新鮮な姿
「お前ら来てたのか」
「こ、こんにちは! 立花さん!」
相変わらず、鳥谷君は元気が良い。普段は普通なんだけど、葉月がいるとなぜかこうなってしまう。まぁ緊張からなのだろう。
「2人ともカッコよかったよ。しかも圧勝だし」
「あれくらい俺らには余裕だ。こいつと何年の付き合いだと思ってんだよ」
山辺君は隣にいる鳥谷君の背中をバシッと叩く。叩かれた拍子に体がビクッとなった。
「な、何すんだよ」
「お前がだらしないからだ。シャキッとしろ。いちいちこいつの前で緊張するなよ。いい加減慣れろ」
「だからお前は、立花さんに対しての礼儀がなってないんだよ。ほんとすみません、立花さん」
鳥谷君は何度も葉月に向かって頭を下げた。お嬢様と従順な執事だな。もうすでに見慣れた光景になってきたけれど。
「別に気にしてないから大丈夫よ。いつものことだしね」
「それにしても水野、お前も来たんだな」
急に私に話しかけられ、一瞬戸惑ってしまった。
「別に。ただ暇だったし、葉月に強引に連れて来られたから」
気を取り直して口を開いたものの、山辺君の目を見ることはできなかった。制服姿は見慣れているが、ユニフォーム姿は初めてだ。違和感があってなかなか馴染めない。
「お前らしいな。そういえば、お前らもソフトテニスやってたんだよな。ルール説明しなくても分かるか」
「当然よ。私も葵も、ブランクがあるとはいえそれくらいは分かるわよ」
「それはそうか。お前らはずっといるのか?」
「私は一応写真撮らないといけないし。葵もいると思うわ。まぁあなたたちが勝ち残ってくれればの話だけどね」
「俺らはそんな弱くねぇよ。だろ?」
山辺君は鳥谷君に視線を向ける。葉月がいるからかどこか動きはぎこちないが、何度も首を縦に振った。
「もちろんです!こいつとなら余裕ですよ。絶対1位になります」
「強気だな、お前は。立花の前だからってそんな見栄張らなくてもいいだろ」
「べ、別にそんなんじゃ……」
「あー、はいはい」
この炎天下の中、ついさっきまで試合をしていたのに全く疲れが見えない。2人にとってはさっきの試合はウォーミングアップだったのだろうか。
私はふとあることが気になり、辺りを見渡した。だが、この人混みではそうそう見つかるわけがなかった。
「水野、誰か探してるのか?」
「ちょっとね。風間先輩もいるのかなって」
「あー。先輩ならもうすぐ試合だろ。俺たちはしばらくないし、気になるなら見に行くか?」
「あ、いや別に……」
「いいじゃない、葵。風間が負けたら笑ってやろうよ」
葉月はいたずらを思いついた子供のように笑った。本当に葉月は良い性格してるよな。
「まぁ暇だし行こうかな。山辺君、案内してくれる?」
「なら行くか」
私たちは山辺君たちについて行くことにした。葉月は楽しそうにカメラを手入れしていたが、お目当てのものは撮れないだろうなとは感じていた。




