組体操
今回の作品には組体操に関する自己解釈や思いが含まれている部分がありますがご了承ください。
競技もいよいよ終盤だ。残るは組体操と学年別対抗リレーと3年生のフォークダンスだけだ。私たち1年生はどんな結果を残すのだろうか。
「みんな位置についたみたいね。葵、私行ってくるね」
「カメラに夢中になりすぎてこけないようにね」
カメラを構えて走り出した葉月を見送り、私は視線をグラウンドに戻す。学年ごとに綺麗に整列し、先生からの合図を待っている。
――ピッ!
笛の合図で技を決める。最初は1人でもできる片足をフラミンゴのように上げて立つ技。序盤は準備運動も兼ねた簡単な技をいくつか披露すると、今度は近くにいた人とペアを組んで2人技へと移っていく。
「あら。これはたまたまなの?」
山辺君は鳥谷君と。そして、風間先輩は東雲先輩とペアを組んでいる。自分で好きなペアを選んだとしても、偶然このペアになったとしても、これだけは言える。
「仲良しか」
自然とそんな言葉が口から漏れる。それは技も同じようで、2組共息ぴったりだ。最初はお互いの足の裏をくっつけて上に上げるダブルバランス、サボテン、倒立と次々と技をこなしていく。
2組共はもちろん、他のペアも軽々と技をこなしていく。暑い中はだしで、集中力を切らさずに綺麗な技を披露する姿は、私には眩しすぎるくらいとてもキラキラ輝いていた。音楽もなく、技が完成する度にグラウンドに響くのは拍手だけだった。
そんな中でも組体操は滞りなく進んでいく。3人、4人、5人と増えていくごとに技の難易度も上がっていく。観客は身1つで作り出される技に魅了されていく。組体操は1歩間違えば重大な事故に繋がる可能性がある。実際に事故も起き、一時期大技が流行っていた時もあったが、年々減りつつある競技である。組体操を実施しないところも増えたが、この伝統がなくなってしまうのはどこか寂しい気持ちもある。大技にこだわらなくても良いから、できる範囲で、無理なく安全にできるものへと変化させるのも1つの手なのではないかと思う。
そんなことを考えていると、組体操もラストになった。ある生徒はグラウンドの中心に集まり、他の生徒はトラックに沿うように並び始める。今までとは違う雰囲気に、これがラストだと告げているようだ。
――ピーーッ!
今までとは違う長い笛が鳴ると、それを合図に一斉に技を作り出す。真ん中に一番大きなピラミッドを作り、その横に小さなピラミッドができていく。トラックに沿って並んだ生徒たちは、ある人はサボテン、ある人はタワーを作っていった。
最終的に出来上がったのは真ん中に4段ピラミッド、その両端に3段、2段と小さいピラミッドが並んでいる。そして、そのピラミッドを取り囲むタワーとサボテン。交互に並んでおり、ジグザグになっている。まるで砂漠にあるピラミッドを見ているようだ。
4人がどこにいるのか気になったので探してみると、全員がピラミッドの一部となっていた。残念ながら全員同じピラミッドを作っているわけではないが、それでもここまで偶然が重なるのだろうか。4人ともテニスのおかげか、体はしっかりしているから土台になるのは分かるが、本当に彼らは……。
「仲良しか」
それしか言葉が出てこなかった。
それでも、彼らの演技に精一杯の拍手を送る。技を崩し、整列した彼らは私たち観客に向き直し、大きな声で挨拶をする。
「「「ありがとうございました!」」」
泥まみれで、汗だくの彼らに、精一杯の労いの気持ちを込めて大きな拍手を送った。
この度は投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
今夏、私自身が多忙のため、投稿が1週間、2週間と遅れるかもしれません。続きを楽しみにしている読者の皆様にはご不便をおかけしますが、何卒応援のほどをよろしくお願いいたします。




