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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
146/353

40 旧敵 2

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。

ドリルライガー:ドリル戦車に宿ったエネルギー生命体。

オウキ:元魔王軍空戦大隊の親衛隊。核戦争で荒廃した世界から来た拳法家。好きなスポーツは中国殺人拳が起源のゴルフ。

 ニスナリ山の斜面・標高500mあたりに、山肌へ張り付くような町がある。

 Cオーウォーを郊外ドックに入れ、レイシェル達は町へ降りた。


「エルフの、街‥‥?」

 呆気にとられて呟くレイシェル。


 確かに山肌の林の中にある。

 建物は主に木製である。

 そこを歩くのはエルフ達‥‥耳が尖っているのでそれとわかる。


 だがその服装は、モヒカン、ホッケー用フェイスマスク、革ジャン、トゲ肩当て、装飾の鎖。

 顔へのペイントや腕の刺青(タトゥー)、男女ともに胸の谷間を露出した着こなし。

 なぜか住民は微妙にロックなファッションの物が多かった。


「ヒャッハー! 今日はオーク狩りだー!」

 数人のモヒカンエルフが馬を走らせ、楽しそうな声をあげて蛮刀を振り回しながら駆け抜けて行った。

 

(私の知ってるエルフとえらく違いますわね‥‥)

 知的で華奢で優雅な種族だと思っていたレイシェルには想像できなかった光景だ。


 とりあえず資材を売りにいく一行。

 クズ屋の店主はフルフェイスメット装備で、従業員は半数がモヒカンだったが、仕事はちゃんとやってくれた。


 渡した資材の代金を受け取るノブに、レイシェルは訊ねる。

「改造と整備はもうすませましたの?」

「ああ。時間さえあれば僕自身がやれるからな。僕は工員としても最強の霊能者(サイオニック)だ」

 自信を持って言うノブ。


(まぁ他の霊能者(サイオニック)はあまり機械整備をやらなさそうですけど‥‥)

 レイシェルが内心そう思っていると、ジルコニアが宙で笑った。

「クヒヒ‥‥それに整備だの調整だのやると敵に襲撃されるフラグが立つしな」


「それは困るな。Cオーウォーの方は整備してもらいたい所だが」

 横から口を挟むのはオウキだ。

 長らく放置され、久々に動かしたら無理な戦闘をやらされたクラゲ艦の痛みは相当な物である。このままでは移動に使っているだけでもやがて稼働しなくなる事は、他のメンバーにも既に伝えられていた。


「ああ、そうしよう。流石に僕一人で移動中の艦を修理するのは至難の業だ」

 同意するノブ。



――ドックへ修理に来てくれる業者はすぐに見つかった。だが――



「こりゃ珍しい艦だ。着地できないんじゃ、浮遊させたままの作業ですぜ。まぁやれん事はありませんが‥‥」

 幌馬車に荷物を積んだ修理工達は、郊外ドックまで来てくれた。

 だがドック内で係留され、ふわふわ浮きっぱなしのクラゲ艦を見ると皆が顔をしかめる。

 滅多にやらない作業なのでやや自信無し、という所だ。


「頼む」

 ノブが言うと、エルフ達は渋々作業にとりかかろうとした。


 作業は始まった。だがすぐ――


「おい、大変だ! 艦の格納庫に白銀級機(シルバークラス)があるぞ! あれ、お貴族のだ!」

 クラゲ艦から降りてきて大声で叫ぶ女がいた。

 その外見に怪訝な顔をするレイシェル。 

(エルフ‥‥なのかしら?)


 確かに耳は尖っている。

 だがその女は肉付きがよく、作業着の下で胸も臀部も盛り上がり、褐色肌でがっしりした力強い体格だ。

 しかも頭の赤毛から――小さくはあるが、はっきりと角が覗いていた。


 女はのしのしとレイシェルに迫る。

「お貴族! あんたか! あたしらはあんたらのゴタゴタなんか知らないぞ! お抱えの所に行けばいいんだ!」

「え? 何を怒っていますの?」

 その剣幕に戸惑うレイシェル。


 別のエルフが降りてきて、間に割って入った。

「いや、ね。格の高い貴族様の機体となれば、昔から付き合ってるどこそこの職人一派でないと駄目とか、下手に他のがいじると責任がどうとか‥‥面倒な事言われるじゃねぇですか」

「そうでしたの‥‥」

 レイシェルにとっては初耳だ。

 しかしエルフは困った顔でモヒカン頭を掻く。

「ええ。そういう話になると、誰が悪いって、最後には立場の弱い下っ端連中や派閥外の職人になっちまいがちでね」

 それを聞いてオウキが「フッ」と笑った。

「そもそもここはフォンバシのはみ出し者が作った町だろう。そういういざこざに巻き込まれて出て来た奴らとかな」

「まぁね。俺らエルフも魔法道具作成に長けた種族として昔から知られてるんで。大きな街のギルドは完全に階級社会が出来上がっちまってまさ」

 エルフは溜息をついた。


「偉い貴族の得意先をつかまえた派閥は自分らも偉い奴気取りだ。別の派閥とはマウント取り合うし、無所属は使い捨て扱いだし。ましてやあたしみたいのは‥‥」

 大女は悔しそうに言う。

 レイシェルは彼女の角を見ながら訊いた。

「貴女、エルフじゃありませんね?」


 側のエルフの答えは意外なものだった。

「エリカはオーガとエルフのハーフなんでさ」


「ええ!? どうやったらそんな事になりますの?」

 仰天するレイシェル。

「なんか魔王軍の実験で生まれたそうですぜ‥‥」

 側のエルフは、言い難そうに、だがそう言った。



――話は十数年前に遡る――



 魔王軍と無関係な魔物も当然いる。当時、フォンバシの街の近くに居を構えた魔物の野盗団もそうだった。

 物も人も何度も奪われ、街には大きな被害が出た。

 街は冒険者を雇い、彼らと街の兵達が協力して野盗団を倒したのだが――


 野盗団にいた魔術師の研究室で、攫われた者の何人かが変わり果てた姿となっていた。

 魔物と合成され、異形の怪物にされ、溶液で満たされた培養槽の中に浮いていたのである。

 だが無茶な研究であり、半数は既に息絶えていた。生きていた物も溶液から出すと絶命した。


 そのたった一人の例外が、どこも変わっていないかに見えた赤子だったのである。


 まだ改造されてなかったのか――そう納得して、たった一人、赤子だけは街へ帰る事ができた。

 親類も見つかり、そのエルフ夫婦に預けられ、赤子に関しては解決した。

 そう思われた。


 すぐに角が生え、背もどんどん伸び、何かおかしいと感じた夫婦は魔術師の学院に行って「娘」を調べてもらった。

 結果、オーガとのハーフであると――後天的にそう改造されたのだと――結論づけられた。魔術師達自身も、その結果には大いに戸惑い、信じられないようだったが。調査の結果はそうとしか出なかったのである。


 その娘がこの大女・エリカなのだ。

設定解説


・異種族間の子


この世界インタセクシルでは、人間を含めたヒューマノイド型の生物同士なら、かなり広範囲に交配が可能。

しかし子を産ませるだけなら可能なのだが、種族としては両親のどちらかに合わせて産まれる。

例として人間とエルフが子を成しても、人間かエルフが産まれるのだ。もちろん両親には顔立ちも似るし、この例なら人間として生まれても魔法適正が高かったりと、遺伝の影響は受ける。

しかし「ハーフエルフ」という別種が産まれたりはしないのである。

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