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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
178/353

71 先祖 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。合体形態・ザウルライガー。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。

エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士。

シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。

ゴーズ:元陸戦大隊長。なりゆきでとりあえず同行している。好きな車はダンプカー。

 映像に出たのはどこかの迷宮内。

 石造りの一室に二人の青年がいた。

 一人は落ち着いた雰囲気の魔術師。そしてもう一人は、剣を構えた凛々しい青年だった。


 剣を手にした青年は、金髪碧眼、青い鎧を纏った長身。

 涼やかで端正な容姿ながら、その目の光は真っすぐで熱い。

 彼は強い意志と強い声で叫ぶ。

『魔王軍八部衆、夜叉魔神アスラム! 今日で決着をつける!』



「まぁ! 兄様みたいな方‥‥」

 映像を見て思わずレイシェルは呟いた。

 声には嬉しさと微かなときめきが混じっている。



 青年に対峙しているのは鬼族の巨漢。

 無骨な鎧と巨大な金棒を装備し、剣呑な牙を剥きだして笑う。

『クシャクシャー!|(注:笑い声) 勇者グロムディ、今日で貴様も終わりだ』



 青年は240年前の勇者だった。

(え‥‥じゃあ先祖ダイザック様はどこ?)

 レイシェルが首を傾げると同時に、映像内に何かが跳び込んできた。



 別の鬼族戦士の屍である。

 頭をカチ割られた無残な屍が、何者かにブン投げられたのだ。


 床に転がる屍を見て、夜叉魔神アスラムが目を見開く。

『なにィ!? 我が右腕、非道鬼ゲドール!』

 そこへかけられる声があった。


『ボケがー。この程度のガキなんぞ大阪には掃いて捨てるほどおるわい』


 映像内に現れたのは。

 旧日本軍の軍服の上に無理矢理甲冑を纏った、いかにも粗野な男だった。


 汚れた帽垂付き略帽の下に、怒った猿のようなツラがゲジゲジ眉毛を吊り上げている。

 背は人並みだがガニ股で、肩をいからせているのもどうにも品が無い。

 右手に剣、左手に棍棒と、とても珍しい二刀流。だが構え方からして流派がどうというスタイルでもなさそうだ。多分、手に入れた得物を何も考えず使っているだけだろう。


『ダイサク! 生きていたのか!』

 男へ嬉しそうに呼びかける勇者グロムディ。

 男は歯茎をむきだしてニカッと笑った。

『このワシ、豊臣(とよとみ)大作(だいさく)は地獄の閻魔に嫌われてるからのう。代わりにそこのドアホウをあの世に掃いて捨てたるわ。いくぞ、グロム! トカマァク!』

『ああ!』

 勇者グロムディは信頼に満ちた瞳で頷く。

 その後ろで、魔術師――後の大賢者もまた。


 勇者パーティ三人と魔王軍幹部との、激しい戦いが映像の向こうで始まった――!



