95 師匠 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士兼副艦長。
シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。
リュウラ:クラゲ艦・Cウォーオーの艦長を勤める魔法戦士の少女。苦手な命令は「はい、誰かとチーム作るように」
敵機の剣が、光線が、容赦なくライガーへ乱れ撃たれた。
『ぬおおぉぉ!』
装甲の薄い箇所を集中的に狙われ、絶叫するライガー!
‥‥しながら、敵への反撃タックルとファイヤーは忘れない。
絶叫はするが、それは反撃しないという事ではないのだ。
『被ダメージ増えてるのか? あれ』
クラゲ艦Cオーウォーのブリッジで首を傾げるオーガーハーフエルフのエリカ。
それにリュウラが頷く。
『うん。100受けるダメージが110になる程度に』
装甲の薄い所を狙われているが、薄い所自体が堅いのだ。
そんなライガーの反撃タックルで頑丈な敵機が吹っ飛ばされる。
『ザウルライガーのHP、強化パーツ込みで10000超えてたよな』
首を傾げるエリカ。
リュウラが頷く。
『うん。それに装甲は3000ぐらいあるし、【ガード】のスキルも上げてるから、戦意が高まったら受けるダメージも減る』
よって受けるダメージはどんどん減っていくのだ。
そんなライガーの反撃火炎で頑丈な敵機が火花を吹く。
『エースボーナスで、被弾するとすぐ戦意が上がったような?』
首を傾げるエリカ。
リュウラが頷く。
『うん。だから上限を上げるため【戦意限界突破】も3LVで習得してた‥‥あ、それでももう限界値だ』
モニターに表示されるライガーの戦意。150が上限の筈の数値は170に達していた。
そんなライガーの並の操縦者では決して出せないパワーでの反撃が、敵機を吹き飛ばして岩山の岸壁にめり込ませた。
数が多くて頑丈なので、ライガーをなんとかすり抜けてよろよろと後衛を襲う敵機も一応いた。
上空から飛来し、ファイティマンによる機動力上昇で異様に素早くなったSフェザーコカトリスの攻撃を受け、ことごとく両断されてしまったが。
「全滅しちまったか」
ジルコニアが散乱する敵機の残骸を見て呟いた。
まぁ正確には呆然と立ち尽くすキング機だけ、まだ残ってはいるのだが。
だがそのキングは‥‥
『フ、フフフ‥‥流石だな。伝説の騎士の一族の者とその仲間達よ』
操縦席で笑っていた。
『余裕があるようだな。何か切り札でもあるのか』
オウキのその問いに、キングは意気揚々と叫び答える。
『無論! 必勝を期すためには当然!』
ノブ達のモニター、その戦闘MAPに、敵を示すアイコンが次々と現れた。
岩山の陰で様子を窺っていた敵機が戦場へ飛んできたのである。敵増援、出現!
そしてその増援は‥‥全てがSマキシマムピース! 全く同じ機体だった。
飛来した4機、元からの1機。計5機となったマキシマムピースから通信が入る。
操縦者は、これも全て同じオリハルコンキング!
『『『『『不幸なことだ‥‥なまじ強いばかりに吾輩の本当の恐ろしさを見ることになるとは‥‥泣くがいい! 叫ぶがいい! その苦しむ姿が吾輩へのなによりの称賛なのだ!』』』』』
『これは!? 機体はともかく、操縦者まで同じとは‥‥』
異様な光景に思わず一歩退くザウルライガー。
クラゲ艦の中でエリカが首を傾げる。
『オリハルコンキングも人造生命体なのか?』
『違う筈だけど‥‥』
そう答えるリュウラも戸惑っていた。
だがノブは静かに言う。
「複製したんだろう。19年も前に人間を複製できる技術があったなら、それがさらに進んでいても不思議は無い」
ノブの横顔をぎょっとして見つめるジルコニア。
一方、オリハルコンキングはノブの言葉を得意げに肯定する。
『『『『『金属生命体の吾輩はそれに適した体質だったようだ。無論、全員が一つの目的のために全力を尽くす! 断言しよう! 量と質の合計ならば、貴様らがこれまで戦ったどの敵よりも高みにあると!』』』』』
5機のマキシマムピースが一斉に突撃してきた!
『『『『『一機ずつ順番に始末していくのが合理的な戦法!』』』』』
そう叫び、5機が集中的に攻撃を仕掛ける。
ノブのEムーンシャドゥへ、その超合金の剛腕を揮って!
