表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とある魚達の心拍数

作者: 冬迷硝子
掲載日:2021/04/07


海底に住んでいる深海魚。

彼らは、どうしてあんな水圧にも負けず生きていられるんだろう。

空気も少ないのに。

酸素が無ければ生物は生きられないはずなのに。


一体、彼らは何の目的のために生きている?


一時戦時中に沈んだ大型魚雷を探しているんだろうか。

はたまた深海にはブラックホールがあるという、

根も歯もない噂を実証しているのか。

沈む人体骨格を眼にしながら、のうのうと過ごしている。

意もなく沈んだダイバーのことも知らずに。

自らその世界に飛び込んだ自殺者も含め、

あんな暗い世界で一生。

そんなのとても私たちには無理だ。


人は闇を嫌う。

光を求める。


それが人だ。

灯りがなければ、何もできない臆病者。

対立なんて分かりきってる。

もし人間と魚類が争うことになればきっと結果は...。

いや、今はそうならないことを祈ろう。


『世界が平和でありますように』


そんな思ってもいないありきたりな願い事を、

パンダの大好物に吊らし、私はそこを離れた。

きっと、あの笹は最終的に餌にされるんだろう。

書かれた願い事も一緒に。

織姫と彦星になんて届くわけがない。

燃やされれば、ただの灰だ。

灰は土となり肥料となり芽を育てる。

そうやって遠回りながらも願いを叶えてくれる。

子供の夢なんてその程度なんだろう。

まぁそんなこと誕生日とクリスマスが、

同じの子供たちには(かな)うまい。

必ず年に二回は来るこのチャンスも、

一回減るだけで随分と違うものだ。

証拠に、


『はいこれ。誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント』


そう言われた身になれば分かる。

このむずがゆしさ。

今か今かと待っている学生カップルには微塵も分かるまい。

彼らは今、絶頂期なのだから。

しかし改めてこう見ると本当に都会は人が多いと感じる。

全国各地から夢見る少年少女が上京し、

現実を見せれては、これが人の多い街なんだと勘違う。

誰が自分の力でなんでもできるだ。

そんな綺麗事が通じるのは、二世代も前の話。

日本の物価が上昇しみなが浮かれ騒いだ時代。

通称、バブル。

崩壊と共に人は奈落に落ちていった。


『ねぇねぇ、来週はどこいこうか?』

『動物園がいい。新しいライオンの赤ちゃんが産まれたんだって。絶対可愛いって!』


こういう会話を耳にするだけで、

鬱になる人の気持ちが非常に共感する。

いくら鮮明な詞とアップテンポな歌を鼓膜に押し当てても、

聞こえるものは聞こえる。

仕方ない。

そう諦めるしかない。

私は自宅付近のバス停で下りた。


暑い。


さっきまで北極並の雪風が吹いたと思えば、

一歩外に出るだけでここなつのプールだ。

サイドを歩くあのごつごつとした感触に似たものを感じる。

帰宅する。

しばし、沈黙。

誰も居ないようだ。

溜息を含んだ二酸化炭素を撒き散らす。

きっと家中の菌は大喜びだ。

階段を上がり、自室になだれ込む。

エアコンはないので扇風機のスイッチを押す。

何ヶ月も伸ばしっぱなしの髪か汗を含んでベタつく。

眼鏡を取り、真っ正面から風を浴びる。


涼しい。


パラソルの下にでも居るかのようだ。

だがそれもしばらくして終わる。

服を投げ出しては、洗濯機へと持って行く。

やはり裸は涼しい。

来客が来たら、

何の遠慮もなしにドアを開けてしまいそうだ。

それくらいに頭をやられてる。

リビングの熱帯魚に餌をやりながら思う。


こいつらは暑くないんだろうかと。


一匹つまみ出して、

庭に放り投げたらどうなるだろうか。

まぁこいつらが干からびようがなんだろうが、

私は一向に涼しくならないが。

その口をパクパクと開いて、

餌を欲しがる姿が面白くて飼っている。

しばらくそうしていると、気持ちが落ち着く。

あの口に指を入れてかき混ぜてやりたいといつも思う。

まぁ実際、何度かやってみたがどれも失敗に終わった。

今はこうして見ていよう。

彼らが生きている様を。


しかし暑いな、この水の中は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