100 二人 3
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士兼副艦長。
シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。
MAジンガーZ:マジでロボットプロレスしかしないがその点だけは後の作品以上にやりきっている偉大な良作。
ドリルライガー、Sフェザーコカトリス、クラゲ艦Cオーウォー。
各機は大賢者トカマァクのダンジョン入り口前に集まっていた。
『ノブが見つかったようですね』
ドリルライガーがそう言ったのは、レイシェルからの短い通信を受け取っていたからだ。
彼女は機体を降りる前、各機へノブの発見を一言だけ告げていたのである。
よって捜索をやめ、三機は戻って来たのだが‥‥
『レイシェルが見つけたか。後は任せておけばよかろう』
オウキの言葉はドリルライガーも思っている事だ。
クラゲ艦のメイン座席で、リュウラだけは不服そうにはしていたが。
四方に別れる前、各自は思い思いの方向を選んだ。
その時、真っ先に向かう先を決めたのはレイシェルである。
「地上を歩いている気がしますの。なら、こっちへ向かったと思いますわ」
そう言って、歩行する場合に一番通り易い方へ向かったのだ。
(こんな時にノブがどうするか、レイシェルにはわかっていたんだ‥‥)
そう思うリュウラは、本当は二人のいる所へ乗り込んでやりたかったのだが。
(邪魔しちゃいけないんでしょ、どうせ‥‥)
それを察する事ができない彼女ではなかった。
そんなリュウラが独り沈んでいるのに気づかず、オーガーハーフエルフのエリカが大声をあげる。
「みんな! 敵が迫ってるぞ!」
彼女の見ているモニターには周囲のMAPが映っている。
そこには敵を示す赤いアイコンが多数動いている。
『二人を呼びますか?』
流石に感傷的な事は言ってられないと判断し、ドリルライガーは他の二人に提案した。
だがリュウラの言い分は‥‥
「‥‥私達だけでやってみる。ダメだったら呼ぶ」
『フッ。まぁ妥当な所だろう』
そう言ってオウキは機体を宙に飛ばし、戦闘態勢をとる。
ドリルライガーも抗議や反論はする事なく、敵軍を迎え撃つため動き出した。
程なく山間の道を通り、目の無い小鬼の姿をした機体が大量に現れる。
その後ろには、縦長のスカルキャップを被ったような、朱色の胴鎧と白いローブを纏ったような、魔導士然とした姿の機体が控えていた。
奥の敵機を見てオウキが呟く。
『奴は確か‥‥マスタープリースト』
『そう、魔王軍魔怪大隊最強の親衛隊マスタープリーストさまだ。お前が裏切り者のマスターウィンドか。まぁ私の名を知っていた所で勝てるという物でもないがな』
敵機から通信が届く。相手もオウキの事は知っていたようだ。
だが敵は自分の勝ちを確信し、疑う様子も無かった。
「ザウルライガーは西側、オウキは東側。艦の指揮と援護が届く範囲で迎え撃って」
艦から指示を飛ばすリュウラ。
『了解です!』
『よかろう』
二人は言われた通り、別々の方向で敵を迎え撃つ。
クラゲ艦は双方を指揮・援護できるよう、その間に位置取った。
包囲しようと迫る小鬼のようなケイオス・ウォリアー‥‥不死型機Bスモールゴール。それらが飢えたハイエナのごとく襲い掛かる。
長い舌を振り回し、鋭い爪を突き立てて。
だがザウルライガーも、オウキのSフェザーコカトリスも、これら雑兵どもを問題としなかった。
小鬼の爪などでビクともせず、ライガーは容赦なく殴り飛ばし、蹴り飛ばし、胸の竜の口から炎を吹きつける。
倍近い身長の竜人に、小鬼どもは次々と粉砕された。
一方、オウキのコカトリスは旋風のごとく宙を舞う。飛行能力と卓越した身のこなしに、小鬼どもの舌など当たりはしない。
逆にその鋭い拳で容易く切り刻まれていくだけだ。
「いいぞ、押せ押せだ!」
サブ座席の一つでエリカが喝采をあげる。
戦艦も遊んでいるわけではない。長い触手を伸ばし、或いは針を飛び道具として撃ち出し、2機を援護して敵機の数を着実に減らしていた。
すぐに最後のゴールが倒れた。
だがそれを見ながら笑うマスタープリースト。
『やるではないか! 受けよ! ストームクロス!』
両手を突き出して放つのは、真空刃の破壊呪文。二つの竜巻が絡み合うように放たれる!
