16 脅威 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。
ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。
ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。
リリマナ:ジンに同乗する妖精。
ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。
クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。
ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。
アル:冒険者の少年戦士。
パーシー:スイデン国所属の少年騎士。
コーラル:スイデン国所属の青年騎士。
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
竜艦Cガストニアから、鬼甲戦隊の三機は降り立った。
彼らを眺め、ジェネラルルードは呟く。
『黄金級機は未完成か。これは好都合』
それを聞いて疑問に思うノブ。
(未完成、だと?)
造る予定は無くなったのだが‥‥。
だが別の疑問を持つ者もいた。クラゲ艦Cウォーオーのリュウラだ。
『おかしいよ? 一週間必要な工程が、どう頑張っても数時間で終わるわけない』
それにジンが通信を返す。
「ああ。だから全部投げてきた」
『『『え?』』』
何を言っているのかわからないレイシェル達。
ヴァルキュリナが――非常に言い難そうに――説明する。
『その‥‥一週間というのは、試験や調整、見つかった不具合の解決のための期間だったそうなんだ。ぶっつけ本番でいいなら、装甲をつけてエネルギーを入れればすぐに動かせたと‥‥』
『未試験で実戦に投入するの!?』
いつになく大きなリュウラの驚き声。ケイオス・ウォリアー製造で名高い街の領主の娘であった彼女には、それがどれだけ異常なのかわかったのだ。
割と真面目な声を作って応えるジン。
「まぁ足りない所は勇気で補うって事で、一つ頼むわ」
『戦闘中に動かなくなってもそれ言うのか‥‥このバカ‥‥』
ガストニアのブリッジから、クロカの憔悴した声が漏れた。
だが話は終わりだ。
ジンのSサンダーカブトが、敵群の前へ大股で歩き出したのだから。
「まぁこの戦闘が試験て事だ。だからいきなり使うぜ‥‥最初からクライマックスだ! 【ゴールドライド】!」
ジンは叫ぶ。
新機能の名前を。
モニターの隅に【ゴールドライド】の名が表示され、そして‥‥
カブトが輝いた!
黄金の光が、その装甲を染めていく!
黄金の輝きを宿す装甲を纏ったその姿は、黄金級機と言っても知らぬ者なら信じてしまうだろう。
ジンは機体の目で『自身の体』を見下ろし、呟く。
「どこぞのハイパーモードって言うか、限りなく黄金に近い白銀とでも言うか‥‥さて、この機能がちゃんと使えるかどうか」
『ぬう!? 神蒼玉を利用した、新たな機能を開発したのか?』
流石に驚くジェネラルルード。
それを聞いてノブは思う。
(やはり、この街に来てからの計画までは把握していないようだ。だが‥‥神蒼玉を利用した機能だとよく見抜いた。黄金級機に普段から乗っているからなのか?)
そして、カブトは動いた!
残る敵白銀級機・Sコープスウンカの群れへと。
当然、敵群は新たな相手へと身構えるが――
黄金のカブトが、煌めく緑の輝きを、粒子のごとく、彗星の尾のごとく、走りながら放つ。
『あの輝きは! ブレイブドライバーと同じ!』
何度もそのアイテムを使っていたノブが目を見開いた。
走るカブト、迎え撃つ敵群。
激突の瞬間、互いに身構える――その時に。
ジンの肩でリリマナが叫んだ。
「うてェ! マキシマム・サイクロン!」
ブレーキをかけながら全身の発雷結晶が放電、直後に射撃体勢へ入ったかと思うや、即座に電撃の滝が戦場を押し流す。
爆発! 無数の爆発! 爆発の全てはウンカであり、全てのウンカの爆発である。
不自然なほど機敏な機動を一瞬、異常な威力を止まる事無くカブトは見せた。
煙が燻ぶる山間の地面に、もはや動く事ない残骸が散乱するのみ‥‥。
『白銀級機が‥‥一掃されちまった‥‥』
ジルコニアが呆然と呟いた。
『一呼吸で、移動と発射!?』
驚愕するレイシェル。
あれは敵首領の影武者がやっていたのと同じ事——【2回行動】のスキルとほぼ同じ事だ。
『威力も上がっている!?』
驚愕するオウキ。
かつて自分と戦った時以上だと確信して。
『もしや、彼のスピリットコマンドは‥‥!?』
驚愕するザウルライガー。
異界から来てインタセクシルで戦っている彼には、思い当たる物があった。
『ヘヘヘ‥‥どんだけ驚かれてんだ』
彼らの反応に、クロカは先程と打って変わって満面の笑みを止める事ができなかった。
ジンはモニターを切り替え、新たな能力の詳細を表示する。
>
【ゴールドライド】
機体と武器の全ての地形適応がSになる。
発動直後、スピリットコマンド【アウェイクン】が発動。
次ターン、戦意が169以下なら効果終了。170以上なら【アウェイクン】を再発動して継続。
次次ターン、戦意が199以下なら効果終了。200以上なら【アウェイクン】を再発動して継続。
4ターン目には自動で効果終了。
効果終了後、戦闘終了まで再発動不可能。
>
スピリットコマンド【アウェイクン】
行動回数を1回追加する。
>
「今の所は不具合なし、と。膨大なパワーを、短時間だけ集中的に制御する事で限定パワーアップする‥‥ま、わかっちまえばそれほど珍しい能力でもねぇか。さて‥‥」
残る敵に目を向けるジン。
白銀級機だけで構成された兵士達だが、約半数はレイシェル・ザウルライガー・Cウォーオーの奮戦で倒されており、残る半数はカブトにより今消滅した。
つまり後は‥‥二体の大隊長機だけだ。
ナイナイ機とダインスケン機が後ろに追いついて来たのを確認すると、ジンは敵機へ通信を送る。
「次は、本物の黄金級機に通じるかどうか。試させていただくからよ」
その言葉には、もはや恐れも不安も全く無かった。
設定解説
・もしや、彼のスピリットコマンドは‥‥!?
この回の直前でのレベルアップでジンはスピリットコマンド【ブレイブ】を自前習得した、という設定。
MAP兵器の威力を跳ね上げたのはこのコマンドの力であり、ジンの個人的な力量である。
連続行動で移動後即MAP兵器をかましたのは新機能【ゴールドライド】によるもの。こちらは機体側の能力である。
機体と操縦者の能力が噛み合う事により、1+1は3にも4にもなるのだ。




