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緊張 流星side

間が空いてしまい、すみません。

小説に関することはTwitterの@mijukunagisaで発信しています。


 どうしてこうなったんだ。俺の隣には水野さんが歩いている。勉強をしていたはずが、成り行きで勉強を教え、一緒に帰ることになった。無言の状態が気まずく、俺はずっと話している。


 しかし、水野さんは相変わらず無表情だ。前よりは雰囲気は柔らかくなったが、表情はまるで忘れてしまったかのように変わらない。学校の話だけではなく、優月の話も時折しても特に嫌そうにはしてはいないから大丈夫にはなったようだ。それだけでも、大きな収穫かもしれない。


 話をしていると、徐々に家に水野さんの家が近づいてきた。優月の家の隣だから、自然と家は分かる。だが、このまま送ってもいいのだろうかという気持ちにもなってしまった。水野さんは俺を避けている身だ。正直、今の状況も好ましく思っていないだろう。


「先輩」


「え、あ、はい」


「どうしたんです? 急に無言になって」


 どうやら色々考えすぎて無言になってしまっていたようだ。


「いや、ちょっと。俺、そろそろ帰るよ。もうすぐ、水野さんの家だし」


「あ、待ってください」


 帰ろうとする俺を水野さんが引き止める。


「どうしたの?」


「先輩、今日は色々とありがとうございました」


「これくらいどうってことないよ。また何かあったらいつでもおいで。俺ができることならするから」


「はい。では、お気を付けて」


「じゃあ、またね」


 俺たちは今度こそお互いの家に帰った。


 しかし、俺の歩きはどこかぎこちない。水野さんの姿が見えないところまで来ると、俺は家まで走って帰った。


「はぁ、はぁ……」


 家に入り、玄関を閉めた瞬間、俺はドアにもたれかかるようにしてしゃがみ込んだ。さっきまで普通でいられたのに、水野さんがいなくなった途端これだ。


 成り行きで一緒に勉強したことも、一緒に帰ることになったのも偶然だが、自分でもこんなに積極的に動いたのは驚きだ。だが、それよりも驚くことがあった。


『はい。では、お気を付けて』


 そう言った水野さんの顔は、思わず見入ってしまうほど素敵だった。普段笑わないからこそ、俺と関わってくれないからこそ、その笑顔の破壊力は凄まじい。


 どうして別れ際に笑ったのかは分からないが、それでも久しぶりに見た笑顔に思わず今までの緊張の糸が解れた。


「もっと見たい……」


 ふと漏らした言葉は、誰にも届くことはない。少し背筋がゾクッとしたのは、多分汗のせいだろうな。

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