17 死闘 1
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
旅を始めて最初に訪れた街を魔王軍の魔手から救った彼へ、
今、恐るべき刺客が差し向けられていた――。
ジン達の乗る輸送艦Cパンゴリンは、その夜のうちにハチマの街を離れた。
その格納庫では、自機が整備されるのを横目に、ジン達がああだこうだと相談している。
「マジでそのゴブリンを部下にするんですか!?」
「ああ。名前はゴブオというらしい」
目を丸くする整備班にゴブリンを紹介するジン。
「ウェヘヘヘ、あんじょう頼むッス」
たった一匹ついてきた元魔王軍兵のゴブリン――ゴブオはニヤニヤ笑いながらへこへこ頭を下げた。
整備班達は誰一人として警戒を解かない。もちろんそれが当然なのである。
まぁそれは仕方がない事として、ジン達三人は相談を始めた。
「ゴブオにはこれから何をさせるの?」
ナイナイに訊かれ、少し考えるジン。
「おいゴブオ。何が得意なのか言ってみろ」
「へい! 街道での待ち伏せっス。武装と数がたいした事ない奴らをよく狙いますぜ」
喜色満面のゴブオ。
「……そうか。それはもう忘れろ。他に何か特技は無いか?」
ジンはもう一度訊き直す事にした。
「へい! 人里への奇襲っス。先にオークやコボルドのウスノロ連中が突っ込むまで微妙に待つのがコツですぜ」
喜色満面のゴブオ。
「…………そうか。それはもう忘れろ。他に何か特技は無いか?」
ジンはもう一度だけ訊き直す事にした。
「へい! 空になった倉庫への着火っス。こっそり逃げ隠れていた奴が燃えて悲鳴をあげる事がたまにあって絶頂モンですよ!」
喜色満面のゴブオ。
ジンはゴブオに背を向け、近くの整備員に訊いてみる事にした。
「ゴブオのステータスを知りたい。だが【スカウト】で調べるためには、ケイオス・ウォリアーに乗らないといけないのか?」
そこへヴァルキュリナが姿を現した。
一枚の鏡を手にして。
「話を聞いて見に来たが……本当にそんな魔物を連れてきたのか」
呆れてそう言いながらも、手にもつ鏡をジンに渡す。
「ケイオス・ウォリアーに乗らなくても、この鏡でステータスが確認できる」
そういうアイテムらしい。だがジンは首を傾げる。
「ありがとさんよ。しかしなんで鏡なんだ?」
「古来から情報を映し出す魔法は鏡か水晶玉を使う事が多くてな。その延長にある魔法だからだ」
ヴァルキュリナの説明を聞き、ジンはなんとなく納得した。
この世界の常識や習慣にはいまいち慣れない物もあるが、だいたい理由らしき物はあるようだ。
確かに、鏡にはケイオス・ウォリアーの操縦席モニターとほぼ同じメニュー画面が映っている。
ジンはそれを操作し、ゴブオのステータスを映し出した。
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魔王軍兵 レベル6
格闘140 射撃140 技量168 防御117 回避82 命中87 SP52
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「なんだ、捨てて埋めようかとも思ったが意外と使えそうだな。レベルが6もあるとはよ。確か俺らでさえレベル4……いや、さっきの戦闘でもう少しは上がっているか」
そう言うジンの頭上へリリマナが飛んで来る。
「さっそく確かめようよォ!」
言われてジンは自分のステータスを映した。
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ジン レベル7
格闘162 射撃160 技量187 防御142 回避95 命中104 SP74
ケイオス3 底力7 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド 【スカウト】【ウィークン】
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「おお! ケイオスレベルが上がってるじゃねぇか。スピリットコマンドも増えたか! よしよし、効果は……」
喜びつつ詳細を表示させるジン。
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【ウィークン】敵1体のモラールを10低下させる。
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(デバフ系……?)
