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異世界スペースNo1(ランクB)(EX)(完結編)  作者: マッサン
第1次 旋風覚醒編
100/353

100 金星 6

異世界へ転移し、巨大ロボ:ケイオス・ウォリアーの操縦者となった男・ジン。

彼は世界を席巻する魔王軍へ、仲間と共に敢然と立ち向かう。

裏切り者に奪われた最強機体の設計図を取り返すべく、ジン達はその後を追う。

裏切り者を討ち取ったジン達を待ち受けていたのは、魔王軍四天王が乗る黄金級機とそれが率いる軍団。

ジン達に最大の危機が迫る――!

 奥から出てくるのは長方形の機体。以前ジンが乗っていたBカノンピルバグもずんぐりはしていたが、そいつらは人間というより箱に近い体だった。ヒレやぬめった体で巨大な魚人だとわかるが、おおよそ「人間型」ではない。

 そいつらは深海型の機体……フグのケイオス・ウォリアーだった。

 それらは黄金級機(ゴールドクラス)の前に出ると、横に並んで壁を作る。


「チッ……さすが大隊長サマだ。部下がいて当然かい」

 言いながらもジンは【スカウト】で敵の能力を調べた。



魔王軍兵 レベル30

Bポイズングローブ

HP:6500/6500 EN:200/200 装甲:1480 運動:105 照準:169

格 ポイズンバブル          攻撃3300 射程P1-4

射 トキシックストリーム(MAP) 攻撃3500 射程1-7



「や、野郎! MAP兵器機体ばっかりずらずら並べやがった!」

 敵機の壁を見て顔を引きつらせるジン。

 敵のMAP兵器は横幅こそ狭いが直線に真っすぐ伸びる範囲を持ち、それが横に並ぶ事で死角を無くしている。MAP兵器の範囲に入らず敵へ接近するのは不可能だ。

『獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす。それは蟹が雑魚を食らう時も同じ事だ』

 言いながらアルタルフは機体の指をくいくいと曲げてジン達を挑発する。来れるものなら来てみろ、と。


『ジン、これじゃ近づけないよ!』

 泣き言を口にするナイナイ。

 だがジンは……静かに、落ち着いて言った。

「いや……やり方次第だからよ」

 ジンは味方に指示を飛ばす。


 アルタルフは見た。

 Sサンダーカブトを先頭に、遅れて他の機体と母艦がついて来るのを。

『なるほど、範囲攻撃の絨毯爆撃に対して単騎無双で突破する手に出たか。だが――浅はかな手だな』


 Gアビスキャンサーの背中にある四本の節足。その先に黒い球体が生まれた。

 その球が放たれ、サンダーカブトに炸裂する!

 ヘルホール……超重圧で敵を圧殺する死界の穴!



射 ヘルホール 攻撃5300 射程1-8

消費EN10 条件:ケイオス7



 部下と共に敵部隊へ範囲攻撃を放つべく後ろにいたアルタルフ。

 だが敵が単騎ならば範囲を絞って強力な単体武器として撃つだけの事だ。


 複数の黒い球体がキャンサーの脚先から脚の先から放たれた。

 それは宙で結合し、巨大な球となってカブトを襲う!

 カブトの全身が黒い球に呑まれ、球は破壊の渦となって唸りを上げた。


 ほどなく黒いエネルギーの渦が晴れる。


 そこには……カブトが立っていた!


 装甲に亀裂が走り、欠けた所もある。

 だが立っている。両腕を交差させ、防御に徹した体勢で。


『ぬ……』

 アルタルフの声から、初めて笑いが消えた。

 ジンが呟く。

「なるほど、スゲェ威力だ。大概の奴ならこの一撃で終わりだな」

 傷ついたカブトは、しかし前進を再開する。

「効いてないわけじゃない。やられたぜ、かなりな。だが……」

 足取りの力強さは全く衰えない。

「俺とコイツは、まだ立っている!」


 並の攻撃を完全に弾く鉄壁の装甲を誇る、Sサンダーカブト。それが全力で守りにまわり、なお防ぎきる事はできなかった。

 だがモニターに表示されたダメージは2000に満たず……到底致命傷ではない。


 そしてカブトから雷撃光線(ライトニングレイ)が放たれた。それはポイズングローブを打ち貫く!

 爆発を起こし、一機が消し飛んだ。

 グローブ達とて黙ってやられるわけもなく、揃ってカブトを撃つ。毒の泡が無数に放たれ、ジン機を包んだ。

 だかカブトは装甲を焼こうとする毒液の中、怯む事なく反撃を撃つ。電撃が、散弾が、次々とグローブを撃ち、半壊させ、爆発させた!


『ええい!』

 忌々しげに吐き捨て、アルタルフは再びヘルホールを撃った。

 狙い過たずカブトを包む超重圧の球体!

