最悪な報告 葉月side
遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。
12月は文字通り師走となりまして、プライベートでバタバタしてしまい、昨年も挨拶もなく、長期更新を空けてしまい、申し訳ありませんでした。
今年もまた忙しい年となりますので、更新が空くかもしれませんがよろしくお願いいたします。
私は葵と一緒に帰れなくなったので、鳥谷君と帰っていた。友達と会話していたから、声をかけるのは気が引けたけれど、快く引き受けてくれたのが素直に嬉しかった。
「そういえば、葵が山辺君に呼び出されたみたいだけど、鳥谷君は知ってる?」
「え? そうなんですか? 俺は何も聞いてないっすね……」
鳥谷君は本当に心当たりがないようで首を傾げている。これは失言だっったかなと思いつつも、本人の許可無く私が憶測で話すわけにはいかないか。
「まぁどうせ適当な用事でしょうね。あ、それにしても、クラスでの打ち上げとかあったんじゃないの?」
「いえいえ、大丈夫です! 後日また仲の良い奴らだけで集まってやるんで、気にしないでください!」
私のせいで打ち上げに参加出来なかったのではないか、ということを心配していると思ったのか、鳥谷君は笑顔を向け、明るい声で大丈夫と言っていただけて。本当のことでも慌てて言うと言い訳に見えてしまうな。
「ありがとう。あ、ちょっと待って。電話みたい」
「あ、いや全然! 俺、離れてましょうか?」
「葵だから多分大丈夫。にしても、珍しいわね」
山辺君に呼び出されていたから、その事後報告だろうと思い、軽い気持ちで電話に出てしまった。
「どうしたの? 山辺君に何か言われた?」
「……」
「葵?」
電話の向こうの葵は、何も言わない。本当に繋がっているのかと、画面を確認するが通話中。よくよく聞いてみると、どこか震えているような息遣いが聞こえてきた。
「葵? 返事して。一体何があったの?」
「は、葉月……。た、助けて……」
「立花さん!」
私は鳥谷君の存在も忘れ、一目散に葵の家に向かった。あの葵が、私に助けを求めるなんて珍しいことだった。感情を表に出さなくなって、初めての事かもしれない。
「葵! いるの?」
玄関のドアを叩いても、インターホンを押しても、中から返事はない。緊急事態だと思い、ドアノブに手を触れると簡単に開いてしまった。
「葵? 入るよ?」
靴を脱ぎ、そっと部屋に上がり込むと、リビングから葵の飼い猫の雪が顔を覗かせた。何度も私の顔とリビングを交互に見ている。まるでここに葵がいると教えてくれているように。
そのままリビングに向かうと、ソファーにうずくまっている葵がいた。顔を埋めているため、表情は分からない。
私はそっと葵の横に腰を下ろした。それでも、葵は何も言うことはなかった。
「葵、何があったの?」
「先輩が、ユウ君の伯母さんと……」
それ以上、葵は何も言わなかったが、その言葉でどういった状況なのかを察することは出来た。
「風間は今どこに?」
「ユウ君の家……」
「風間と一緒に帰って来て、その様子をユウ君のお母さんに見られた。でも、家の中にいるってことは、風間のことは歓迎したってことよね」
私の質問にゆっくり頷く。どうして一緒に帰る状況になったのかまでは、今の会話からは分からない。あれほど避けていた人と一緒に帰るには、何か理由があったのだろうか。
「何か言われた?」
「前と同じ言葉を、先輩の前で……」
「それは、辛かったわね……」
それ以上、私は何も言うことは出来なかった。葵の辛さは、そばで見守ってきた私が一番理解しているつもりだ。
でも、葵の辛さは、葵本人しか分からない。葵はそのせいで今も苦しんでいるのだ。あの日から今まで、ずっと……。
「もう、この話題から逃げられないわよね……」
「さすがに、こんな状態だとね……」
「葉月、今日泊まってくれない? 1人で、いたくないの……」
「いいわよ! ならお泊まりセット持ってくるから待ってて。ついでに夕飯も適当に材料買ってくるから」
「ありがとう」
「じゃあすぐに戻るわね!」
私は雪に葵を任せ、家に急いで帰ることにした。家に帰った後、鳥谷君にも謝って準備を済ませ、必要なものを買って葵の家に向かった。もう一度戻ったときには、葵はいつもと変わらない状態で、私を迎え入れてくれた。
それから、詳しい話を聞きたかったが、今日は疲れているだろうからその話題に触れることはやめた。その代わり、今日あった体育祭の出来事を語り合った。山辺君の話題が出る度に、どこか辛そうな顔をしたが、そこにも触れなかった。
ただ今は、葵には気持ちを落ち着かせてもらいたかったから。
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