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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
189/353

82 封印 5

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士。

シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。

ゴーズ:元陸戦大隊長。なりゆきでとりあえず同行している。

高YA丸:ONIシリーズもWINキーだからいけるって。ダンジョンはいらねーが。

 嬉しそうに嗤いながら、レイシェルへとゆっくり迫る魔人ジェイド。

 門から出たレイシェルは、臆する事無く魔人ジェイドへと身構える。そして凛とした声で力強く呪文を唱えた。


「【光熱の領域、最終第七の段位。真なる極小の核は分かれ融合する。速き風は光と共に全てを滅する】――ニュークリアーブラスト!」

 美しくさえある声とともに、輝く魔力球がレイシェルの手に生じる。

 魔人ジェイドの両眼が見開かれた。

「この呪文は!? 魔術師系攻撃呪文最大の、最高位の‥‥!」


 戦場を艦内から見ているオーガーハーフエルフのエリカ。

 彼女はモニターに表示されるレイシェルのステータスを見て驚愕する。

「レイシェル!? これ、どういう事だよ‥‥!」



特殊技能:ケイオス9 底力9 援護攻撃1



 レイシェルのエースボーナスで底力LVが9になっているのはわかる。

 だが聖勇士(パラディン)ではない筈のレイシェルが、異界流(ケイオス)を極限のレベルで習得しているとは!?


 実の所、理由は単純。

 聖勇士(パラディン)なのである。レイシェルを含めた、240年前の英雄ダイザックの子孫の多くは。


 240年前から、クイン家には子宝が授かる事を祈って毎年行われる儀式がある。

 専用の祭壇を設け、祈りの言葉により半日近くをかけて行われるこの儀式は、()()()()懐妊を祈る儀式という事になっている。

 だが当主とその妻にだけは真の意味が教えられてきた。

 これはある種の、変則的な召喚魔法だという真実が。【召喚輪廻の儀式】という魔術儀式だという事が。


 召喚する対象は魂。

 異界人を、異界流(ケイオス)を有する聖勇士(パラディン)の、死亡後間もない者の魂を召喚するのだ。

 無論死者の魂なので体は無い。そこで魂は儀式によって宿される――母体の(はら)に。


 召喚されない者の魂が他所の世界からインタセクシルで生まれ変わる事は無いとされている。

 だから召喚するのだ。そのための魔法を儀式の形で継承してきたのだ。


 しかしそうなると生まれてくるのは()()()()()()()()()()異界流(ケイオス)は異界人の記憶とともに、奥底に封じられる事となる。

 よってクイン家の者は、代々己の中にある異界流(ケイオス)に気づかず一生を終えて来た。レイシェルのように「前世の記憶」を垣間見る者もいたが、それが意味を持つ事は無かった。

 それも召喚輪廻の儀式を作成した者にはわかっていた事だ。

 秘められた異界流(ケイオス)も、神蒼玉(ゴッドサファイア)に触れればその魔力で解放される。それを見越しての事なのだから。


 【召喚輪廻の儀式】は、クイン家直系の者が神蒼玉(ゴッドサファイア)を手に入れた時に最強の異界流(ケイオス)を有するよう、その準備として作られた物なのである。


 そして240年経った今、それを実行したのがレイシェルだったのだ――!



 光球をレイシェルは放った。

 それは膨張し、魔人ジェイドを捉え、大爆発を起こす!

 魔力の結界により爆発の方向は限定され、術者やその仲間は巻き込まれないが、結界の向こうは光と熱に焙られ地面が焼けて弾け飛んでいた。

 これがこの世界の魔術師系呪文最強の攻撃魔法、熱核撃である‥‥!


「なんと‥‥まるで私の世界を焼き尽くした炎のような‥‥」

 驚愕するオウキ。

 ゴーズも唸るように言う。

「俺は太陽ができたのかと思ったぜ」


 光が収まり、結界は消え、煙をあげて焦げる地面が露わになった。

 岩が吹き飛び、山頂はその様相をがらりと変えている。

 しかし――その中央に立つ巨体。


 魔人ジェイドは生きていた!

