23 魔城 3
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
敵の親衛隊が2機同時に立ちはだかり、絶体絶命の窮地に陥るものの、それまでに施した僅かな強化と
特訓により身に着けた新技で辛くも切り抜けたのであった。
最も巨大な大陸に、険しい山々が連なる壁で文明圏から隔絶された地がある。
一年中吹雪が吹き荒れ、それが止んだ時だけ白銀に輝く美しくも生の無き死の幻想世界が姿を現す大地が。
雪と氷と暗雲が覆う、標高四千メートルを超えた、平地としてはこの世界でも最高度となる、誰も顧みない僻地の中の僻地。
そこに巨大な城塞があった。
禍々しく、ねじくれ、悪意と邪悪で塗り固められた、途方もなく巨大な城塞が。
この世界にある国家全ての敵である魔王軍……その首領が住まう城が。
石柱が立ち並ぶ、暗く巨大な、神殿のごとき部屋。
そこに四つの人影があった。
四つとも、背も体格も全く同じに見える。
四つとも、フード付きのローブを身に纏い、顔かたちは全くわからない。
青いフードローブを纏った者が静かな声で告げる。
「マスターオシュアリィは失敗した」
黄色いフードローブを纏った者がせせら笑った。それ見た事か、と言わんばかりに。
「ふん、ただの調査隊にやられるとは。とんだ腑抜けを差し向けたものよな。それとも意外と大部隊で、調査不足でそれに気づかず返り討ちにされたか」
青いフードローブが静かな声で答える。
「相手は三機の青銅級機だったとの事だ」
黄色いフードローブ者が、一転、驚きに叫ぶ。
「なにィ? たったそれだけで? 親衛隊とそれが率いる部隊が?」
青いフードローブが静かな声で付け加えた。
「空戦大隊からもマスターウインドが合流したが、奴は戦わず引き上げた」
青、黄、そして紫。三人の視線が赤いフードローブに向けられる。
赤いフードローブは……動じる事なく、落ち着いて言った。
「新たな発見があれば報告のため引き返せと、私が指示していたからだ」
赤いフードローブの視線は紫へ向けられている。
「例の調査隊で戦っているのは、魔王軍の召喚した聖勇士だ。しかもおかしな処置を施しているそうだな?」
問われた紫のフードローブは事もなげに――かなりわざとらしく――答える。
「部下がはりきったようでな。奴の残した計画書、見たければ見せてやってもいいぞ」
黄色いフードローブが怒鳴った。
「貴様! 今までわざと黙っていたのか!」
紫のフードローブは肩を竦める。
「聞かれなかったからな。それに『例の物』に比べれば大した事ではない」
「おのれ……」
黄色いフードローブの声に怒りが籠る。
だが赤いフードローブがそれを気にせず言った。
「だがその聖勇士ども、こちらに引き込む事ができかるもしれん。できなければ先に始末した方が良かろう……確実に事を運ぶためにも。調査隊への攻撃はそれからとしよう」
黄色いフードローブの怒りは、赤いフードローブへと矛先を変えた。
「勝手に段取りを……!」
だがしかし。
青いフードローブが他の三人へ言う。
「静まれ。いや……控えろ」
三人はそこで会話を止めた。
青いローブに従ったのではない。気配を感じたからだ。
闇に閉ざされた部屋の奥からの、強烈な、強大な……。
そこから乾いた足音が響く。
四人は黙って待っていた。
足音の主が姿を見せた時、四人はいっせいに膝をつく。
「「「「暗黒大僧正!」」」」
四人は足音の主、彼らの主の名を口にした。
その者――闇黒大僧正は灰色のフードローブに身を包んでいた。
他の四人と異なるのは……その周囲の空間が、歪んで見えること。
陽炎のように……波打つように……あるいは色彩が滲んで混ざり合うかのように。
それはその者の放つなんらかの「気」による迫力かもしれないし、本当に空間に干渉する魔力が漏れ出ているのかもしれない。
ただ、他の者とは根本的に何かが違う。
それだけは確かだった。
人類の生息圏から遠く離れた、この時代の邪悪の中枢。
吹雪が吹きつける城塞の、その中の奥で。
ジン達に次なる刺客が放たれる事が決まった。
ブックマークありがとうございます。
これで評価ポイントが18にもなりました。
0より大きい数字が貰えるのは嬉しいものですな。
23話で18点というなら、丸一年続けて365話までがんばれば280点以上もの高評価をいただけるのでありましょうか。
多分この作品は80~90話程度で「第一部・完」ですがな。
それより後は今の所、断片的にしか思いついておりません。
実は魔王の正体とその目的は考えてある。
よって最終回を書く事は実は可能だ。
そこまでの道が無いのが問題なのだが……
80話 第一部完
81話 最終話・ラストバトル
冒頭「いろいろあって数年。四天王は全部死んだ。ラスボスは仮面を外して正体と目的を勝手に語った。今、最後の戦いの時――」
REイズナーのラスト3話って割とマジでこれに近い。