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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
234/353

12 脅威 4

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。

クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。

ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。

アル:冒険者の少年戦士。

パーシー:スイデン国所属の少年騎士。

コーラル:スイデン国所属の青年騎士。


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

 ヴァルキュリナが驚いて叫んだ。

「父上!?」

 そう、ドックに入って来たのは聖都ホウツの領主フォースカー子爵。(かずら)模様が装飾された燕尾服を身に着け、つばの広い黒い帽子を被り、娘へとほほ笑んでいた。

「お前達が来ると連絡を受けたファンデム伯爵に呼ばれてね」



――一同は城内の会議室へ通される――



 円形のテーブルに着いて、皆が席に座る。

 それを確認してから、フォースカー子爵はジンに訊いた。

「ジン。君達は黄金級機(ゴールドクラス)に乗る気は無かったね?」


 海戦大隊隊長を撃破した後、首都を去ってから聖都ホウツへジン達は一度戻った。

 その時に経緯をフォースカー子爵に話したのだ。


「ええ。でも、そうも言ってられなくなりましてね」

 ジンが言うと、子爵はファンデム伯爵と目くばせし、頷きあう。

 そして改めてジンへ話しかけた。

「一足先にここへ着いて、伯爵と相談した。そして提案してみる事にしたのだ。聞いてくれ‥‥神蒼玉(ゴッドサファイア)があれば、試せるパワーアップ手段が他にないでもない」


「「「なんですって!?」」」

 一同の大半が驚きざわめく。

 そんな方法があるなどと聞いた事も無い。


 だがファンデム伯爵が話を続けた。

「本当を言うと、昨日今日編み出したわけじゃなくてな。先代魔王との戦いの中で考案もされたし、ある程度は実験も済んでいる。ただ、まぁ‥‥結局は実用されなかった」

 遠い目でフォースカー子爵が溜息一つ。

神蒼玉(ゴッドサファイア)は我々より有望な勇者に譲ってしまったからなぁ‥‥彼らが魔王を討ってくれたから、結果的には正解だったわけだし」



 先代魔王の軍と戦った者達は、魔王を討った勇者達以外にも大勢いる。

 伯爵と子爵もそうした「脇役の勇者」だったのだ。

 ケイオスレベルの半端な彼らなりに、対魔王の手段を考え、生み出そうとし、完成まで後一歩という所までは辿り着いた。だが魔王が倒され、新技術開発は凍結してしまったのだ。



「それで、その方法とは?」

 話に食いつくジン。

 伯爵が嬉しそうにニヤリと笑う。

「物凄く単純に言えば、神蒼玉(ゴッドサファイア)を現行機に組み込む」


 それを聞いて、リュウラが首を傾げた。

「お父様? それだと動かない筈では? リミッターをかけて、多少の性能アップに留めるだけなら別ですけど‥‥」

 それには子爵の方が答える。

「これまではそうだった。だからこそ、我々はそこに新たな技術を研究していたんだ。今使っている機体をそれで強化すれば、試験・実験を含めても、一から黄金級機(ゴールドクラス)を新造するより確実に早い。おそらく半分ぐらいの時間で済む筈だ」


 それを聞いて、再び会議室がどよめく。

 既に魔王軍が動き出している以上、早さは魅力だ。


「ただまぁ、黄金級機(ゴールドクラス)以上の強さかというと微妙だし、既に設計図もあるんだ。だからこの案を受けるか否かは君達が選んでくれ」

 そう言ってファンデム伯爵は会議室を見渡した。


 一同、しばし顔を見合わせる。

 早さという魅力はあるが、強さの絶対値は重要だ。

 卓についている者の大半がジンを見たが、ジンは腕組みして考え込んでいた。


(本物の黄金級機(ゴールドクラス)を造る事ができる状況で、代価案みたいな物を選ぶのか‥‥? 俺達の異界流(ケイオス)レベルが9まで上がらないと決まったわけでもない。しかし上がる保証も無い)

 新たな選択肢を前にジンは悩んだ。



「か、カブトかな‥‥強化するなら、だけど」

 か細い声が、ぼそりと呟かれた。



 一同がいっせいに注目する。

 視線を向けられ、クロカがビクリと体を震わせた。

 冷や汗をだくだく流しながら、必死に引きつった半笑いで誤魔化そうとする。

「あ、いや、その、一意見だから、そんなに気にしないで、ウェヘヘ‥‥」


 静まった会議室。

 そこで今度は椅子が動く音が聞こえた。

 一同の視線がそちらへ移る。


 ダインスケンが立ち上がっていた。

「ゲッゲー」

 彼はいつも通りに鳴くと‥‥皆の視線など気にもせず、大股で歩き出す。

 ジンの側へと。


 そして「隊長」と書かれた紙の腕章を外し、ジンの腕に巻いた。



 ジンはダインスケンを見上げ、クロカを再び一瞥し‥‥そして伯爵と子爵へ目を向ける。

 はっきりとした意思のある視線を。

「わかった。決めさせてもらいます。Sサンダーカブトを強化してください」


 慌てて焦り声をあげるクロカ。

「え、え、あ、いやその気にしないでって‥‥」

 そんな彼女を横目で見ながら、ジンはニヤリと笑った。

「毒蝿に乗りたい奴がいない。カブトに乗りたい奴は俺がいる。0対1だ。もう決めさせてもらったからよ」


「決まりだな」

「我らのボツ案が二十年を超えて陽の目を見るぞ!」

 子爵と伯爵、二人は高揚した笑顔を向けあう。

 脇役が力不足を補おうと考案し、研究し、やっぱり主役様に勝利され、肩を落として凍結していた、彼らなりの新技術。

 この二人もそちらの採用を望んでいた事はもう明らかだった。



黄金級機(ゴールドクラス)新造と、現行機の強化案。どっちが正しいのかはわからねぇ。だが、俺が選びたいのは‥‥こっちだわな)

 二人の元勇者を見ながら、密かに喜びに震えるクロカを横目で見ながら、ジンはそう考えていた。

 他人の華々しい活躍を、指を加えて眺める寂しさ。それは四十余年ぶん知っている。

 自分の精一杯の仕事が、より大きな成果の前に隅にやられる寂しさ。それも同じぐらい知っている。

(つまらない感傷だとわかっちゃいるが‥‥俺達だって(タマ)をはる以上、納得できる手段を選ばせてもらわないとスジが通らねぇ)

 付け加えるなら――ジン自身、Sサンダーカブトには既に愛着がわいていた。それもまた事実だ。



 その決定を前に、騎士コーラルは肩を落とした。

黄金級機(ゴールドクラス)は我がスイデン国に生まれないのか‥‥」

 そんな彼を見て、ノブが一部の人間に訊ねた。

「一度、スイデンの方々に訊きたかったが‥‥毒を吐いて大地を汚染するハエロボが祖国代表になっていいのか?」


「私はNOかな‥‥」

 困った顔のヴァルキュリナ。

「私もですわ‥‥」

 困った顔のレイシェル。

「え、あ、その、どちらかというと否定的というか‥‥」

 困った顔で申し訳なさそうな少年騎士パーシー。


 実はあんまり望まれていなかった‥‥!

設定解説


・俺達のケイオスレベルが9まで上がらないと決まったわけでもない


もしジンの案のまま9レベルまで上がった場合、ダインスケンは汚染毒を撒き散らすMAP兵器で敵を駆逐する事になっていた。

3機ともMAP兵器を連打して敵を草刈し続ける最強部隊の完成である。

代価案の方へ賛成した事と無関係ではないだろう。

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