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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
12/353

12 戦火 4

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は己に備わった能力と心強い仲間の協力で、世界を席巻する魔王軍に敢然と立ち向かう。

だが旅を始めて最初に訪れた街にも、魔王軍の手は伸びていた――。

 ジン達三人は母艦へ走った。ダインスケンだけは馬もかくやという速さだが、後の二人はそこまでの速度は出せない。ジンは並の男より遥かに速いが、ナイナイはハァハァと息切れしながらすぐに後方へ置き去りにされる。

(クソッ、間に合うのか!?)

 焦るジン。

 しかし前方から、地響きをたてて母艦が歩いてきた。巨大なセンザンコウは、三人が近づくと脇腹のハッチを開けて迎え入れる。


「ヘヘッ、私が艦を呼んできたんだよ!」

 駆け込んできた三人へ誇らしげに胸をはるリリマナ。

「ナイスだ、サンキュー」

 足を止めずにそう言い、ジンはBカノンピルバグの操縦席へよじ登る。

「ちょっと、忙しいなァ!」

 文句を言いながら飛んで来るリリマナ。構わずジンはハッチを閉めて火を入れた。モニターにヴァルキュリナが映る。

『戻ったのか、ジン。しかしいきなり出撃しようとは……』

「雇主のあんたに許可を貰うのがスジか。なら許可をくれ。すぐに出たい」

 状況はリリマナが伝えている筈だとふんで、ジンは早口で告げた。

 ヴァルキュリナは頷く。

『もちろん許可は出す。この艦も街の側へ行くから敵を近づけないよう頼むぞ』

「艦も戦うのか」

 少し驚くジン。ヴァルキュリナの任務は本国に調査結果を報告する事なので、最悪、街の救助を禁止される事もありえるかと考えていたのだが。

(やはり神に仕える戦士。基本、正義の味方か)

 軽く感激したジンだが、ヴァルキュリナは淡々と告げる。

『輸送隊がまだ戻っていないから、それを迎えに行く。隊を収容するまで加勢はできないが、収容後は共に戦う』

 あくまで自部隊のためであった。


(ま、そんなもんかな)

 だがその後は協力すると明言してくれているのだ。それ以上を望むほどジンとて我儘ではない。

 シートベルトを締め、操縦席のハンドルを握る。

「了解。こちらジン、出るぞ!」


 艦脇腹の格納庫から、ジン・ダインスケン・ナイナイの順番に出撃する。そのまま街へ走る三機。すぐに街全体が戦闘MAPに映る距離まで近づいた。

『ジン! さっきの人達が!』

 ナイナイが悲鳴じみた声をあげる。

 先ほど市場のあった場所で、一機のケイオス・ウォリアーが魔王軍の機体に集中砲火を浴びていたのだ。それがあの新米冒険者達の機体である事は一目でわかった。

(戦うなと言ったのに!)

 歯がみするジン。しかし……そうしなければ市民を逃がす事ができなかったのだろう、という事もまた推測できた。


 そしてジン達が駆け寄る前で、新米冒険者のケイオス・ウォリアーは肩から火を吹き、倒れ、動かなくなった。


 ジンが吠える。

「大勢で調子乗りやがって! こっちも数いれば、どうだぁ!?」

 敵機が射程に入り次第、ジンは砲撃を浴びせた。そのすぐ側、援護しながら戦える位置にダインスケン機とナイナイ機が位置どる。

 近づく相手に肩の長射程砲を浴びせるジン。

 潜り込んだ敵を爪で斬り裂くダインスケン。

 ナイナイは彼らの攻撃に続けて援護攻撃を撃ちこみつつ、2機が受けたダメージの修理に回る。

 ジン達三機は昨日の戦いで互いの役割を既に掴んでいた。


 無論、無傷とはいかないが――

 それでも、数任せに突っ込んでくる魔王軍の雑兵機を打ち破るのは難しくは無かった。

 最後の敵がダインスケン機の爪で叩き斬られ、地面に転がる。それを含めた敵機の残骸を見下ろすジン達の機体は、どれもいくらかの損傷はしていたものの、大きなダメージは無かった。

