花火大会に向けて
2週間も間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
今後は学業の方が忙しくなり、投稿頻度が下がるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
それでは、続きをどうぞ。
その日の夜、葉月から連絡があった。帰り道、鳥谷君との会話で、来週ある花火大会に誘われたらしい。ふとそれはデートではないかと思ったが、葉月は私も行こうと誘ってきた。どうやら山辺君と2人で行く予定らしいのだが、それに私と葉月もどうかってことらしい。そして明日、そのための浴衣やら髪飾りやら一緒に買いに行こうと誘ってきた。
ふと葉月と鳥谷君の2人で行けばいいのにと思ったが、口には出さなかった。山辺君にお節介だなんだと言っておきながら、私も同じことをしていることに気が付いたからだ。親友の幸せのためならなんだってするという気持ちは、私も山辺君も同じなのかもしれない。
そして次の日。駅で待ち合わせをし、街でも大きなショッピングモールにやってきた。夏休みということもあり、家族連れやカップルが多くいた。
「どうしたのよ、葵。そんな顔して」
「2日連続人混みの中来るとは思ってなかったから、少し人酔いしたわ……」
私は普段から外に出ることがないいわゆるインドア派なのだ。学校のクラブに参加しているわけでもなく、頻繁にお出かけをするわけではない。外に出るのは学校か買い物、そしてこうやって葉月に誘われたときだけだ。
「たまにはこういうとこに来なさいよね。これくらいで人酔いしてたら今日の買い物も苦労しそうね」
葉月は呆れながらも容赦はない。私が人に対して疲弊しているにも関わらず、腕を掴み、人混みの中を進んで行く。次から次へとすれ違う人に目を回しながらも、なんとか葉月について行った。
葉月に連れてこられたのは、夏限定で開かれている、浴衣専門店だ。子供から大人までのサイズがあり、男女の浴衣も揃っている。浴衣だけでなく、甚平や小物、髪飾りと品揃えもいい。ここで全て揃うのはありがたい。
「んー。種類豊富なのは嬉しいけど、こう多いと迷うわね」
葉月は浴衣を手に取っては鏡の前で合わせ、戻しを繰り返している。私も気になったのがあれば手に取って見てみるが、これといったものは見つからなかった。
「もっと明るいの選んだらいいのに」
自分のを選んでいるのかと思えば、急に私の後ろに来て口を出す。葉月の言うように手に取っているのは黒とか紺がメインの浴衣。それに小さい花があしらわれている浴衣ばかり。
「別にいいでしょ。ピンクとか水色とか、いかにも女性が好みそうな浴衣は私には似合わないもの」
プライベートといえど浴衣といえど、目立つ色は私の好みには合わない。目立たなくていい。夜に紛れるくらいの浴衣が私にはちょうどいいのだ。
「よし。葵の浴衣、私が選んであげる。葵は私の選んで!」
「え、いや別にいい……って、もういないし」
何も返事をしていないのに、葉月はすでに私の浴衣を選び始めている。私が選んだのとは真逆の明るい色ばかり。さっきの私の話を聞いていたのだろうか……。
「仕方ないな」
私も葉月に似合う浴衣を探すことにした。葉月は黒髪ロングで顔立ちも可愛い系というよりは綺麗で美人だ。黙っていれば高嶺の花で近寄りがたい存在を放つ。
「シックな浴衣のほうが似合いそうだな」
私は紺色や藍色など、落ち着いた色を中心に選んでいった。暗いとか地味だとか言われても、私に選ばせた以上文句は言わせない。かと言って、適当に選ぶつもりもない。
「こんなことなら、鳥谷君の好み聞いておくんだったわ」
どういった色が好きか参考にしたかったが、まぁ何を着ても鳥谷君なら喜ぶだろう。普段見られない姿を見て、顔を赤くしながらも嬉しそうにしている様子を見るのもいいかもしれないな。
葉月の浴衣姿を見て呆けている鳥谷君。面白そうな光景だな。どんな感じになるのかなと考えつつ、私は色々な浴衣を手に取った。
「葵、決まった?」
「もちろん」
約30分ほどでお互いの浴衣が決まった。それぞれが選んだ浴衣を見せ合い、お互い文句を言いながらもそれを着ていくことになった。
正直、葉月が選んだ浴衣は私の趣味とは真逆と言えるようなものだ。だが、葉月も一生懸命選んでくれたようだし、私が選んだ浴衣も文句を言わずに着てくれることになったため、何も言わずその浴衣に決まった。
花火大会、これで行くと思うとどこか恥ずかしい気もするし、行きたくないとも思ってしまう。でも、何気に楽しみな自分もいるのだ。葉月と行けるのが楽しみなのか。それとも純粋にお祭りが楽しみなのか。今の私には分からなかった。




