4 邂逅 4
一度にあまり長文を投稿しても読み辛い(特にスマホ)という事なので、この作品は一話1500~2500字を心がけていこうと思います。
話数が嵩みそうで少々心配ですな。
蹴撃一閃で敵を葬ったノブのEムーンシャドゥ。
目の当たりにしたレイシェルは驚きつつも冷静に判断する。
(凄いカラテですわ! でもあれは魔法ではありませんわね‥‥)
魔王軍も黙っていはいない。
味方が一撃で倒されて一瞬怯みはしたものの、犬頭の量産型機・Bダガーハウンドが動いた。狼男のごとき姿のその機体は、二機で同時に攻撃をしかけてきた。ムーンシャドゥの左右から、挟み撃ちの形で。
片方を打てばもう片方へ背を晒す。明らかな危機!
だが、ムーンシャドゥの動きは速かった。
今度はシャドゥの肘から虫の鉤爪を思わせる突起が伸びる。
そして動いた。右側へと、跳ぶように。
そのまま突き刺すような肘鉄がダガーハウンドの胸板に炸裂! 突起が容易くその装甲を貫く。
衝撃で体をくの字に曲げ、ダガーハウンドは吹き飛び、大地に転がった。
爆発! 撃破!
(一瞬で的確な反撃! でもあれも魔法ではありませんわね‥‥)
冷静に判断するレイシェル。
もう片方のダガーハウンドは文字通り牙を剥いて襲いかかる。その噛みつきは他の機体の剣や槍にひけをとらない威力があるのだ。
だがムーンシャドゥの敏捷性は、半獣人型の敵機を完全に超えていた。
旋風のように体を回しながら、敵の攻撃圏から外れつつ相手を己の正面に捉える。攻撃を外したハウンドは、逆に側面を露にしていた。
再び肘打ちが見舞われる。無慈悲に、人造の犬頭へ!
一瞬でサイドを取り、回避とそれに続く攻撃を、ムーンシャドゥは完璧にこなした。
ハウンドの首が折れる。
爆発! 撃破!
(かなりの運動性の高さ! でもやっぱり魔法ではありませんわね‥‥)
冷静に判断するレイシェル。
二機まとめて簡単に倒されたのを見て、残りの数機は束となって襲い掛かった。剣、牙、矢、砲弾の雨霰がムーンシャドゥを狙う!
逃げ場の無い猛攻‥‥それを全て避けるのは不可能だ。いかな回避力があろうと、短時間に連続で撃たれ続けては逃げ場が無くなる。そしてレイシェルのように予測命中率一桁%の攻撃を食らうのだ(しかもクリティカル)。理不尽。
そしてついに鋭い矢がムーンシャドゥに刺さった!
いや‥‥刺さりはしなかった。
その一撃は装甲を貫く事ができず、穂先が欠けて地に落ちたのだ!
(装甲まで堅固ですの? なんという完成度。でもまぁ魔法ではありませんわね‥‥)
冷静に判断するレイシェル。
弾幕を撃ち込んでくる敵の群れ。それを前にムーンシャドゥが動く。
片手を前に突き出した。その掌‥‥いや手首から先全体が輝く。
その輝きは敵へと発射され、太い光線となり、弩を撃っていたソードアーミーをつらぬいた。
爆発! 撃破!
「あれが増幅された魔術ですわね? 聞いていたより破壊的ですけど‥‥」
冷静に観察し、呟くレイシェル。
『いや、違う。このサイコビームはムーンシャドゥの内蔵武器だ』
冷静な否定の答えがシャドゥから送られてきた。
「え? あ、そうですの‥‥」
違った事を冷静に受け入れるレイシェル。やはり魔法ではなかった。
一体化して動かす物とはいえ、ケイオス・ウォリアーには弾丸や光線砲を搭載した機体も少なくない。
そういう内蔵武器を使うとして、操縦者に求められるのは射撃能力であって魔力では無いのだ。
容赦なく光線を撃ち続けるムーンシャドゥ。魔王軍は次々とそれに貫かれていく。
爆発! 撃破! また撃破!
最後の敵機まで光線に腹部を貫かれて倒れた。
最後の爆発! 全て撃破!
『言っておいたろう。僕は最強の霊能者だとな』
マントを翻すシャドゥからノブが言い放った。
(どこに超能力要素があったのかしら‥‥?)
冷静に考えてもレイシェルにはわからなかった。
設定解説
・Bダガーハウンド
鎧を着た犬頭の獣人、といった外観の青銅級機。
機体性能は控えめだが生産し易くなるよう設計されており、短期間で数を揃える事ができる。
走行速度も速く、前傾姿勢で走った時の速度は飛行しない量産機としては最速級。
反面、軽量化のため装甲は薄く、武装も少ない。手持ち武器が無いので接近戦では敵に噛みついて攻撃する。
飛び道具は腰部にマウントした手投げ短剣。
基礎ステータス(強化改造や装備するアイテムにより、この数値は変化する)
HP:4000 EN:170/170 装甲:1200 運動:95 照準:145
射 ダガーショット 攻撃2500 射程1―4
格 ワイルドバイト 攻撃2600 射程P1