だがしかし。
『なんの!』
コカトリスが翼を広げ、竜巻を潜ってプリースト機へ迫った。
『舞葬琉拳奥義・旋風烈断!』
手刀が交錯、一閃!
プリースト機は避ける事もできず、まともに食らって装甲が切り裂かれた!
宙に離脱するコカトリス。
数秒遅れ、プリースト機は爆発した。
「やったぜ!」
ガッツポーズのエリカ。
しかしメイン座席でリュウラが疑わしそうに呟く。
「‥‥やけに呆気ない」
爆発が収まり、煙が薄れ、晴れた。
そこには‥‥一機のケイオス・ウォリアーが立っている!
「ええ?!」
一転、驚愕するエリカ。
驚いた理由は二つ。
一つは倒した筈の敵機が健在な事。
もう一つは‥‥姿形が似ても似つかないほど変わっている事だ!
巨大な頭と足だけの不気味な姿。
白い鬼面は目を光らせ、大きく裂けた口から牙を覗かせていた。頭の下部からは直接、二本の太い足が生えている。
『わっはっはっ! 私が元の世界で研究していた進化の秘術! それをさらに進め、応用したのだ‥‥魔王軍の研究者グループに属し、様々な世界の技術を得てな。ゴッドサファイアを手に入れればさらに進化を進められるだろう。マスタージェイドがやった事を踏み台にし、さらに強化し、今度こそ私が大魔王となる事も夢ではない!』
クラゲ艦のモニターには、その機体の名前――Sティアードフェイスが表示されている。その機体からの通信は、紛れもなくマスタープリーストの声だった。
そして敵機の周囲に蠢く影。
どこから現れたのか、新たなゴールどもが長い舌を出している。
「敵増援‥‥!」
敵を睨んで呟き、リュウラは奥歯を噛みしめる。
焦るエリカ。
「やっぱレイシェルとノブを呼んだ方がいいのか‥‥?」
だがプリーストは愉快そうに笑った。
『来てくれればいいがなぁ?』
そう言って笑いつつ、異形の機体を一歩前進させる。
『呪うがいい! 真の強者と同じ時代に生まれ落ちた、おのれの不幸を!』
飛びかかって来るゴールども。
ライガー、オウキともに再びそれを迎え撃つ。
だが交戦直後、敵味方を巻き込んで氷の嵐が巻き起こる!
変化したティアードフェイスが凍気の竜巻を吐き出したのだ。
それは範囲内の物全てを容赦なく氷らせ、破壊する!
ゴール達が壊滅しかける中、ライガーとコカトリス、クラゲ艦も大きなダメージを受けていた。
「味方関係なしか!」
焦るエリカ。
しかしその氷の嵐の中、逆らって走る巨体が一つ。
『ドリルフィーバー!』
叫ぶのはザウルライガー。
この場で最も堅牢な装甲で耐えながら、五つのドリルをティアードフェイスへ突き立てる!
大出力でねじ込まれるドリルの切っ先は、巨大な顔面を無残にも貫き、破壊した。
再び起こる爆発。
ライガーは後ろへ飛び退いて離脱する。
これで撃破だ。
‥‥と、思いきや。
『わっはっはっ! 次の形態だ!』
煙の中からティアードフェイスが現れた!
頭と足しかなかった姿から、手と頭が生えている。さっきまでの巨大な顔面が、そのままボディになっているのだ。
そして周囲に現れるゴールの群れ。
顔をひきつらせるエリカ。
「また増援‥‥!」
「あいつの魔力で、残骸から分裂させてるんだ‥‥だから平気で使い捨てる」
リュウラが敵の能力に見当をつけた時。
再び、いやさっきよりも強烈な凍気のブレスが吹き荒れた!
設定解説
・Bスモールゴール
不死型の青銅級機ケイオス・ウォリアー。
猫背気味の灰色のボディに丸く大きな頭を持ち、爪と長い舌を突き出している。
ある種の魔力を与えられる事により撃破された状態からの復活が可能という特異な能力がある。ただしそれを行える術者の数は決して多くは無い。




