体育祭に向けて 陽人side
この度はお休みをいただき、ありがとうございました。本日から連載を再開して参ります。
「疲れたな」
「そりゃあな」
9月に入ったとはいえ、まだまだ残暑も日差しも厳しい。そんな中、集中力と体力を削る組体操を練習させられているのだ。疲れるのも当然だ。
今は2人組の練習。なぜか俺は空輝とペアになった。知らない人と組むよりはマシだが、ランダムで決められたとはいえ、どんな確率だよ。どれだけ俺たちは腐れ縁で繋がってんだ。
「ハル、ハル……」
「ん?」
「手、離してくれ……」
「あ、悪い」
俺はパッと手を離す。そういえば、今は倒立の練習中だったか。余計なことを考えていたせいで手を離すのを忘れていた。
「で、何考えてたんだ?」
「お前と俺の腐れ縁についてな」
今度は俺が倒立をする。別に支えはいらないが、念のために空輝に支えてもらう。
「そんなの今さらだろう。俺はてっきり、水野さんのことでも考えてたのかと思ったぜ」
「それはお前だろ。気になるんだろ、立花が」
「な、そんなわけねぇだろ」
分かりやすい。組体操の練習中、ずっと体育館のほうを見ていたのを俺は見逃していない。まぁ俺も見ていたから、空輝の視線に気が付いたのだ。
「お前、バレバレだよ。さっさと告ればいいものを」
「そんなわけにはいかねぇよ。立花さんは高嶺の花で、ライバルは大勢いるんだ。俺が立花さんの横に並べる日なんて思ってないよ」
どこか弱々しい声。積極的なのか、それとも臆病者なのか分からないな。根はすごく良い奴だし、立花も満更ではなさそうなんだけれど、こいつは気付いているのだろうか。
「お前こそどうなんだよ。水野さん、気になってるんだろ?」
「別にそんなわけねぇだろ」
「それとも、あおいちゃんが気になるのか? あ、いや、ごめん」
「気にするな。とりあえず、今は組体操に集中だ」
「そ、そうだな」
俺たちは2人技の自主練を終え、今度は他の人と練習をする。それでも、空輝の言葉が引っかかる。忘れるわけがない。俺の初恋の相手なのだから。
「よし、全員休憩だ!」
先生の声で生徒がそれぞれ木陰に行ったり、水を飲みに行ったりと散らばった。さっきの言葉が引っかかり、組体操にも集中できなかった。
俺はもう一度体育館を見る。今頃、あいつはダンスに勤しんでいるだろう。
「俺はどちらのことを……」
そこまで言いかけて、俺はやめた。まだ、認めたくないから。今のままでいいからだ。
「ハル、俺たちも休もうぜ」
「あぁ」
俺もみんなと同じように休むことした。
本日はバレンタインデーですが、みなさんは大切な人に感謝を伝えられましたか?
日頃の感謝を伝えるのもこういう機会でしかないので、私は読者のみなさま、そしてTwitterのフォロワーのみなさまに感謝を申し上げます。これからも日々精進して参りますので、今後ともよろしくお願いいたします。




