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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
208/353

99 二人 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士兼副艦長。

シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。

リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。

SAスライガー:ロボ物なのにロボの戦闘が起伏もなく2分で終わる挑戦的な良作。

『見つけましたわよ!』

 レイシェルは機体を急降下させた。森の間の山道を歩くEムーンシャドゥの前へ、ほとんど真上から降りて立ちはだかる。


 ドリルライガーから頂いたフライトアジャスターSは、最高の飛行用パーツだけあり、機体の移動速度まで大きく上がる。

 ノブは飛行用パーツを造らず、ケイオス・ウォリアーを歩かせて移動していたので、容易‥‥とまでは言えないが追いつく事ができた。


「レイシェル殿‥‥? 追ってきたのか」

 面食らいながらノブが言う。

 それにレイシェルは怒りを隠しもせず食ってかかった。

『来たのかじゃないでしょう! 話を聞かせてもらいますわ!』

「聞かせるも何も‥‥」

 困ってノブは呟く。

 が、レイシェルは機体を屈ませ、操縦席のハッチを開けると縄梯子を下ろして地に降りた。

 溜息一つ、ノブも同じようにして外に出る。



 ケイオス・ウォリアーから降りた二人は、日差しを避けて道の脇の木陰で対面した。

 他の者はいない‥‥皆で手分けし、ダンジョンから四方に散ってノブを探したからだ。



「どういう事ですの!? 勝手にお別れなんて!」

 青筋を立てて怒鳴るレイシェル。

 ノブの肩でジルコニアが茶化すように言った。

「ほらな。怒られるだろ」

「しかし、僕の言い分は手紙に書いておいた。改めて何を訊かれても答えようがない」

 ノブのその言い分に、レイシェルはますます腹を立てる。

「一緒に旅してきて、ここでそんな一方的な言い分がありますの!?」


 だがノブは落ち着いて言うのだ。

「君の旅ならもう終わったよ。我が師もそれはわかってくださったが‥‥」

「ええ、同じ事を言っていましたわ。でもなぜ終わりですの? 魔王軍との戦いはこれからもありますわよ?」

 レイシェルは納得がいかない。

 ノブなら今後の事がわからない筈が無い。なのになぜ出て行くのか。


 ノブの返事は、レイシェルが予想しなかったものだった。

「戦力的な話なら、僕はもう必要不可欠ではない」


「‥‥何を言っているの?」

 思いもしなかった言葉にレイシェルの怒勢が削がれる。

 だがノブの調子は変わらない。当然のように、淡々と言った。

「僕に勝るとも劣らない味方がもう何人もいる。特にレイシェル殿、今の君の強さは既に僕を超えているかもしれない‥‥まして黄金級機(ゴールドクラス)を手に入れれば、確実に凌駕する」


 そんなわけがない、と、レイシェルは首を横に振った。

 言葉は出なかったが。

 そしてノブは、そんな反応を意に介さず言葉を続ける。


「そんな君達が王都へ入れば、さらに腕利きの聖勇士(パラディン)が三人も加わってくれるそうだな。あのゴーズと同格の大隊長を降したんだ、きっと心身ともに強い真の勇者達なんだろう。それが君達と手を結べば、僕の兄弟子相手でも、魔王軍の大隊長にでも、負けるとは思えない」

 ノブはその言葉に確信があるようだった。

 そこで少し言葉を切り――レイシェルの瞳をじっと覗いて――こう言った。


「そもそも戦う必要さえ無い。神蒼玉(ゴッドサファイア)を王都へ収める、それだけでクイン家の名声は十分戻る。もう危険を冒す必要は無い。君は家の復興に専念できるんだ」


 大賢者も指摘した通り、旅の目的は既に果たされている。

 そこにもうノブは必要無いのだ。

 ノブ自身がそう言っている。


 レイシェルは‥‥唇を噛んでから、一度頷き、そして言った。

「ええ、そうですわ。我が公爵家の栄光を取り戻せます。私はそのために旅してきたんですもの」


 ノブが笑った。静かに、穏やかに、微笑んだ。

「そして成し遂げた。ずっと目標に向かい続けて。強くなったな、君は。眩しいよ‥‥太陽みたいだ。僕にとっては、そうなんだ」


 言ってから空を見上げる。

 岩山と森に照り付ける強い日差しに満ちた空を。

「僕は‥‥せいぜい月かな。夜に闇で輝く事はできても、光の中では消える。どこにも見えない」


 そして再びレイシェルを見る。

 嬉しそうに。

 眩しそうに。

 少しだけ寂しそうに。

 どこか近寄り難そうに。

「僕が君にとって必要な事が、もう無くなってしまった。けれど‥‥成り行きで造られ、師に与えられなければ目標など何一つ無い僕だが。何かできる事が、すべき事が、どこかにはあるんじゃないか。そう考えるのは僕の感傷なのかもしれないが、探してみたいんだ」


 見つけた時には危機の中にあり、実家に寄った時には挫ける寸前だった少女。

 共に旅を続けるうちに、敵を退け、心強い仲間を引き入れ、苦難を超えて、偉業を達成して目的を果たした少女。

 その少女から、ノブも影響を受けていたのだ。


 自分もここまで、全力で、必死になれる物を見つけたいと。

 己の思う己で無かったが故に。


 ノブにとってこれはもう心に決めた事だ。

 この少女のように、自分も強い意志と譲れない自己を持ちたい。そう思う。

 目的そのものを探す旅が、果たして達成されるのかどうか――わからないし保証も無い。だがそれでもなのだ。


 レイシェルがそれを理解できない筈が無い。

 そう思うノブの前で、レイシェルは――


 (うつむ)いていた。


「どうしてそれを、どこか別の場所へ探しに行ってしまいますの‥‥!」

 絞り出すような、苦しそうな声。


 その足元に、涙が落ちた。


「え‥‥?」

 ノブには状況が理解できなかった。


 レイシェルは(うつむ)き、顔を伏せて‥‥泣いていた。

設定解説


・戦力的な話なら、僕はもう必要不可欠ではない


この時点で最大射程と最大火力と攻撃範囲(MAP兵器)はレイシェル(Sエストックナイト)がノブ(Eムーンシャドゥ)を上回っている。

継戦能力ではまだノブの方が上だろうが、メンバーの数も増えて来たので一機だけで延々戦う必要は以前より薄い。

機体の整備やアイテム作成も母艦でやってもらえるようになった。

乏しい戦力でやりくりしている時期と、手札が増えてからの戦い方では、求められる物が違うのだ。

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