 体から煙を上げながら、その鎧を焦がしながら、怒りの眼差しをレイシェル達に向ける。

「やって‥‥くれるのう」


 だがその恐るべき生命力を前に、ゴーズが嬉しそうに立ち上がった。

「ふん、しぶとい。まぁお嬢ちゃんに全部持って行かれずに良かったという所か」


「ほざけ!」

 叫んで魔人ジェイドが右手を掲げた。

 その掌に魔力の光球が生じる。

 そして唸るように呪文を口にした。

「ニュークリア‥‥ブラスト!」


 先ほどレイシェルが放った、魔術師系最強の破壊魔法!

「奴も使えるのか!」

 オウキの戦慄する声とともに、魔人ジェイドが光の球を放った!


 だがほぼ同時に――

「ニュークリアーブラスト!」

 レイシェルも再度、光球を撃ち出していた。


 二つの魔力球が中空で激突! 激しく押しあう。

 己が放った球へ、さらなる魔力を送る魔人ジェイドとレイシェル。


「くっ‥‥」

 苦悶に顔を歪めるレイシェル。

 その後ろで焦るジルコニア。

「やべぇ、お嬢が圧されてるぞ」


 一目でわかる力の差、ジェイドの球がレイシェルの物を明らかに圧している!

 押し合う二つの球の塊は、はっきりと一行へ迫ってきた。


 だがゴーズが両腕を輝かせ、渾身の光速拳を放つ!

「ストロンガーホーン!」

 内的宇宙パワーで生じる光線が魔人ジェイドを襲った。


 だが魔人ジェイドは片手をあげ、その攻撃を受け止める。

 しかしその防御のため注ぐ力が分散し、レイシェルの魔力球はそれ以上押されなくなった。 


「拮抗したか‥‥」

 汗を拭うオウキ。

 そのすぐ横で、ノブがいつになく大きく身構えた。


 彼の周囲を舞う青い輝き。

 それは気流となってレイシェルへと伸びて届く。

 するとどうだ、彼女の魔力球がじりじりとジェイドの球を押し始めたではないか。


「なに!? これは!」

 魔法の正体をジェイドは見抜いた。


【マインドプール】――他の魔法使いと精神を結合させる超能力魔法。これにより己の魔力や精神力を相手へ貸し与える事ができる。


 超能力系魔法に破壊の呪文はさほど多く無く、同レベルの魔術師達の中では威力も低い方だ。

 だからノブは破壊魔法の激突に、破壊の呪文では乗らなかった。

 今、レイシェルはノブのMPを己の物として使う事ができるのだ。

 それは魔法に注ぐ力(パワーレベル)がそのまま上昇する事を意味する‥‥!


 光の球が押し合い、決して速くはないが、それでも魔人ジェイドに向かい――そして着弾した!

 結界が再び広がり、光と熱が大爆発を起こす。

 前の爆発に耐えて残っていた岩が、衝撃で粉々になり飛び散ってゆく‥‥。


「こ、これでどうだよ?」

 ジルコニアは目を凝らした。

 光が収まり、もうもうと煙を上げる山頂が広がる。

 果たして――


 魔人の影は、まだ立っていた‥‥!

「お、の、れ‥‥」

 ぎらつく両眼で怒りの視線を燃やしている。


 しかし全身あちこちに火傷を負い、鎧も半分以上吹き飛んでいた。三本角のうち一つは折れている。

 立ってはいるが、時折バランスを崩してよろめいていた。


 魔人は叫ぶ。

「来い! 我が機体!」

 声に従い、揺らめくオーラが輝いた。

 巨大な門を通り抜け、人造巨人が姿を現す。

 それは紛れもなく、ガデア騎士団の砦奥で製造していた新型機‥‥宝石のような頭部に黒い板を何枚も差し込んだ、黒い外套を羽織った機体だ。


 巨人が手を伸ばし、魔人ジェイドを拾うと鳩尾(みぞおち)へ持って行く。

 操縦席のハッチが開き、魔人はそこへ跳び込んだ。


「こっちもだ。急げ」

 ノブはそう言い、皆を先導してクラゲ艦Cオーウォーへと走る。

 一行全員がそれに続き、艦へと駆け込んだ。

設定解説


・【召喚輪廻の儀式】


編み出したのは240年前の勇者の仲間、大賢者トカマァクである。

儀式と聖勇士パラディンの魂を召喚する物だという真実は、クイン家の当主と正妻だけに伝えられてきた。

レイシェルの養母がノブを信用したのは、持ってきた書状にトカマァク自らが儀式の真実を記してあったためである。

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