込んでおいて帰せない事に誰も疑問をもたんのか?)

 考えながら、ジンの視線は自分の腕――甲殻に覆われた異形の右腕に向く。

(まぁ今すぐ戻されたら逆に困るが。この腕、ちゃんと治るんだろうな?)


 そして重要な事がもう一つ。

 この世界は結構文明が発達しているようだ。科学の代わりに魔法を用いてではあるが、意外と近代的な道具もある。


 例えば――スマートフォンの代わりを、魔力を籠めた水晶玉でだいたいできるのだ。

 遠距離間の会話。情報の書き込み、読み出し。不特定多数との意見交換。地図を映してのナビゲーション。etc、etc……。


 しかし使い手が魔法の素質を持ち、魔術を特訓して術を身に着けないと使えない。そこが魔法の不便さだった。

 結局、便利な道具はあるが使えるのは一握り。そんな物ばかりだし、それ故に地球の中近世レベルの道具が一般には使われている。

 半面、道具によっては科学以上に無茶な物が存在した。欠損した部位の再生、瞬間移動(テレポート)、死者の蘇生、さらには天候や時間に干渉する魔法さえある。


(生物の改造や合成をする魔法もあるのか。それで生まれたモンスターもいるし……改造された人間もいる、と)

 ジンはもう一度、自分の腕を眺めた。



 その翌日、午前。トレーニングを三人が行っていると、部屋にヴァルキュリナが入ってきた。

「この先にあるコウキの町で補給を行う。滞在時間は短いから、降りるなら早く申請するように」

 シミュレータを停止させてジンが振り返る。

「魔王軍が追撃部隊を出してきたらどうするよ?」

「だから長くは居ない、と言っている。だがあそこには立ち寄る予定だったからそれは変えない」

 そう言うとヴァルキュリナはさっさと出て行った。

 彼女が魔王軍に追われる()()を持っている事、それをジン達が知らされていない事。それが判明してからこちら、彼女は会話を最小限で済ませている。


 そんなヴァルキュリナを見送り、ナイナイがジンに訊いた。

「どうするの?」

 多少考えはしたが――

「……見物に行こうぜ。色々な所を見ておいて損はねぇだろうよ」

――それがジンの返答だった。

 やはり文字で読むよりも、直に目で見た方が深く理解できるだろうと考えて、だ。



 前の街に比べ、ここコウキの町は明らかに小さい。だが人の密度は負けていない、それどころか上回る勢いだ。

 今度こそ町の中へ入り、市場の喧噪と活気を見て、ナイナイが嬉しそうに声を上げる。

「うわぁ、宿場町というだけあるなぁ!」

「通行税もメチャ安だったしな。場所によって違い過ぎるだろ……」

 困惑しているジン。

 ここは宿場町なので、街道を通る人に入ってもらわないと困る。それ故に通行税は大した事は無く――下町の食堂で一食頼む程度でしかない。


 ヴァルキュリナから数日分の日当を貰い、前より遥かに懐は暖かかった。

 よってジンは艦から町まで運んでくれた馬車に前金を渡し、自分達が戻るまで待機してもらう事にする。無論、魔王軍が攻めて来た時にすぐ戻る事ができるように、だ。


「うわぁ! これホント美味しい!」

 顔を輝かせるナイナイ。

 市場に出ていた屋台の一つ、テーブルと椅子も用意された飯屋。ジン達はそこで、数日おきに同じ物を繰り返す艦のメニュー以外の料理を久々に食べた。

 エルフのウェイトレスが笑顔で持ってきた大きなミートパイを、四人で切り分ける。

「ふん? これは……牛か? 豚か? 似たような他の生き物か?」

 パイを噛みしめてじっくり味わうジン。

「ウェヘヘヘ。ただブッた斬って焼いた肉とは大違いでさ」

 ゴブオも全然遠慮せずにパイへ食らいついていた。

 そんなゴブオへ通行人は嫌悪の目を向けている。やはりモンスターが人里にいるのを歓迎する世界ではないのだろう。

 だが一緒に町に来た補給部隊に忠告してくれた者がいたので、ジンは首輪と紐をゴブオにつけていた。それが効果あってか、面と向かって文句をつけてくる者はいない。ジンが捕まえて飼っていると見られているのだろう。


 実際――ローブを着た魔術師が魔物を連れ歩いている姿を、時々は目にする事ができた。

 まぁそれらは狼や虎のような四足獣であり、ゴブリンなど連れている者はいなかったが。


 腹が膨れた一行は再び市場を歩く。とはいえ目的もなく、面白そうな物を探してブラブラしているだけだ。


(お、防具屋にマジでビキニアーマーが飾ってあるな。あれでどう身を守っているのか……)

(よく見れば小人族にも何種類かいるみたいだな。ドワーフとノームと……なんか違う奴も?)

(魔法具店ねぇ。入り口に魔物の頭骨が飾ってあるが、あれ本物か?)


 周囲を眺めているだけでもジンは楽しかった。だがその途中でダインスケンが横手を指さす。

「ゲッゲー」

 十字路を曲がった先に何かあるらしい。

 その通りを覗いてみれば――生物の殻や金属片を置いた店が何件も並んでいるようだ。

 それを見てナイナイがジンを見上げる。

「ねぇねぇ、あれ、ケイオス・ウォリアーの部品じゃない?」

 通りの奥には独特のマークをつけた建物もある。それが何か、ジンは先日観光ガイドで見たばかりだ。

(あれが操縦者ギルドか……どうする? ちと覗くか?)



 操縦者ギルド。ケイオス・ウォリアーで仕事をしている者達が登録し、仕事を回してもらう組合である。

 冒険者ギルドや運送ギルド、建築系のギルドとも密接な繋がりを持ち、もしこの世界でジン達が独立するなら、真っ先に尋ねたい所の一つだった。



 ジンが考えている間にも、ナイナイは近くの露店で商品を眺める。半透明の八面体――それは動力系の部品の一つだ――を手にし、しげしげと眺めた。


 そんなナイナイの後ろで、誰かが笑った。

「シシシ……そんな部品いくら集めても役に立たないよ。シロウトさんはこれだから困る」

どうもワシは勘違いしていたようなのだが、一話の時数は「4000字にするな」ではなく「3000字以下にしろ」だったらしい。

というわけでここからもうちょっと刻んでいきます。


しかし「第一部・完」までだけで100話いきそうだな……まぁ締め切りや期限があるわけでもないのでぼちぼちやっていきます。

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