ほとんどの打撃は捌いて避けるムーンシャドゥ。
だが避け続ける事で逃げ場を徐々に失う――この世界の戦闘用語で「連続ターゲット補正」と呼ばれる物だ。
ついに強力な一打がムーンシャドゥを捉えた!
吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられるシャドゥ。
だが強化改造の進んだ機体は、これまでのダメージがあってもなお耐えた。
HPが危険域に入りつつある事がモニターに表示されているが、ノブは果敢に反撃する。
肘の打撃用突起・エルボートリガーが敵機の胴体に命中した!
しかし‥‥ノブは呻く。
一体化した機体ごしに感じる感触に。モニターに表示された、敵機へのダメージに。
それらに顔を歪めて。
「クッ‥‥硬い!」
オリハルコンキングが上機嫌で嗤う。
『このオリハルコンチック装甲、そう容易くは砕けんわ! 戦えば‥‥勝つ!』
しかしそこにレイシェルの凛とした力強い詠唱が響く。
『【光熱の領域、最終第七の段位。真なる極小の核は分かれ融合する。速き風は光と共に全てを滅する】――ニュークリアーブラスト!』
光と熱の爆発が、5機で密集していたマキシマムピースを全て巻き込んだ。
『『『『『ウギャアアァァ!』』』』』
同時に絶叫するキング!
「学習しろよオメー」
MAP兵器の存在を忘れていたキングを見てジルコニアが呆れる。
『『『『『お、おのれ‥‥』』』』』
全身から煙をあげてよめきながら、それでもマキシマムピースは一機も倒れない。
その耐久力は流石というべき物である。
しかしそこにザウルライガーが5本のドリルを唸らせながら突撃した!
『ドリルフィーバー!』
上空からはSフェザーコカトリスが剣呑な拳法の連撃で強襲する!
『舞葬琉拳奥義・風刃降断!』
巨体のドリルに貫かれた機体が、手刀と空中蹴りの連打で首を飛ばされた機体が、ほぼ同時に爆発!
『『ウギャアアァァ!』』
敵機、残り3機!
一瞬で粉砕された味方機を見て、残る三機が慄く。
『『『こ、これは一体!?』』ウギャアアァァ!』
そのうち一機はレイシェルのSエストックナイトの魔法剣スピンストームに頭を貫かれて爆発した。
訂正。敵機、残り2機!
味方各機に敵機の予想行動パターンを送りつつ、リュウラがクラゲ艦のメイン座席で呟く。
『強い大将が一機しかいない部隊より、ワンランク落ちても強敵が複数いる部隊の方が手強い。それは本当』
『『そ、その通りである!』』
全力で頷くキング。
『でも私達、あなたぐらいの相手なら普通に勝てるから』
『あたしらも強くなったなぁ』
無情な応えを返すリュウラ。それを聞いて、サブ座席の一つでエリカがうんうんと頷いた。
『『わ、吾輩をかつごうとしているな! 心理的なトラップだ! そんな不確実な情報に踊らされる我輩ではないわ!』』
操縦者の激昂とともに、拳を繰り出す2体のキング機。
その攻撃があくまでノブ機に向いているあたり、怒りに流されず戦法を変えない知性が窺える。
『【光熱の領域、最終第七の段位。真なる極小の核は分かれ融合する。速き風は光と共に全てを滅する】――ニュークリアーブラスト!』
距離をとらないので、レイシェルは遠慮なく最強呪文をMAP兵器として放った。
『『ウギャアアァァ!』!』
当然、2機とも巻き込まれた。
戦法を変えない事で、大した事ない知性が窺える。
爆発の光の中、2機が力なく倒れる。
それを見てジルコニアが呟いた。
「では、さらばだ‥‥てトコか?」
設定解説
・Sマキシマムピース
操縦者オリハルコンキングをそのままスケールアップした姿のケイオス・ウォリアー。
主な武器は剛腕だが、目からビームを撃つ事もできる。
白銀級機は本来1機しかない特注品であるが、この機体は例外的に5体造られている。
これを利用して4機は姿を隠して交戦、途中で増援として現れて敵を驚かせ、意表をつかれた相手を集団で叩きのめす戦法を得意とする。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:15000 EN:300 装甲:2000 運動:100 照準:150
射 キングビーム 攻撃3400 射程1―5
格 キングパンチ 攻撃3800 射程P1―2




