101 金星 7
異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。
彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。
裏切り者に奪われた最強機体の設計図を取り返すべく、ジン達はその後を追う。
裏切り者を討ち取ったジン達を待ち受けていたのは、魔王軍四天王が乗る黄金級機とそれが率いる軍団。
ジン達に最大の危機が迫る――!
走りながら、カブトは重力球の渦から身を守った。装甲は傷つき、きしみ、あちこちから破片が舞い上がる。もはやこの機体に無傷のパーツなど無いかもしれない。
そしてカブトを捉える超重力! アルタルフのスキル【アタッカー】の効果で、その威力はさらに上がっている。
漆黒の渦が全てを砕こうと荒れ狂った――!
しかし、それでも。
黒い重力の渦からカブトは走り出た。
装甲片をまき散らしながら、それでも。
「ジン! HPが四割をきったよォ!」
モニターを見て悲鳴をあげるリリマナ。初陣からこれまでほぼ不死身を誇った堅牢な機体が、ここまで損傷するとは。
だがジンは叫ぶ。
「最強の敵からこれだけ食らいまくってまだ三割以上残ったか! この耐久度、惚れ惚れするな!」
それを聞いて怒鳴るアルタルフ。
『死ぬまで、しておけぇ!』
キャンサーの節足がさらなる黒球を生み出す!
それが発射される、その寸前――
「するのは俺だが、死ぬのはどっちだろうな?」
ジンが言うや、カブトは足を止めた。
途端にアルタルフの全身を襲う倦怠感!
ジンとリリマナの放つスピリットコマンド【ウィークン】である。
『小細工を!』
吐き捨てるアルタルフ。
だが彼は見た。カブトの全身が……十四基の発雷結晶が発光するのを。
「マシキマム、サイクロン!」
リリマナの声とともに雷光の滝が花開いた。
黒球を放とうとしていたアビスキャンサーを幾条もの電撃が貫く!
『ぬ、お、おぅ!?』
衝撃に怯むアルタルフ。
その耳にナイナイの声が届いた。
『デストロイウェーブ! いくよ!』
体勢を整える暇もなく高周波振動の結界が黄金級機を包み、衝撃で揺さぶった。
広範囲を一気に蹂躙するMAP兵器に対して「撃ちあう」事は難しい。
よってジン達は「反撃を受けない武器」として、単体の敵相手にMAP兵器を用いたのである。
(分散したのは……味方同士で攻撃に巻き込まないためか!)
亀裂の入る機体の中でアルタルフはそれに気づいた。
H&Aのスキルを用い、MAP兵器を撃った直後に駆け寄ってくるジン機とナイナイ機を見ながら。
そしてダインスケン機が宙を跳び、腕の刃を振り下ろすのを。
黄金の装甲が深々と切り裂かれた! 飛び散る火花と舞う破片。
『お、のれぇ!』
怒りに叫ぶアルタルフ。節足に充填されていた重力はクローリザードへ放たれた。
だが……リザードはそれを避けた。
重力球の隙間へ跳び込むように、それらを潜って。
スピリットコマンド【ヒット】と【フレア】の威力が発揮された時、ダインスケンは一方的に敵を切り刻むのだ。
一瞬で齎されたジン達の優勢。
だが戦いは常に流転する。
ジン達は揃ってキャンサーの至近距離に潜り込んでいた。それが意味する所は――
アルタルフが大打撃を受けた機体の中で嗤う。
『調子に乗り過ぎたようだな。ここまで俺に肉薄した事は褒めてやるが……な!』
キャンサーの節足に重力球が生み出され……それらが放たれ、弾けあった!
>
射 ヘルホール(MAP) 攻撃4000 射程1-6・着弾点中心半径3
戦意100 消費EN20 条件:ケイオス8
>
着弾点で拡散させ、周辺を粉々に破壊する空間圧搾兵器。その高重力波がジン達三機を捉えた!
ナイナイの絹を裂くような悲鳴が響き、三機の装甲が砕ける!
その一方……キャンサーの装甲は、亀裂が徐々に埋まっていた。
自己修復能力により戦闘中でも損傷が直っていくのである。
「グッ……フフ、ステータス画面を見てればわかろう。このGアビスキャンサーには自己修復能力がある……黄金級機にとっては標準装備なのだからな!」
逆転により高揚するアルタルフ。
だが彼はすぐに気づいた。
ジン達三機は傷つきはすれど、今だ健在である事を。
バイブグンザイリとクローリザードは無傷だったが故に、大打撃は受けても一撃で倒されはしない。3000以上のダメージは受けたが、まだ限界の半分といった所だ。
そしてカブトは……表示ダメージ10。掠り傷でしかなかった。
ジンの底力の影響を受け、量産機なら一撃で破壊する威力でも、もはや全く通じなくなっていたのである。
「クロカ! ヴァルキュリナ!」
『あいよ!』
『わかった! 行け、突撃せよ!』
叫ぶジンに二人の女性が応える。
クロカはスピリットコマンド【アナライズ】で敵の装甲の弱点を探し、ヴァルキュリナはそこを叩くべくCガストニアを突っ込ませた。
巨大な刃の駒と化した巨体がキャンサーに激突する!
