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お互いを称えて 流星side

「なんか悔しいな」


 俺は最後の最後で、陽人に負けたのが悔しかった。自分でもここまで熱中するなんて思っていなかったから、さらに俺の悔しさは増した。


「お前がテニス以外で熱中するの初めて見たわ」


 東雲が俺を見て少し笑う。自分でも悔しさを感じるくらいだ。ここまで張り合った勝負はいつ以来だろうか。


「風間先輩、お疲れ様でした」


 そんな俺に声をかけてくれてのは陽人だった。陽人はただただ、誇らしげな顔で俺に手を差し出してきた。


「お前もな。お前に負けたのは悔しかったが、久しぶりにこんな夢中になったわ」


 差し出してきた手を握り返しながら笑顔を向ける。負けたけど、悔しいけれど、ここまで清々しい気持ちになったのはいつ以来だろう。変な気分だな。


「東雲先輩もお疲れ様でした」


 手を離すと東雲に体を向け、労いの言葉をかけた。本当にこういうところは真面目だよな。体育祭だろうが普段だろうが、ここは崩さないスタンスはある意味尊敬する。少々壁があるように感じるが。それでも、前よりは距離が縮まっているように感じて嬉しい。


 その後、そのまま空輝と話しだした。その姿は本当に仲が良いのだろうと思うほど気が緩んで見えるけれど。


「いやー、にしても本当に僅差だったな」


「そうだな」


「もしかして、アレが負けた原因か?」


 チラッと東雲はある方向を見る。俺もつられて目線をやるが、そこにはもちろん、水野さんの姿があった。ここからは少々遠くて表情は見えないが、どこか安心しているような感じが伝わってきた。


「……どうだかな」


「素直じゃないねぇ」


 東雲は相変わらずだが、どこか心配もしているように見えた。こんなことを聞いてきたのは、東雲にも聞こえたからだろう。


『が、頑張れ! 山辺君!』


 ぎこちない応援の仕方だけど、俺の耳にも届いて、東雲にも届いたのなら、あいつにも確実に届いているだろう。クラスメイトを応援するのは、何もおかしいことではないが、それでも俺はモヤモヤした気持ちを残している。


「なんで俺じゃなかったんだろうな……」


「何か言ったか?」


「何も」


 俺たちはアナウンスに従い、そのまま退場をした。清々しい気持ちにはなったが、どこか心は引っかかったままだった。

少しずつ投稿できたらしていくのでよろしくお願いします。

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