14 戦火 6
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は己に備わった能力と心強い仲間の協力で、世界を席巻する魔王軍に敢然と立ち向かう。
だが旅を始めて最初に訪れた街にも、魔王軍の手は伸びていた。
それを知恵と勇気で退けたジン。彼は被害を受けた街にも手を差し伸べる――。
救助活動の手伝いを申し出ると、ハチマの領主は快諾した。
よってジン達は消火活動や崩落に巻き込まれた人の捜索・救助を行う事になった、わけだが――
「おう、そっちに引っ張れ」
ジンが機内から指示すると、折れた柱に結んだロープをオーガーとオークが必死に引っ張る。崩れた家屋に隙間ができた。
「オラ! さっさと行ってこい!」
街の兵士にどやされ、ゴブリンが必死に隙間へ潜り込む。
待つ事数分、目を回した爺さんを背負い、潰れた屋根の下からゴブリンが這い出した。
ゴブリンもオークもオーガーも、全て元魔王軍兵士だ。それを今はジンが監督し、救助活動を手伝わせている。
どうしてこうなったのか。
話は数時間前に遡る――
領主に了解を貰うと言っても、通信を送って即承諾、というわけでもない。何せ他国の軍なのだ。返事に多少の時間はかかる。
その間に母艦Cパンゴリンからは回収部隊が出ていた。撃破した敵機から使える資材を集める部隊である。この世界では撃破した敵機から戦利品を獲るのが常識なのだ。
その作業で、敵の捕虜を捕える事も少なくない。
ケイオス・ウォリアーにも脱出装置はついている。操縦席ごと外に打ち出し、短時間だけ【落下軽減】の魔法の効果を発揮させ、着地できた後は操縦者が勝手にしろ……という至極雑な物だが。
そんな装置でも生き残る者は多い。だが脱出後までフォローする物ではないので、捕らえられて捕虜となる者も多い。
この日の戦闘でも、Cパンゴリンからの回収部隊は何匹かの魔王軍兵を捕えた。
普通ならその場で斬首するのだが――
「こういう場合は襲われた街に引き渡すのが習わしだ」
ヴァルキュリナがそう言うので、怯え慄く捕虜達をジンが街に連れて行ったのだ。
もちろん、街の住人達は憎悪に満ち溢れていた。引取担当の兵士達の後ろで遠巻きに見ながら、魔王軍兵士の魔物どもに遠慮なく罵声を飛ばしていた。
「中央広場で鋸挽きにしろ!」
「今すぐここで火炙りにしちまえ!」
いくつもの家屋が潰され、少なからぬ犠牲者が出ているのだ。怒りは当然のもの。
魔王軍兵士達も助からない事を悟り、ある者は震えが止まらず、ある者はべそをかいていた。
「聖勇士殿はどう処理すべきと考えますか? やはり一通りの救助活動の後、磔で串刺しか、市中引き回しあたりでしょうか? 何なら貴方の手で斬首刑にでも……」
兵士の一人がそう訊いてきたのは、特に深い意味はなかっただろう。
「血生臭いのは好きじゃないからよ。それより救助活動だろ。俺はそうさせてもらうぜ」
ジンの方も適当な気持ちでそう言っただけだ。
処刑を見て楽しみたいとは思わなかった。むしろ敵とはいえ生き物を殺す事に嫌悪感はある。
郊外市場で魔物の兵士と戦った時も、必死であり、死と危険への恐怖もあったので、四の五の言っていられなかっただけだ。
ケイオス・ウォリアーでの戦いは生身の相手が直接見えないので、精神的に助かってさえいる。
それに、この街に長居する気もない。
何よりまだ崩落した建物の中で救けを待っている人がいるのだ。
しかしこの世界ではあまり例の無い返答だったらしい。
兵士は驚きに目を丸くした。
「なんと! 魔物の命を救われると? その上、人助けに使えと!?」
(言ってねぇよ、そんな事は)
予想外の対応に、ジンは否定を口にするのが遅れた。
その間に市民達も目を丸くした。
「人間同士でも雑兵など始末されても不思議ではないのに、まさか魔物の兵を助けようとは!」
「ただ見逃すのではなく、償いとして働かせろというのも、理がある気がするな……」
「正直、不満が無いでもないが……敵と戦った聖勇士様自身がそう言われるのでは仕方が無いか」
(おいおい……これまさか「さす転移者! さす転移者!」な流れか?)
妙な展開に顔をしかめるジン。その肩を後ろからぽんぽんと、ナイナイが叩いた。
「さすがジン! いい所あるね」
「言うのお前かよ」
ジンは大きな溜息をつく。ダインスケンが「ゲッゲー」と鳴いた。
こうしてジンは魔王軍の雑兵を使い、救助活動にあたっているのだった。
4000字超えたら読み難くなるとかいう情報を見て
適当な所で区切りながらアップしてるけど
話数がやたら多くなりそうだな。
誰かのロジック信じない直感は信じていたい所だが
それで正解踏んだ試しがないのも確かだ。
ワシが超獣機神に乗ったら
合体どころかアグレッシブモードも無理そうだわい。
戦車のままやってやるぜ(攻略本にザコMSの方がマシとディスられる)。