78 封印 1
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士。
シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。
ゴーズ:元陸戦大隊長。なりゆきでとりあえず同行している。
MUジカ:RIアルロボット戦線を無かった事にしてねーで出すんだよ。
「封印に着いたぞ!」
クラゲ艦Cオーウォーの艦長席にて、オーガーハーフエルフのエリカが意気揚々と叫んだ。
メインモニターには眼前の光景が――岩山の頂上が映っている。
草も木も無い、岩と石だけの山頂。
自然にか人の手による物なのか、平らに均されている。
平屋が一件立つ程度の広さがあって、そこには――
「うん? もっと仰々しい物があるかと思ったぜ」
疑わしそうに言うゴーズ。
腕組みしつつオウキが呟いた。
「門である事は確かだが‥‥」
そう、そこには石造りの門があった‥‥いや、鳥居というべきか。
艦から山頂へと一行は降りる。
レイシェルは門を注意深く眺めた。
(何か特別な物を、特に感じたりはしませんけど‥‥)
少々警戒して様子を窺いつつ、ノブに訊ねる。
「これを潜ればいんですのね?」
「そうだぞ。そうするしかないつーか」
そう答えたのはジルコニアだ。
その言葉にノブは頷いた。
「封印を解ける者が潜ると神蒼玉が姿を現す。それまでは門は眠り、資格無き者が通っても何も起こらない。そういう仕組みなのだ」
「なるほどな。ダンジョンの宝箱に入れていたら力づくでブン獲られるかもしれねぇ。そもそもブツを出さないに越した事はねぇわな」
感心したように言うゴーズ。
レイシェルは意を決し、小さく「行きますわよ‥‥」と呟くと、門へと歩いた。
その真ん中を一人で潜る。
すると――
門で囲まれた空間が、一瞬だけ、虹のような煌めきを粉雪のように舞わせた。
輝きとともにレイシェルの姿が消える‥‥!
「レイシェルが!?」
仰天するエリカ。
彼女はこの場に神蒼玉が出てくると思っていたのだ。
しかしゴーズが「ほう」と呟く。
「神蒼玉が姿を現す‥‥てのは、置いてある場所に瞬間移動させるという事か。まぁお嬢ちゃんの前に出てくるってんなら嘘はついてねぇな。手に入れたら戻って来るだろ」
――封印の山頂から離れた、近いか遠いかもわからぬどこか――
そこは石造りの部屋の中だった。
窓など一つも無い。暑くも寒くも無い。息苦しくは無いが、空気がどこから入っているのかわからない。暗くはないが、灯りはどこにも見えない。
この世と隔絶されたその部屋にあるのは、転移してきたレイシェル。
背後には魔法陣――知識ある者が見れば、瞬間移動の魔力を帯びている事がわかるだろう。
そして前方には祭壇があった。その上に安置されて輝く、蒼く透き通った宝石が一つ‥‥!
それには魔力が宿っている。周囲に放たれるような物ではなく、例えるなら澄んだ泉のようだ。
しかしどれほどの魔力があるのかはわからない。大きくもなく、激しくもない‥‥あえて言うなら「深い」だ。どれほど探っても底を感じ取れない、無尽蔵の魔力が、小さな宝石の中にある。
有る、というより――宝石を通して魔力の泉を覗いているような印象をレイシェルは受けた。
「これが‥‥神蒼玉‥‥」
そう呟いて、気圧されながらもレイシェルは神宝へ手を伸ばした。
そっと指先が触れる。
そして――
「これは!?」
レイシェルが叫びをあげた。
彼女の意識は見た。
神宝によって開かれた、感覚の窓のその向こうを。
そして彼女は戦慄くのだ。
「そ、そんな‥‥そんな事って‥‥」
レイシェルは、その時、見たくも無い物を、しかしとうに知っていた物を見ていた――!
――その頃、封印の山頂では――
「私達はどうするんだ?」
エリカが訊ねても、ノブは門の方を見つめたままだ。
「ここでレイシェル殿が戻るのを待つ」
ふう、と溜息をつくオウキ。
「その間に敵が来るかもしれんな」
「そりゃ来るだろうよ。ほらな‥‥」
ニヤリと笑いながら言うゴーズ。
彼の視線は山頂の片隅を捉えていた。
そこに揺らめく魔力の波動を。
陽炎のような膜が生じ、そこからゴーズの期待した通りの物が姿を現した。
緑のローブを纏う、年老いた魔術師。
「久しいな、お主達」
マスタージェイドが姿を見せたのだ。
「ほう。一人で来たか、マスタージェイド。さぞ強力な隠し玉があるんだろうがよ」
そう言うゴーズの口調は明らかに浮かれている。
ずかずかと大股で、老人へと向かった。
「やっと借りを返せるぜ! ガキどもに着いていたのがようやく報われた!」
ゴーズから揺らめく夜空のような波動が放たれる。
内的宇宙のパワーを燃え上がらせ、ゴーズは正拳を放った。
老人まで十メートルはあろうかという間合いだが、輝く衝撃波が大地に切れ目を入れながら光の速さで飛ぶ!
その光が弾かれた。
衝撃で周囲の岩が揺れ、あるいは砕けるが‥‥老人は無傷だ。先刻から何も変わらない。
ゴーズの攻撃を跳ね返すため、左掌だけが掲げられていたが。
「ほう‥‥」
感心した声をあげるゴーズ。
その後ろで、エリカは驚愕に目を見開き、オウキは油断なく身構える。
そんな彼らに、老人は世間話でもするかのように言った。
「ここで待っていれば持ってきて貰える筈じゃな。新たな神蒼玉を‥‥」
半ば独り言のように呟き‥‥己のローブに手をかけ、前をはだけた。
薄手のシャツにズボンという、ラフな格好である。その下の肉体が薄っすらと窺えるが――萎びた老人の物ではない。逞しく力強い、精気のある体だ。
だがそんな事は誰も気にしなかった。
老人の腹に目を奪われていたが故に。
そこに魔力を秘めた宝玉があった。それを囲み固定する座金に埋め込まれて。
「ゴーズよ。お主の言った通り、儂はどうしても神蒼玉が欲しかった。だがお主はわかっておらん。黄金級機なんぞのためではない。その程度の物などではない」
老人の口調には抑えた感情が溢れていた。
「その程度の物であってたまるか。儂が最後の希望をかけて求めた物がその程度でたまるかよ」
苛立ちか、憤りか。
老人は煮えるような視線でノブ達一行を睨みつける。
そして呟いた。
「変身‥‥!」
老人の腹の神蒼玉が輝いた。
全身の細胞に稲妻が走り、別の物に変わってゆく‥‥。
もはやそこにいるのは、マスタージェイドと名乗っていた老人では無かった!
設定解説
・そもそもブツを出さないに越した事はねぇわな
よって魔王軍側が入手した強力なレアアイテムは、ラスダンのボス手前の部屋にでも入れとけよとなる。
実際にそれをやったDOラクエ7。ラスダン奥まで入っては出直して、を繰り返す事になった。
単にダルかった。