 仲間からの攻撃に合わせて攻撃し、仲間への攻撃は割り込んで守る。確実な連携は数で勝る敵を優勢のまま撃破したのだ。


(それに……先にダメージを与えてくれた奴がいたからな)

 まだ煙をあげる新米冒険者機を横目に、ジンはそう思った。

 思いたかった、というべきか。


 だが感傷に浸る暇など無かった。

 ナイナイ機から通信が飛んでくる。

『ジン! 敵の増援が! 街からだ!』

「なんだと!?」

 敵が街から!?

 しかし戦闘マップに表示された、新たな敵の位置は……本当に街の中だ!

 機体の視界で確認すると、街の壁に破れた箇所があり、その向こうには火と煙が立ち込めている。

 そしてその破れ目から、魔王軍の巨人兵士――量産型ケイオス・ウォリアーが顔を覗かせる!


『もう入り込んでた奴がいるんだ……街の防衛隊はやられちゃったのかな……』

 ナイナイの心細そうな声。

(クソッ! この状況じゃ、今回は敵が有利な地形を使う形か。しかも……街はまだ死んだわけじゃねぇ)

 そう、ジン達が戻ってくるのにかかった時間から考えて、街が全滅している筈は無いだろう。だがこのまま街の中へ弾を撃てば、確実に街へ新たな被害が出る。

 そして壁や建物を盾にできる以上、単純に敵が有利だ。


 打開策を求め、ジンは必死で頭を働かせる。

 とりあえず己のスピリットコマンド【スカウト】で敵のデータを探った。モニターに敵のステータスが出る。

 敵が迫る重圧(プレッシャー)の中、必死に目を凝らして目当ての項目を探した。

(機体は? 武器は?)

 それが望み通りの物である事を祈りながら。


 そして敵のデータを確認し、その直後、ジンは叫んだ。

「ヴァルキュリナ! 輸送隊は収容したか?」

『ああ、そっちはもう済んだ』

 返事は朗報だった。

(流れは……傾いてきたか)

 ジンは戦艦のステータスを映し出す。



ヴァルキュリナ レベル4

Cパンゴリン

HP:12000/12000 EN:200/200 装甲:1300 運動:70 照準:145

射 キャノン砲 攻撃3000 射程2-6

格 格闘    攻撃3200 射程P1―2



(よし! この射程なら!)

「今から指示する場所へ移動してくれ!」

 再び叫ぶジン。自分が来て欲しい場所を戦闘マップの座標で告げる。それを聞いて驚くヴァルキュリナ。

『こんな所に!?』

「頼む!」

 細かい事を長々話す時間が惜しい。不躾は承知でせがむジン。

『む……わかった』

 思いは伝わったのか、やや不満げではあるが、ヴァルキュリナは承諾してくれた。


 母艦と通信している間、当然、敵も止まってくれるわけではない。

『ジン! 街中の敵が全部壁の向こうに集まったみたいだよぅ……』

 ナイナイが弱気な声を出した途端、ジン達の側に街からの砲撃が着弾した!

「よし、ここは退くぞ」

 ジンは機体の身振りで行き先を指示する。

『逃げるの!?』

 驚くナイナイ。

「いや、戦闘MAPからは出るな。移動先は……」

 ジンは再び戦闘マップの座標を告げた。

MAジンガーZを見ていると、研究所を攻めに行くはずなのに街の中を通ってブチ壊している事に驚きを禁じ得ない。

ヘル氏の組織には建造物を破壊しなければならん決まりでもあるのか。

「研究所の攻略には失敗したが、東京には大打撃を与えたから大目にみてやろう」なんて回もあったので、やはり月あたり何兆円相当の被害を日本に与えろとかいうノルマでも決められているのだろう。

全く、会社で働くというのはいつの世も楽ではないわい。

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