専門用語のせいで詳しい意味が掴み切れないが、なんとなく文面からそう想像するジン。
「ちょっと気になっていたんだが、この『モラール』てのは何なんだ?」
解説文を睨みながらそう訊くジンに、リリマナは教える。
「操縦者の内的な精神パワーだね。ケイオス・ウォリアーの戦闘力は一体化した操縦者の影響をダイレクトに受けるから、それを数値化して表示してあるんだ。出力も装甲の強度もモラールによって増減するし、強い武器や一部のスキルはモラールが上がらないと使えないよ」
リリマナの言う通り、この世界のロボットはそういう物であり、だからこそ精神的なパワーがステータス画面にも表示されて確認できるようになっている。
それを聞いて、ジンは少し考え込む。
「……もしかして『気力』とか『戦意』とでもいえばだいたい合ってるか?」
「おお! 確かに近いかな! さっすがジン、理解早いじゃン!」
感心するリリマナ。ジンの顔がちょっとしかめ面になった。
「……もしかしてこれの表示、普段100から始まって戦闘行為で増減して50~150の間で勘定されるか?」
だがそこでリリマナが「フフッ」と笑う。
「う~ん、残念! 一部のスキルやアイテムで151以上にも上がるようになるんだ、これがね」
「ああ、だろうな!」
ジンの顔がますますしかめ面になった。
(そんな所まで同じか、この世界)
彼がずっとプレイしていたゲームにも同じようなシステムがあったのだ。
それを基に考えると、ジンのスピリットコマンドは敵の攻撃力・防御力を共に減少させるに等しい有益な技ではあるのだが……ジンが遊んでいたゲームでは、基本、これを習得する者はギャグメーカーやコメディリリーフだった。
(やっぱり俺は主役になるべく召喚されたわけじゃねぇのな……)
ちょっと納得できないジンは、ダインスケンのステータスも映してみる。
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ダインスケン レベル7
格闘164 射撃151 技量186 防御133 回避105 命中101 SP74
ケイオス3 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド 【ヒット】【フレア】
【フレア】一度だけ敵の攻撃を確実に回避する。
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「相変わらずお前が一番強いな……」
ちょっと僻んで横目でダインスケンを睨むジン。
「ゲッゲー」
ダインスケンはそう鳴くだけだ。
(しかし、なぁ……こいつ、高運動性機に乗って回避主体で戦ってるのに、コマンドはスーパーっぽいというか……)
ジンの遊んでいたゲームだと、1ターンの間命中回避を30%ほど上げるようなコマンドがあったのだが……この世界には無いのだろうか?
(有利なセオリーだけ外して来るようなクソ対策的展開なら、ご勘弁願いたいもんだが……)
そう考えつつ、次にナイナイのステータスも確認もした。
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ナイナイ レベル8
格闘157 射撃164 技量186 防御133 回避106 命中109 SP76
ケイオス3 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド 【フォーチュン】【トラスト】
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「あれ? ボクはレベル8?」
鏡を覗き込んだナイナイが首を傾げた。
「MAP兵器で一番敵を倒しているからだろ。お前もなんか新コマンドを習得してるな」
ジンはそれにカーソルを合わせる。
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【トラスト】味方1体のHPを2000回復。
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「やった! これでみんながもっと安全になるよ」
嬉しそうに微笑むナイナイ。
だがジンは強い口調で言う。
「ダメだ。回復は修理装置でやるんだ。SPは全部【フォーチュン】に回して獲得資金を増やしてくれ」
「ええ……」
目を丸くするナイナイ。
だがジンの知識では、とにかく資金を稼いで機体の強化改造を施すべきなのだ。それはこの世界でも同じだろうという確信があった。なぜかあった。とにかくあった。
「私もレベルは上がってるし、新しいコマンドも覚えたよォ!」
「ああ、そっちに回復系があれば助かるな」
リリマナが主張するので、ジンはそれも映してみる。
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リリマナ レベル7
SP51
スピリットコマンド 【サーチ】【ガッツ】【ウィークン】
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「この新技! 俺と被ってるじゃねぇか!」
「そんな事言われても仕方ないもン!」
歯軋りするジンに不貞腐れるリリマナ。
(敵の足引っ張る技ばっか増えてもな。イケメンの勇者様パーティにでも会った日にゃ、仲間になる前に軽蔑・追放のコンボじゃねぇか?)
頭を掻きながら、ジンは最後にヴァルキュリナのステータスも鏡に映した。操艦する彼女の能力も知りたかったからだ。
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ヴァルキュリナ レベル7
格闘159 射撃153 技量187 防御127 回避72 命中101 SP74
ケイオス2 指揮官2 援護防御2
スピリットコマンド 【プロテクション】
※指揮官2LV:周囲の味方の命中率・回避率を上昇させる。
【プロテクション】短時間の間、被ダメージを75%軽減する。
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「ほほう、神官戦士様は防御系か。流石にそれらしいな……ん?」
ジンはケイオスレベルが2である事に目を留めた。
「ここが2レベル以上になる者は、この世界にはほとんどいないんじゃなかったのか?」
「全くというわけではないのでな」
ヴァルキュリナはそう言うだけだ。ジンは少し違和感を覚えた。
(そりゃそうなのかもしれねぇが。希少スキル持ちなのにアピールはしないのな)
だがただ謙虚なナイトだというだけかもしれない。そう思ってとりあえず黙っておく事にした。
GUレートマジンガーを見てるとしょっちゅう海に潜って水中戦やっている。
研究所の周囲が一面海で毎週敵が襲撃してくるから、攻撃食らって落ちるとまず水没。だから仕方ないのはわかる。
だがMAジンガーZの時は敵に対応したアップデートをよくやっていたのに、グレートは最後まで水中戦強化の装備を開発しない。
映画で共演したGEッター3のパーツをわけてもらって、クソデカイ棘と刃物を収納しておける便利な両足にキャタピラも突っ込んでおけば良かったのにな。
まぁ水中用形態がなぜキャタピラなのか、ワシにはよくわからんが。




