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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
217/353

108 陰陽 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士兼副艦長。

シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

GUンダムX:主人公とヒロインを応援したくなる作りならそれだけで3クールまではいけると証明した良作。

 決戦は、大賢者の住居を出発してから数日後の事だった。


 そこは赤茶色の荒野に岩山が連なる不毛の大地。

 岩山に挟まれた沼の辺に、奇妙なすり鉢型の巨大な穴がいくつも穿たれていた。


「かつての隠し基地跡か‥‥」

 ブリッジメインモニターに映された外の光景を眺めながら、小さな声で呟くオウキ。

(そうなの? 元魔王軍だからそんな事を知っているのかしら)

 レイシェルはそう疑問に思いはしたが、特に何か訊いたりはしなかった。

 別に訊く事はなかったし、ブリッジクルーの一人が大声をあげたからだ。


「右手に敵! 現れます!」


 当然、皆がそちらを見る。

 しかし敵影はどこにも無い。

 だがクルーの警告通り、敵は現れた――石と砂の大地が盛り上がり、地面の下からいくつもの巨体が。それはかつてレイシェルの元婚約者が乗っていた、改造怪獣メタルアントライオン!

 さらに、それらを挟んだ向こうに揺らめく灰色のオーロラが生じ、そこから一機のケイオス・ウォリアーが出て来たのだ。


 宝石のような頭部に黒い板を何枚も差し込んだ、黒い外套を羽織った機体‥‥魔人ジェイドの乗るUディケイウィザードが。


「地下とワープか。忙しない事だ」

 言ってノブはブリッジから走り出る。

 当然、レイシェルとオウキもそれに続いた。


 怪獣どもが接近する中、レイシェル達は艦の前に飛び出した。

『魔人ワーグラ‥‥彼本人が出て来たのなら、ここで決戦ですわね』

 緊張した声で呟くレイシェル。

 ドリルライガーが怪獣の群れを見て呟く。

『しかしこの数のメタルアントライオン、誰が乗っているんだ』


 オーガーハーフエルフのエリカがスピリットコマンド【スカウト】を放つ。これは未交戦の敵機の能力を詳細に調べ上げるコマンドだ。

『アンデッド兵士だ。生者は‥‥一人もいないぞ』


 不死兵の乗る怪獣の後ろから、魔人ジェイドが通信を送る。

『意外な事よ。黄金級機(ゴールドクラス)を造らずに出てくるとは。まさか何かの策でもあるまいに』

神蒼玉(ゴッドサファイア)の使い方を私なりに考えた結果ですわ」

 レイシェルの返答に、魔人ジェイドは『ふむ?』と呟く。

『どう考えたかは知らんが、ここで倒されては儂の物になるだけよ。まぁそれは大いに結構だが‥‥』

 レイシェルは毅然と言い放つ。

「貴重な物ですもの。貴方と戦うからといっておいそれと使い道は決められませんわ」


『ほう。儂ごときでは、というわけか‥‥』

 魔人ジェイドの声に苛立ちが混じった。

『その判断の結果がどうなるか。やってみようではないか!』


 二人が話している間にも敵の能力詳細を確認するエリカ。彼女は『ひええ‥‥』と悲鳴みたいな声を漏らした。

『ついに雑魚まで全機HP万超えだぞ‥‥正確には20000だよ』

『よし、先ずは私が壁となります』

 ドリルライガーは叫ぶ。

『タイタンケラトス!』


 その声に応じ、大きな咆哮が響き渡った。

 にわかに暗雲が立ち籠り、倉庫から巨大な恐竜が走り出る。

 それは装甲で覆われた、人造のトリケラトプス!

『フォームアップ!』

 ライガーの声に合わせ、人造恐竜は変形した。

 前足・後足がボディに収納される。

 後ろ半身は二つに分かれ、腿が伸び、二本の足に。

 前半身は腰と下半身に。

 頭部は胸に。


 そしてドリルライガーは二つに分離し、大きな両腕となった。


 両腕は恐竜の変化したボディにドッキング!