『クッ……こんな事で、黄金級機は!』
叫びながらアルタルフは接触している戦艦へ重力球を叩き込んだ。高密度の重力に押しのけられ、戦艦の巨体が押し流され、大音響とともに地へ叩きつけられる!
この場に及んでも、何十倍あるのかわからない質量差を覆すパワーがまだキャンサーにはあった。
だがその時。
『ケケェーッ!』
間髪入れず響く声。そして動く三つの機影。
ダインスケン機の刃が、ナイナイ機のナックルガードが、そしてジン機の電撃を帯びた鉄拳が、渾身の合体攻撃が黄金級機に叩きこまれた。
10000を超える与ダメージ値が各機のモニターに表示される。
だが――
『耐えた!?』
驚くナイナイの前で、黄金級機は踏ん張り、持ち堪える。
しかし、キャンサーも限界の手前だった。
もう一度。もう一度同じ打撃を叩き込めば、キャンサーを倒す事もできるだろう。
だがそれより早く――アルタルフは叫んだ。
『ククク……やはり私の勝ちだ。死ねぇ!』
渾身の重力球が反撃で撃たれる。
ジン達が勝利へ手を伸ばす、その前に。
三機中最も脆く、半壊していたBCバイブグンザリに。
それで全ては灰塵と化していただろう。
それが当たった、その瞬間に。
だがそれの射線上にカブトが走り込んだ。
幾度も最強の武器を受け、最も甚大な被害を受けている機体が、漆黒の超重力球を体で受け止める。
舞い上がる砂の一粒一粒さえ粉々になる地獄の中……カブトの全身にある発雷結晶が光った。
煌めく稲妻を迸らせ、カブトは、黒い破壊エネルギーを、その両手で押しのけ、引き裂く!
『そんなわけが!』
アルタルフは驚愕する事しかできなかった。
機体も操縦者も格上の自分が、何もかも格下の眼前の敵に通じないわけがないのだ。
そんな事はあり得ないのだ。その筈なのだ……!
刹那、カブトの両脇から、散っていくエネルギーを突っ切って走る二機の影。
『トリプルウェーブ!』
『ケケェーッ!』
ナイナイとダインスケンが合体技を再びしかける。
リザードの刃とグンザリのナックルがまたもキャンサーを打って――
>
格 トリプルウェーブ 攻撃7000 射程P1-3 合体技
>
黄金級機が打たれて動けないその一瞬へ、カブトが跳び込んでいた。完全にタイミングを合わせて。
ジンが味方をカバーする事。
必殺の攻撃に耐えきる事。
起死回生の反撃に必ず合わせてくれる事。
全て、ナイナイとダインスケンにはわかっていたし……二人がわかってどう動くかが、ジンにもわかっていた。
『そんなわけが! 貴様らごときに! そんなわけが!?』
伝説の最強機体の中、魔王軍の将軍は叫んでいた。
「ああ、確かに俺ごときは無敵でも最強でもないな。凄いチートなんぞ無いからよ」
カブトの右腕で電光が輝く。
「そしてお前は俺より強い。十回戦えば十回、お前が勝つだろう。無敵でも最強でも名乗ってもらって構わんよ」
稲妻の右腕が黄金の胸板を打った。そして砕く。そして食い込む!
「だが俺らなら勝つ。無敵にでも、最強にでも。お前にでもだ!」
キャンサーから右腕が引き抜かれた時、カブトの右足が放電していた。
「最強を誇っていたかったなら! 俺らとだけは戦うべきじゃなかったな!」
激しい電撃を纏い、ハイアングルの横蹴りが捻りを……いや回転を加え、キャンサーの頭を打った。
電撃に包まれ、頭が吹き飛ぶ。
「超電……ドリルキック……!」
ジン達の前で。
頭を失った最強の機体が、火花をあちこちから吹きながら、大地に倒れた。
そして、爆発!
天に立ち昇る火柱の前で呟くジン。
「どこかに転生できたなら……最強なら勝てる程度の奴とだけ戦うようにしておけよ」
第一部最終決戦終了。
なおここまでの全ロボ戦、全て自分の頭の中では戦闘MAPがあって
パイロットとロボットにSUパロボルールのステータスがあって
「この場面での気力はこのぐらいやろ」程度の変動ステを見込んでいて
ダメージ計算式に則って攻撃の威力を決めている。
まぁ書く物・読む物としての加工は流石にしているが。
ダメージ下二桁までは決めてないし
敵に一発撃ったからといって敵ターンがくるまで棒立ちになったりもさせてない。