 そして……


『こ、こいつ! 二度も受けて、まだ……』

 歯がみするアルタルフ。

 エネルギーの渦が消えた時、カブトはそこに立っていた。


「一度受けた技は二度通じない……とまで言えるほど無敵じゃねぇが。さっきより上手く受ける事ぐらいなら、俺でもなんとかなるからよ」

 あちこちが損傷したカブトの操縦席でジンは不敵に笑っていた。

 リリマナが肩で力強く頷く。


 アルタルフは見た。

 モニターに表示された、ジン機が被ったダメージの量を。

 それが1500程度なのを。与えたダメージが減少しているのを。

(奴の底力が……奴の機体を堅固にしている!?)

 だからといって、黄金級機(ゴールドクラス)最強の武器をこうも耐えるとは。


 アルタルフの目の前で、再びジン機の反撃が炸裂する。並んだ魔王軍の機体へと。

『おのれ……ならば! 受けきってみせろぉ!』

 アルタルフは怒鳴り、ヘルホールを撃った。魔王軍の親衛隊にも、これを三発耐えられる者などそうはいない筈だ。

 超重力の球体がカブトを襲い、その全身を三度重力渦が覆い隠す!


 そしてそれが晴れた時――やはり、カブトは立っていた。

 腕を腰だめに、足を踏ん張り、その眼を光らせて。


『クッ! こいつ……どれほど耐える気だ?』

 苛立つアルタルフ。

 応えるジンの不敵な声。

「そろそろ終わりが見えてきたかな。邪魔者は消える頃だからよ」


 一列に並んだポイズングローブの群れは、もういくらも残っていなかった。無傷の機体は皆無だ。

 カブト一機の反撃でほとんど壊滅させられたのである。

『突撃! 打ち倒せ!』

 ヴァルキュリナの指示で、戦艦が、ナイナイ機とダインスケン機が残りに撃ちかかった。それが決定打……MAP兵器の連列歩兵は、その真価を発揮する事無く全滅となった。


 味方が突っ込むと同時に、カブトも走った。


『来るか!』

 迎え撃とうと再び節足の先に重力球を生み出すキャンサー。

 これまでのどの敵よりも強力な攻撃ながら、回復能力も用いてほぼ無尽蔵に撃つ事ができる。アルタルフはまだ自分の勝利を疑っていなかった。


 だが……カブトはキャンサーに突っ込まず、横に逸れる。少しの距離をあけたまま、半円を描くように右手に回り込んだのだ。

 正面には、ナイナイのBCバイブグンザリが。いや、それもやや斜めに、左側に逸れた。


 アルタルフは閃く。

(そうか。こやつら……俺のMAP兵器で一網打尽にされるのを恐れ、分散して俺を包囲する戦法に出たな)

 そう思いつき、彼はニヤリと笑った。


 勝利を確信して。


(全員で組んでの援護陣形や合体技で勝利してきた奴らが、俺の得意手を恐れるあまり自らの得意手を放棄したか。実に……愚か!)

 抑えきれずにアルタルフは笑った。

『己らの流儀を貫けん程度では! しょせん三下止まりというものよ!』

 笑いながら、アビスキャンサーはヘルホールを放った。


 狙うはカブト。

 その頑強さはわかっていたが、既に何度もこの攻撃を受けているカブトのHPは残り半分。このまま撃ち続ければ倒せると踏んだのだ。


 走りながら、カブトは重力球の渦から身を守った。装甲は傷つき、きしみ、あちこちから破片が舞い上がる。もはやこの機体に無傷のパーツなど無いかもしれない。


 だが――それでもこの機体は走り続けた。


 そして機体を捉える超重力! アルタルフのスキル【アタッカー】の効果で、その威力はさらに上がっている。

 漆黒の渦が全てを砕こうと荒れ狂った――!

機体解説


Bポイズングローブ

深海型青銅級ケイオス・ウォリアー。フグ型の機体であり、水中適応は高い。

機体内のグローブ袋に大量の毒素を蓄えており、それを泡状にして放つ「ポイズンバブル」で敵機を焼き焦がす。

最大出力で稼働させる事により濃厚な毒素を含む気流(水中では水流になる)「トキシックストリーム」を放つ事ができ、射線上にいる複数の敵機を腐食・崩壊させる強力な武器となる。


魔王軍の中でも高め(2以上)のケイオスを有する有能な兵に与えられるエリート機の一種であり、ダークエルフやゴブリンチーフなどの中堅の魔物に操縦者が多い。

だが操縦者からの人気は(外観のせいで)いまいちである。

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― 新着の感想 ―
[一言] デスラ●砲艦は近接されると弱い……。
[良い点] ボスの攻撃に耐え続けてこそのスーパーロボット。 リアルロボットばかり活躍しても盛り上がらないのですよ!
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