 同時に兜を被った騎士のごとき頭部がボディから出現!

 両目が輝き、口はフェイスガードで覆われている。

『巨竜合体! ザウルライガー!』

 変形合体したライガーの声が雄々しく響いた!


 ザウルライガーが敵へと踏み出した、その時。

『頼むぞリュウラ』

 ノブはそう言い、Eムーンシャドゥが艦に駆け込む。


「え!? ノブ?」

 一切交戦せぬままにいきなり帰艦したシャドゥを見て仰天するレイシェル。

 彼女は、一切の動揺なく冷静に指示を出すリュウラの声を通信機から聞いた。

『全機、前進しながらフォーメーション』

 クラゲ艦Cウォーオーは、加速をかけながら敵群へ突っ込む!


「え? ええ‥‥?」

 呆然と見送るレイシェル。

 通信機からはエリカが大慌てする声が響いていた。

『わわ? わわわ? リュウラ? どうなってんだ!?』

 その声にハッと我に帰り、レイシェルは敵に突っ込む艦を追う。

(何を考えてますの!?)

 ノブとリュウラがなぜこんな事をしているのか全くわからない。

 だが敵の群れの真ん中へ艦を放っておいていいわけがない。

 リュウラはフォーメーションを指示していたのだから、敵群の中へ飛び込んでから陣形を組めと言っているのだ。


 艦を追って機体を走らせるレイシェルが次に通信機から聞いたのはノブの声だ。

『Eムーンシャドゥ、行くぞ』

 敵の真っただ中で出撃を宣言し、ノブ機は本当に敵の中へ飛び出した!


 戦闘開始直後から一直線に敵の中へ飛び込んだノブ。

 艦まで使っての強引な前進に、巨体のアントライオン達も完全には対応できなかった。

 わらわらと迫り壁を作ろうとする改造怪獣達の隙間を縫って、シャドゥは一気に奥へと駆け抜ける。


 改造怪獣達がクラゲ艦を囲む壁となった、その時には‥‥ノブ機は最奥の敵機と対峙していた。

 魔人ワーグラの乗るウィザードと‥‥!



「の、ノブ!」

 クラゲ艦に追いつき、壁となって迫るアントライオンに身構えながら、レイシェルは操縦席で呻いた。

『奴め‥‥一人で‥‥』

 同じくクラゲ艦の側を飛びながら、オウキが苦々しく呟く。



『戦艦飛ばし、か。ノブよ‥‥お前一人で儂の前に来るとはのう』

 呆れる魔人ワーグラ。

 だがノブは恐れる事無く言う。

『あれだけ頑丈な壁の向こうからMAP兵器を乱射されては不利だからな。だが範囲攻撃が来なければ、タフまかせの有象無象ごときに僕の仲間は負けない。だから兄弟子よ。貴方は僕が抑えるのだ』

 それ聞いたワーグラは『ほう』と呟いた。

『それで道を塞がれる前に来たのか。一人で』

『全員だと包囲されながらの戦いになるからな』

 四方から攻撃を受けながら範囲攻撃にまで晒されては危険が大きい。それをノブは言っているのだ。

『儂を一人で倒そう、と‥‥いうわけではないのだな?』

 魔人ワーグラが確認する。


 ノブの返答はこうだった。

『正直に言う。そのための、僕ができる全ての準備はしてきてある』

設定解説


・戦艦飛ばし


軍艦に機体を搭載、全速力で突進した艦から飛び出して移動距離を稼ぐ戦法。

遠くにいる敵軍との間合いを一気につめる時や相手の只中に切り込む時などに、この世界では古来より使われていた手段。

搭載した機体の戦意(モラール)が低下する事や敵の只中に跳び込むのは当然危険な事などから、実際に行われるケースは限られてはいる。

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