75 先祖 6
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士。
シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。
ゴーズ:元陸戦大隊長。なりゆきでとりあえず同行している。好きな中華料理は満漢全席。
長い髪をツインテールにした、くりくりした目の大きい、可愛らしい顔立ちの少女。
ガデア魔法騎士団の鎧を纏う彼女は、レイシェルの旧友にして以前敵に回った魔法戦士・エリザドラだった。
目を逸らす彼女へ駆け寄るレイシェル。
「エリザ! 貴女がオウキを助けてくれたんですのね」
その言葉を受けてオウキは頷いた。
「ああ。機体を自爆させた俺は、一応脱出はしたものの、爆発に巻き込まれて虫の息だったそうだ。意識を取り戻した時はエリザに治療された後だったから、自分では知らんがな」
それを聞いたレイシェルは実に嬉しそうだ。
「さすがは神官戦士ですわね! 見事な治療魔術ですわ」
「え‥‥こいつが? 何の神を信仰してんだ。嫉妬とか僻みか?」
以前会った時のエリザの態度を思い出し、眉を顰めるジルコニア。
ふう、と溜息をつくノブ。
「ジル。実際に治療できたならどうでもいい事だ」
そんな二人は置いておいて、エリザはぽつぽつとレイシェルへ言った。
「‥‥助かるかどうかは微妙な所だったけど。この人は並み外れて頑丈だったから」
「それでもエリザのおかげでしょう。もう魔王軍をやめて、私達に協力してくれますのね?」
だからこそ、傷ついたオウキを助けてここへ駆けつけてくれたのだ。
そう思ったレイシェルの声は明るく弾んでいた。
だが、エリザは――
「私はできない」
否定した。断った。
「えっ?」
驚き戸惑うレイシェル。
そこへドリルライガーが戦車形態のまま口を挟んだ。
『敵対した事なら、今回助けに来た事で償えたと思いますが』
「俺と違って、無駄な血を流してきたわけでもあるまい」
オウキもそう言って、暗に仲間入りを勧める。
エリザはやっと顔をあげた。
辛そうに、しかしレイシェルを真っすぐに見る。
「今ならまだ、借りを返した形でいられるから‥‥。でも私、これ以上の事をする自信ない。許してもらってついて行っても、お世話になるだけになっちゃう。それは嫌なの‥‥」
「そんな‥‥そんな事‥‥」
レイシェルは何かを訴えようとする。だが‥‥その何かを、上手く言葉にできない。
そこへノブがエリザへ声をかけた。
「行き先は決まっているのか?」
頭をふるエリザ。
「今から探すわ。こんな時勢だから、治癒魔法さえ使えればどこかに居場所はあると思うし」
それを聞いて、ノブは羊皮紙を取り出した。簡単な地図と地名が書いてある。
「グスタの行き先を聞いている。行って手助けしてやればどうだ。足が無いならあの機体を使えばいい」
そう言って指さすのは巨人戦士型の量産機Bソードアーミー。
かつてオウキが一行から出て行こうとして購入した物である。
艦に置いてあった予備の剣と弩を装備させてあるので、もはや丸腰では無い。
「ノブ!?」
驚きながらもレイシェルは抗議の声をあげた。
エリザが出て行こうとするのを、止めるどころか勧めるとは?
しかし‥‥エリザ本人はノブに軽く頭を下げた。
「ありがとう」
その表情は、僅かではあるもののどこか和らいでいた。
――エリザの乗った機体は、艦を出て去って行った――
格納庫の窓から、レイシェルは去っていくエリザ機の背中を寂しそうに見送る。
その後ろでゴーズがオウキに訊いていた。
「で、あの白銀級機は今後お前が使うわけか」
「エリザが要らんというならそうさせてもらう。かつて私が乗っていた物だしな」
二人が話しているのはオウキとエリザが乗って来た白銀級機、Sフェザーコカトリスの事だ。
そんなオウキへと、今度は――さっき格納庫に降りて来た――オーガーハーフエルフのエリカが訊く。
「ここまで二人乗りで来たのか?」
頷くオウキ。
「そうだ。ガデア魔法騎士団に持ち込まれて修理されたこの機体をエリザが乗機に選び、レイシェル達を追う途中で戦場を通りがかって私を見つけた。そこからは操縦者を代わり、ここまで来たのだ」
ゴーズは天井を仰いで溜息をついた。
「結局、俺の機体は無しか」
今度こそ自分に白銀級機が手に入るのではないか。そんな期待をしていたのだ。
その周りをスイッと飛ぶジルコニア。
「オッサン、操艦やれよ」
だがゴーズはふんと鼻を鳴らした。
「一人で好きにやれない機体は使いたくねぇ」
艦の場合、全能力を発揮するためにはクルー達に協力してもらう必要がある。
ゴーズにはそれが性に合わないのだ。
そんな纏まりの無い話に背を向けて加わらず、ノブは窓の外を眺めるレイシェルへ声をかける。
「師匠は言っていた。選択と食事は、真に人であれば止める事はできない‥‥と。あの娘の昔は知らないが、今は自分の考えで自分の行き先を決めた。それは良い事だと思う」
頷くレイシェル。
「ええ、そうですわね。でも、一緒にいられない事を寂しく思うのは、仕方がない事じゃありません?」
そう言って彼女はノブへと振り返った。
訴えるような、堪えるような、僅かに潤んだ瞳で。
ノブは静かに、神妙に、その視線を受け止める。
「そうだな‥‥」
そう言って頷きながら。
設定解説
・Sフェザーコカトリス
かつてオウキがマスターウィンドと名乗り乗っていた機体。
戦闘で破壊されたものの、魔王軍に回収されて修理されていた。
本来は空戦大隊の物だが、拾ったのが陸戦大隊だったのでそのままチョロまかされ、しかし乗る者もおらずに死蔵されていたのである。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:6000 EN:200 装甲:1700 運動:120 照準:145
格 殺人拳法舞葬琉拳 攻撃3200 射程P1―3
射 ブレイドフェザー 攻撃3700 射程2―7
格 舞葬琉拳奥義 攻撃4600 射程P1―2 装甲減少2