○ごっこ
どーもー(拍手)! ありがとうございますぅ……あ、いまお客さんから脱脂綿をいただきました。こんなんナンボあっても、いいですからね。
「いちばん、いいですからね。……あのな、うちのオカンが、子どものころによくやった遊びの名前を忘れてしまったんやて」
子どもの遊び? ほな、どんな特徴か教えてよ。
「オカンが言うには、逃げる子らを残ったひとりが捕まえる遊びらしいんよ」
……鬼ごっこやないか。そんなもん、すぐ分かったよ。
「分かれへんねんな……」
なにが分かれへんのよ。
「オレも鬼ごっこや思てんけどな、オカンが言うには、鬼が……」
鬼、言うてもうてるやないか!
「逃げる子らはめいめい隠れとって、鬼が、もういいかーい、て確認してから捜しはじめるんやて」
ほな鬼ごっこちゃうやないか。鬼ごっこはね、ただただ逃げまどう相手を追い回すストイックな遊びなんやから。ほかに何か特徴言うてなかった?
「オカンが言うにはな、追いかけるほうは鬼の恰好して、悪い子はいねぇが、て叫びよるらしいねん」
鬼ごっこやないか。その特徴は完全に、秋田の伝統行事・鬼ごっこよ。
「ただオトンが言うには……」
オトン、
「サカディちゃうか、て」
それ「のび太の太陽王伝説」で行なわれる、ほぼサッカーやないかい。絶対ちゃうやろ。
「ただ、オレらこうやってお客さんの前で話させてもらってるけどな……じつは、脚ないねん」
ホラー要素そこだけ? いいかげんにしろ。
「「どうも、ありがとうございましたぁ」」