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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第三次 疾風怒濤編
231/353

9 脅威 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


ジン:地球から召喚され、この世界で改造人間にされた男。

ナイナイ:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた少年にして少女。

ダインスケン:異世界からこの世界に召喚され、ジンと同じ改造を受けた爬虫人類。

リリマナ:ジンに同乗する妖精。

ヴァルキュリナ:ジン達を拾った女正騎士。竜艦Cガストニアの艦長。

クロカ:女ドワーフの技術者。Cガストニア所属。

ゴブオ:ジンについてきたゴブリン。

アル:冒険者の少年戦士。

パーシー:スイデン国所属の少年騎士。

コーラル:スイデン国所属の青年騎士。


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

エリカ:オーガーハーフエルフの整備士兼副艦長。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

 その日。辺境村の艦の中で、ある冒険者パーティが揉めていた。

「アル‥‥パーティから追放だ。いいな?」


「いいわけねぇだろ!」

 船室の一つで、少年戦士のアルが仲間へ怒鳴る。

 追放を言い渡した少年魔術師。その右手でぶっちょう面の若き盗賊。左側で悲しそうに俯く革鎧の少女。

 三人とも同じ村から出て来た仲間である。

 だが誰一人として、アルの味方はいなかった。


 魔術師が、深い深い溜息をついた。

「わかった。じゃあ俺達がみんな追放される事にする。後は一人で好きにしてくれ」



――二時間ほど後、二隻の艦が見える村の外柵にて――



 村を囲む柵にもたれ、アルは薄っすらと曇った空を見上げていた。

 そんな彼に話しかける者が一人。

「あれ? なぜ君がここにいるんですか?」

 少年騎士パーシーが、アルを見かけて訊いていた。


「‥‥まだCガストニアに雇われてるからな」

 空を見あげたままの、アルの気のない返事。

 パーシーは首を傾げる。

「いや、でも、君のパーティはさっき‥‥」


 アルのパーティーがここまでの戦いの報酬を貰ってCガストニアから出て行ったのを、パーシーは遠目に見たのだ。

 なのにその一員のアルがここに残っているのだから、疑問に思うのももっとも。


 そんなパーシーに、空を見上げたまま、アルは何があったのかを話し出した。



――それは昼食前の事――



「この艦を降りるって!? この仕事はここまでだって!? 本気か!?」

 スイデン国に戻るや仲間達がそう言いだし、アルは心底驚いた。

 そんな彼を仲間達は批難する。魔術師が言った。

「アルこそ本気か? もう俺達が首を突っ込むレベルの戦いじゃないだろ!」


 魔王軍が大陸の三大国を一つ滅ぼしてしまった。

 首領の影武者は黄金級機(ゴールドクラス)さえ凌ぐパワーを見せつけた。

 その戦いを直に見てしまった。

 名も無き冒険者の一パーティにとって、それらは闘志を挫くに十分だったのだ。


 そう言われれば、アルとしても反論し難い。

 だがそれでも仲間達に訴える。

「だからって‥‥魔王軍から逃げ回って生きる気かよ? 俺達は冒険者なのに」


 この世界インタセクシルでも、冒険者が実力(レベル)を上げて英雄として讃えられる事はままある。

 この生き方を選ぶ者は、皆、多かれ少なかれ英雄への道を意識するものだ。


 だが仲間達は期待に応えてくれなかった。盗賊は肩を竦める。

「別に敵の最強格の奴らと戦う必要はないだろう。雑兵や下っ端からあちこちの村人達を守るのだって立派な戦いだ。身の丈を考えようって言ってるんだ」

「そんな弱腰でどうするんだ?」

 アルには彼の言う事が逃げるための言い訳に思えた。

 だが幼馴染の少女も、アルになんとか言い聞かせようと必死に言った。

「ねぇ、アル‥‥ジン様に弟子入りを許されて舞い上がっているみたいだけど、あの人でさえギリギリなのよ? 私達は邪魔にならないよう、ここでお別れした方がいいよ。ね?」


