68 潜伏 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。
ノブ:地上最強の霊能者。
ジルコニア:ノブに同乗する妖精。
ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。
オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。
エリカ:オーガーハーフエルフの女整備士。
シランガナー:人造人間型強化パーツ・ファティマンの一体。
KIカイダー02:大きかった覚えは無いがいけると思えばいけるやろ。SUパロボに参戦希望。
戦いは終わった。
夕陽の下、散らばる魔王軍機の残骸から、エルフ作業員達が物資を回収するため走り回っている。
その中で威容を放つ竜型合体用機タイタンケラトスを、元ガデア魔法騎士団員のグスタは見上げていた。
「お前らが作ったのか、あれ。すげえな」
感心するグスタに、ちょっとバツが悪そうなレイシェル。
「あ、うん、そうですわね」
(お前ら、に私は入っていませんけど‥‥)
飯を煮る練習が新型機の製造に劣る価値でもあるまいが、まぁ本人がどう感じるかは本人次第だ。
そこへオーガーハーフエルフのエリカが不機嫌に口を挟む。
「お前は捕虜だ。質問をするのはこっちだろ!」
怒るでもなく逆らうでもなく彼女へ振り向くグスタ。
「そうだな。で、何が聞きたい」
最初に問いかけたのはレイシェルだった。
「どうしてまた私達と戦いましたの?」
宿場町で彼を見逃したが、それでも恨まれていたのか。そう思うと悲しくなる。
グスタは‥‥少し言い淀んで、レイシェルから僅かに目を逸らした。
「どうにもスッキリしなくてな。レイシェルは騎士団を追い出されて、家も潰れそうで、魔王軍にも目をつけられてる。それでも必死こいて踏ん張ってる」
そして自嘲気味な笑みを微かに浮かべた。
「俺は‥‥敵にへつらって化け物頼りにして手段も選ばなかったのに、お前らに負けちまった。その上で見逃してもらっちまってよ」
「情けねぇなあ」
「おい、ジル!」
呆れた声を漏らすジルコニア。
それをエリカが見かねて諫めた。
だがグスタは怒りを見せない。居心地悪そうな顔で後頭部を掻く。
「情けねえわ。でも、それにしたってもうちょい形ってもんがあるだろ。だから正面からぶつかって終わりにしたかったんだよ」
彼個人の感傷である。迷惑な話である。
だがノブは。
「なるほど。手強かったぞ」
腕組みして、機嫌良さそうに、笑みさえ浮かべて。そう言った。
グスタは「へっ」と呟く。
どこかさっぱりした顔で、だ。
そこへゴーズが訊ねる。
「マスタージェイドは何してる?」
「俺らに出撃先を指示したら部屋に籠っちまった。何かを開発してるらしいがな」
無論、具体的に何をしているのかグスタは知らない。
考え込むレイシェル。
「やっぱり黄金級機なのかしら‥‥」
この世界で、今、神蒼玉を使って造り出せる最も価値の高い物となれば、誰もがそう考える。
それ以上の使い道は今の所無いのだ。
今度はノブが訊いた。
「俺らと言ったが、他にも僕らを狙う部隊があるんだな?」
「ああ。お前達を探す部隊が俺含めて二つ。もう一つが封印の地を見張ってる筈だ」
グスタの言によれば、他に三部隊いる事になる。
「どんな奴らだ?」
それもノブが訊くが、今度は首を横にふって拒否するグスタ。
「そこまではバラせねぇって事で。俺はお前らに情報をチクりに来たわけじゃねぇからな。どうしても知りたいなら魔法で頭の中でも覗いてくれ」
「やるのか?」
エリカがノブに確認する。
だがノブは肩を竦める。
「気は進まんな」
やれば簡単な事である。
ノブの力量からしても、グスタが抵抗しないだろうという点からも。
だが、ノブはやらない事にした。
「これからどうしますの?」
レイシェルが心配そうに訊く。
敵にまわる事はもう無いだろう。それは心配していない。
だがグスタは二度もレイシェルの捕獲に失敗している。魔王軍に戻る事はできない筈だ。
グスタは夕陽を眺めながら答える。
「魔王軍と戦う事にする。逃げ回るぐらいならこっちから、でもあるし‥‥祖国を取り戻すためとかいう真っ当な理由もある。ガラじゃないのは認めるけどな」
『それなら我々と来るか?』
そう訊いたのは、分離して近くに来たドリルライガーだ。
勇者たる彼も、今のグスタならパーティに加えても良いと判断したのである。
しかしグスタは、笑いながらもそれを断った。
「それは恥知らず過ぎるな。どこかの冒険者パーティにでも入れてもらってなんとかやっていくわ」
そう言ってレイシェル達に背を向け、いずこともなく歩き出した。
夕焼けの下、背中越しに一声かけて。
「負けるなよ。お前らならやれる筈だからな」
設定解説
・Cボーンドムササビ
陸戦大隊親衛隊マスターギルが艦長を勤める空中戦艦。
ムササビという事だが、黒いボディに骨のような外部装甲がはりついており、どこがムササビなのかは一考の余地がある。
三種の武装のうち、対空火器の「ボーンミサイル」は最弱の威力を誇り、空中での撃ちあいは得意ではない。
半面、地上爆撃用の「空爆」は空適応が無い反面、地上適応がSであり、地面にいる敵にスペック以上のダメージを叩きだす。
最強の「ムササビヘルハッグ」は敵を翼で包み込みながらベアハッグをかます荒業であり「デカブツには懐に潜り込むべし」という浅はかな考えの愚か者を何人も地獄へ追いやって来た。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:24000 EN:200 装甲:1500 運動:80 照準:150
射 ボーンミサイル 攻撃3000 射程1―5
射 空爆 攻撃3500 射程P1―6
格 ムササビヘルハッグ 攻撃3800 射程P1―2