「ダイザック=クイン。クイン家に婿養子入りした時に改名したが、元はダイニホン帝国から召喚された軍人崩れだったそうだ」

 ノブが淡々と説明する。

 ジルコニアがレイシェルの上で羽ばたき、訊いた。

「お嬢、大丈夫か?」


 レイシェルは大口を開けたまま、呆然と映像を見上げていた。



 映像が切り替わる。

 暗雲の下で半壊した城の中、ダイサクが怒声をがなり立てていた。

『ボケエ! 敵が怖くてとんずらブッこいた王サマの手順なんぞ知るか! さっさと王家の宝物庫とやらの場所を教えんと、このボロ家の基礎ごと淀川に沈めんぞコラア!』

 自分より大きな騎士の襟首を掴み、力任せに吊り上げるダイサク。


 周囲には叩きのめされた騎士達がゴロゴロ転がっている。

 勇者グロムディが必死にダイサクを後ろから羽交い絞めにしようとしていた。

『やめろダイサク! 落ち着け!』

『彼に一番無い物ですよ、それは』

 魔術師――若き日の賢者トカマァクは肩を竦めて数歩離れた所にいた。



「なあ、あの男‥‥パーティの問題児なんじゃないか?」

 オーガーハーフエルフのエリカが誰の事を言っているのか、それは明白だ。

 ジルコニアがレイシェルの上で羽ばたき、訊いた。

「お嬢、大丈夫か?」


 レイシェルは床にへたり込んでいた。



 次の映像では、壁の漆喰が半分がた剥がれた貧しい部屋で、女性に食ってかかっていた。

『お貴族様の娘がどうした! 脱げば女にあるもんなんぞ乳と尻だけじゃあ! 八児の母ちゃんにしたんぞテメエ!』

 腕を掴まれて怒鳴られているのは、まだ二十にはならない、少女とさえ呼べそうな女性である。


 古びて飾り気は無いが、着ている物は薄紫のドレスだ。

 長い黒髪に切れ長の目の、静かにしていれば落ち着いた雰囲気の美女であろう。

 だが顔の左半分は火傷でただれ、左腕が無い事は垂れ下がった袖で明らかだった。体の左半分が焼かれるような、過酷な被害にあったのだ。


 彼女は大声で怒鳴るダイサクへ毅然と言い放つ。

『品の無い方ですね。貴方はケダモノですか』

『そうに決まってるやろボケがー!』

 ダイサクは怒りにまかせて女性の右腕を掴んだ。

 掴まれた女性は――足が震えているので、恐れがある事は確かだが――目を逸らさずにダイサクを睨み続けた。



『ケガ人の女性にこの態度はいかがなものかと、自分は思いますね』

 モニターごしに言うドリルライガー。

 ゴーズは腕組みして笑っていた。 

「いい野郎じゃねぇか! 俺は気に入ったぜ」

 ジルコニアがレイシェルの上で羽ばたき、訊いた。

「お嬢、生きてるか?」


 レイシェルは床に突っ伏していた。

 小さく呟く。

「死にたいですわ‥‥」



 再び場面が変わる。

 暗雲の空の下、白銀級機(シルバークラス)の騎士型ケイオス・ウォリアーが剣を構えていた。

 その機体から勇者グロムディの凛々しい声が轟く。

『魔王軍八部衆、迦楼羅魔神ガルダム! 今日で決着をつける!』


 騎士型機が見上げる先では、半人半鳥型の白銀級機(シルバークラス)が翼を広げていた。

『パーリパーリ!|(注:笑い声) 勇者グロムディ、今日で貴様も終わりだ』


 激突する二機。

 だが騎士型は不利だった。

 すぐ側に半ば燃え落ちた大きな館がある。それを庇いながら戦っているのだ。


 付近の地形と、燃え残っている部分を見て、レイシェルはふと感じた。

(もしや当時のクイン家ですの‥‥?)


 ガルダム機の放つ高熱火炎が降り注ぐ。

 その射線上には館があった!

 身を挺して庇おうとするグロムディ機。


 だがグロムディ機を突き飛ばし、別のケイオス・ウォリアーが割り込む。

 ずんぐりしたデブの虎型機が!

 デブ虎機は壁の役割を奪い、館の代わりに炎に焙られた!


『ダイサク! 無茶をするな!』

 叫ぶグロムディ。


 館の側の木陰からも人影が現れる。

 先の映像に出ていた、左腕を失った女性だ。

『やめてダイサク! クイン家の役目は終わりました、貴方達が生きる事が今は一番大切です!』


 だがダイサクは、デブ虎機の中で吠えた。

『うるせー! 尋常小学校中退のワシが世間様の一番なんぞ知るわけがあるかー!』


 デブ虎は跳んだ!

 炎の奔流を逆光し、鯉の滝登りのごとく怪鳥型機へ跳んだ。

 それが我慢ならなかったか、ガルダム機は炎の出力を上げる。

『死ねい! 鬼神魔法・地獄の灼熱豪雨!』


 デブ虎機のあちこちが燃えた。溶けた。小さな爆発をいくつも起こした。

 だが止まりはしなかった。

 ダイサクが吠える。吠えてばっかだがまた吠える!


『見さらせー! これがワシの根性じゃあ!』


 デブ虎の渾身の頭突きが怪鳥を捉えた!

 装甲が砕け、部品が飛び散る。

 怪鳥は天から落ちた。落ちて大地に叩きつけられた。なんとか身を起こすが、もはや飛翔は不可能。


 デブ虎は‥‥上半身が地面にめり込んだ無様な体勢で動かなくなっていた。


 勇者と魔術師の機体が弱った魔王軍の機体を叩きのめす。

 今日も正義の勝利だ。



 映像を見ながら腕組みしつつ呟くゴーズ。

「まぁ間違いなく主人公じゃねぇな、ご先祖はよ。いいとこコメディリリーフ程度だ」

 うんうんと頷くエリカ。

「でも、なんかすごく一生懸命なのはわかるな」


 倒れたまま、顔だけは上げて映像を見ているレイシェル。

 彼女の横に座り、ノブは言った。

「最も尊敬している友人は勇者グロムディ。最も愛している友人は騎士ダイザック。師匠は僕にそう語ったよ」

設定解説


・勇者グロムディ


240年前に魔王軍を打倒した勇者。

田舎領主が領地防衛のため召喚した聖勇士(パラディン)であり、真面目で清廉で熱意に溢れる好青年。奇麗事を信じすぎるきらいはあったが、悪を許せぬ正義漢でもあった。

田舎に攻めて来た魔王軍の下っ端幹部を倒した事をきっかけに、世界を救う旅へ身を投じていく。

賢者トカマァク、戦士ダイサクと出会い、パーティを組み、他の人々と知り合い協力しながら苦難の旅の末に黄金級機(ゴールドクラス)のケイオス・ウォリアーを手に入れ、やはり黄金級機(ゴールドクラス)の操縦者であった魔王を倒した。

旅の途中で陽の妖精と恋に落ち、平和が戻った後は彼女の属する秘境へ向かい、人々の前からは姿を消した。


騎士ダイザックの伝説の大半は勇者グロムディのエピソードが混ざった物である。

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