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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第2次 烈風復活編
130/353

24 勇者 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


レイシェル:クイン公爵家の令嬢にして魔法戦士。

ノブ:地上最強の霊能者。

ジルコニア:ノブに同乗する妖精。好きな魔境伝説はAクロバンチ。

 グスタを退けた町から出て、数日。

 ノブとレイシェルは荒野の街道を進む。

 無論、野外でキャンプを張る日も多い。


 その日の夜、魔法で作った照明の前で、ノブは透き通った壺を眺める。

「ふむ。COCPもそれなりに貯まってきたか」


 壺の中では様々な光彩の混じった気流が、いくつも、無秩序に対流している。これはケイオス・ウォリアーを撃破した後、残骸から集めた異界流(ケイオス)の残滓だ。


 訊ねるレイシェル。

「技術者に渡せば、アイテムやスキル習得本を作成してもらえますわね。次の町で探してみます?」


 COCPと呼ばれる異界流(ケイオス)の残滓を使い、様々な魔法の品を造る。それはこの世界のケイオス・ウォリアー整備技師が身に着けている技術の一つなのだ。


 だが――ノブは首を横にふった。

「その必要は無い。僕が造ればいい事だからな」


 それを聞いて目を丸くするレイシェル。

「アイテム作成のスキルも持ってますの!?」

 その側をふらふら飛びながらジルコニアが笑った。

「前に言ってたじゃん。ノブは旅に必要な技術はだいたい身につけてあるってな。掃除も洗濯もレイシェルより上手いだろ」

 ここまでの旅でわかっていた事実。ぐっ、とレイシェルは言葉に詰まる。


 そんな事は気にせず、ノブは当然だと言わんばかりに頷いた。

「本来、マジックアイテムを造る技――工芸学や魔化は、魔術師系職の分野だ。僕の師トカマァクはこの世界で最も偉大な賢者なのだから、その種の技能もこの世で一、二を争う。その師に僕は直接指導していただいた」


 それを聞いて一転、レイシェルは真面目な顔になる。

「‥‥ちょっと考えたんですけど、EN回復アイテムを造ればどう? スピリットコマンドに頼らなくてもEN切れを避ける事ができますわよね?」


 ノブは「ほう」と感心した。

「そしてその分、戦闘にSPを使う事ができるというわけだな。なかなかクレバーな案だ」

 褒められたのだが、それにも関わらずレイシェルは顔をしかめる。

「あのね‥‥これまでに全く考えなかったんですの!?」


 平然と頷くノブ。

「全くでは無いが、まぁやろうとは思わなかったな」


「なんでですの!」

 いきり立つレイシェル。

 しかしノブは動じず、そして言う。

「君を仲間にする事が決まっていたからだ。僕の都合だけで限りあるリソースを使って、後で足りなくなっては困る」


 ぐっ、と再びレイシェルは言葉に詰まった。


 そんな彼女を真っすぐに見るノブ。

「この旅において、僕にとって大切なのは何より君だ」


 言葉に詰まったまま、レイシェルの顔が紅潮していく。


 まぁそんな事は気にせず、ノブはやっぱり平然と訊くのだが。

「そこで君の機体の防御性能か、君のための防御系スキルか。そこらを強化する物を作成しようと思う。僕の機体の燃費は僕の能力で補えるから、今すぐ必要な物ではない」

 ぷい、とレイシェルは横を向いた。

「わ、私こそ今不足している能力はありませんわ。あのムーンシャドゥの弱点を補ってくれた方がありがたいんですの」

 ふむふむ、とノブは少し考えた。

「なるほど。そうしよう。僕の方を強化する案する事で、より君を守る事ができるからな」


 レイシェルは耳の方まで紅くなっているが、まぁ別にノブは気にしていない。

 多分気づいていもいない。


 ただジルコニアは宙でへらへら笑っているが。

「ハートに必中クリティカル、てか」

「そんなチョロくありませんわ! もう寝ます! 失礼!」

 横を向いたままそう怒鳴り、横を向いたまま立ち上がって、横を向いたままレイシェルは運搬用ゾウムシの荷台へ去っていく。

 そこの片隅を寝床として使っているのだ。


 ノブはそれを黙って見送り、何を造るものかしばし考え‥‥ほどなく照明を消し、自分も寝床へ向かった。



――その夜‥‥レイシェルはまた「前世」を夢に見た――


 

 いつものように、とりとめのない異世界の光景。

 何人もの「王子様」が、モニターの向こうにいる。

 星の海の中、戦火の中、彼らは互いに引かれあい、惹かれあう。

 時に王子同士、熱い視線を交わし、互いに触れ合い、そして生まれたままの姿で絡み――


 そこで目を覚ました。全身をよくわからない汗がびっしょりと濡らしている。

(ななななな‥‥なんですの、アレは!? なんか最近おかしい方向に行きかけてますわね?)

 寝袋の中で明け方を告げる鳥の声を聞きながら、レイシェルは奇妙な違和感を覚えていた。


 もう一度寝たが、今度は夢も見なかった。



――翌日、立ち寄った森の傍の村――



 街道沿いの村で、ノブとレイシェルは食料を買い足すために雑貨屋へ立ち寄る。

 だがそこで老いた店主から聞いた話は、二人を驚かせた。


「勇者がその森へ?」

 レイシェルが訊くと、店主は頷く。

「はい。薬草を採集しに行った村の者が、帰るのが遅くて‥‥それを話すと迎えに行って下さったのです。勇者ライガー様が‥‥」


 勇者ライガー。

 魔王軍と戦う冒険者の一人。

 その名はレイシェルも耳にした事があった。

設定解説


・勇者


この世界・インタセクシルにおいて異世界からの転移者は「聖勇士」と呼ばれるが、それとは全く別に、英雄的な行為・成果を出した冒険者が「勇者」と呼んで称えられる事もある。

聖勇士は「異世界から転移してきて、ケイオスというパワーを持っている者」という定義があるが、勇者の方にはそんな決まりはない。何かの血統であれとか神殿でクラスチェンジしてこいとかいうルールも無い。人々がありがたい者を持ち上げてそう呼ぶだけだ。よってこの世界で生まれた「地元人」にも「勇者」は何人もいる。一方でありがたい聖勇士が勇者と呼ばれる事も多々ある。

この世界の「勇者」にはちゃんとした定義が無いのだから割といい加減なものだ。

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