 そう言われ、鬼甲戦隊(きこうせんたい)の苦戦がアルの脳裏に思い起こされる。

 かつてアル達を助けてくれた、黄金級機(ゴールドクラス)さえ倒した、憧れの勇者達が――際どい所まで追い詰められていた事を。

 そこで自分はただ眺めるだけで、恐れ震える事しかできなかった事を。


 悔しさでアルは拳を握りしめる。

「そりゃまだまだ未熟だけど‥‥俺達はこれから腕を磨いて‥‥」

()じゃねぇよ。わかった、そんなにこの艦にいたいならもういい。邪魔しないから俺達の邪魔もするな。巻き込むな」

 魔術師がそう結論を出した。

 そして、追放の話へと続いたのだ。



――そんなパーティメンバーも、既に立ち去ってしまった後である――



 経緯を聞いたパーシーは、困りながらもおずおずと言う。

「君の仲間の意見、間違っていないと思いますけど」

「はいはい、そうだよ。俺が間違ってるんだろ。だから追い出されたんだろ。わかってるよ。笑えよ」

 苛々と頭を掻くアル。

 そんな彼にパーシーは訊く。

「君はまだ残るつもりなんですか?」

 アルは「ふん」と漏らした。

「‥‥ああ。悪いか?」

「良くないでしょう。ケイオス・ウォリアーだって無いのに。一体、何ができるんです?」

 やや躊躇いながらではあるが、パーシーの言う事は少々きつい。


 だがアルの元パーティーメンバー達がケイオス・ウォリアーを持っていくのも、パーシーは見ていたのだ。

 あれはパーティの共有財産だったのだろうから、三人と一人に別れるなら持っていかれても仕方が無いだろう。

 しかしそうなると、今のアルは巨大サイズの戦闘に参加できない。

 魔王軍相手に、戦力になるとは思えなかった。


 ぐっ、と奥歯を噛みしめてから、アルはパーシーを睨みつける。そして語気も荒く叫ぶ。

「よく言うな! お前達この国の騎士には何ができたんだ!? 鬼甲戦隊(きこうせんたい)がいなければ首都は助からなかったんだろ? ナーラーより先に潰されてたんだろ! 人の事を言えるほど役に立ってるのかよ!」

「なっ‥‥八つ当たりはやめてください!」

 一転、怒るパーシー。

 だが彼とてジン達に助けてもらわねばとうに死んでいた身である。自分が防衛部隊の一員でありながら無力だった事は、本人が一番わかっていた。

 まぁそれをアルにとやかく言われる筋合いが無いのも確かではあるが。



 険悪に睨みあう二人。

 そこへ横手から声がかかった。

「そもそも魔王軍と戦うのが間違いなのかもしれませんよ」

 意外な事を言われ、二人は同時に振り向く。

 そこにはナーラーの関所で会った、魔術師の少女がいた。二人はその名を呟く。

「「アリス‥‥?」」


「スイデンに来たのか」

 戸惑いながらも訊くアル。

 アリスは頷いた。

「ええ。でもこの国も長くはなさそうですね」

「そんな事はありません。ナーラーを滅ぼした軍勢を撃破したんですよ」

 パーシーが抗議する。女性に対してなので声の調子は抑えてあるが。

 だがアリスは、落ち着いた口調で――

「うん、知ってます。それ以上の戦力を魔王軍はまだ控えさせているだろう事も」


 だからこその、戦う事が間違いという発言なのだろう。

 彼女は人類側が勝てると思っていないのだ。


「‥‥で、君はどうするんだ。一生逃げるのか」

 苛つく気持ちを抑えながらアルは訊いた。

「今後を考えるため、今は情勢を調査中という所ですね」

 アリスはそう言いながら、大きな瞳で辺りを見る。


 吊られて周囲を見るアルとパーシー。

 偶然だろうか、ジンがガストニアの主なクルーとともに側を通っているではないか。


「師匠‥‥どこへ?」

「ちとCオーウォーへな。今後の事について話がしたくてよ」

 訊ねるアルに、ジンはレイシェル達の艦を指さす。

 村の側の川に着水し、触手を沈めている浮遊艦を。


「戦うんですね? 動き出した魔王軍と‥‥」

 訊ねるパーシー。


 三大国家と称される国、残り二つ。

 そのどちらもが、今、魔王軍から攻撃を受けていた。

 情報では、国境付近で膠着状態になっているようだが‥‥それがいつまで続くかわからない。

 同格のナーラー国は滅ぼされたのだ。他の二国が持ち堪えているのは、魔王軍が戦力を分散させたからか。或いは‥‥何か企んでいて本気を出していないからか。


 ジンは頷き、答える。

「そうだ。だがその前に、黄金級機(ゴールドクラス)を造ろうと思っているからよ」


「「「え!?」」」

 アル、パーシー、アリス。三人が奇麗に揃って驚いた。

設定解説


・パーティから追放だ。いいな?


「いいよ!やったあ!」と言う展開だと全てが丸く収まる。

どうせ美少女拾って何やっても上手く行く事にするなら、しこりやいざこざなど残らない方が話はスムーズに進むと思う。

よって今後は「追放されたけど本人も嫌気がさしていたので大喜び」という平和なパターンが流行るに違いない。

ワシにはわかる。このクレバーな予想は外れる。

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