本当のことを
「よかったの? 山辺君も呼んで」
隣で電話での会話を聞いていた葉月が、心配そうに私に声をかけた。私はその言葉に、小さく頷いた。
「これは彼にも聞いてほしいの。私の気持ちを理解してもらうためにも、私がこれから前を向くためにも」
葉月はそれ以上、何も聞いてくることはなかった。全てを言わなくても、葉月には私の意志ははっきりと伝わっているのだろう。そんな私を何も言わず、見守って尊重してくれるのはとてもありがたいのだ。
それに、私も色々とケジメをつけなければいけない。改めて声に出すことで、改めて決意を固めることができた。
――ピンポーン
しばらくするとチャイムが鳴る。玄関のドアを開けると、箱を持った先輩と、どこか不機嫌そうな山辺君が立っていた。
「これ、ケーキなんだけど、良かったら食べて」
「お気遣いありがとうございます。ではどうぞ」
2人をリビングに通し、私はキッチンに行ってコーヒーを入れる。ケーキはとりあえず冷蔵庫に入れる。何でもない日ならみんなに出せたのだろうが、この話をするのにケーキは逆に困るだろう。
キッチンで深呼吸をした私は、コーヒーを持ってリビングに戻る。神妙な面持ちなのは全員同じなのだが、先輩だけはどこか落ち着きがない。この中で先輩だけが私の家に来たのは初めてなため、どこか挙動不審だ。
「どうぞ」
私はそれぞれの前にコーヒーを差し出した。そして、私は雪を抱いて席に着いた。これで準備は整った。
「それでは話しますね。私の過去のことを」
前置きを置いて、私は話し始めた。




