チューリップ
「こんにちは」
「あら、葵ちゃん。今日は入学式だったのよね。入学おめでとう」
「ありがとうございます。今日もお願いします」
私はお墓に供えるための花を買いに来た。よく利用しているから、花屋さんの常連客になり、おばさんとも親しくなった。花言葉にも詳しいから、たまに聞いている。
「今日は暖かいから、花も元気なのよね。春らしくチューリップにしておこうか。ピンクがいいかしら」
「あの、チューリップの花言葉ってあるんですか?」
「そうだねぇ。チューリップは全体だと、思いやりっていう花言葉があるよ。色別に見たらあまりよくないものもあるけどね」
「例えばどんなのがあるんですか?」
「黄色は望みのない恋、白は失われた愛とかね。でも、赤は愛の告白とか、紫は不滅の愛、そして今ラッピングしたピンクは、誠実な愛って花言葉があるんだよ」
「誠実な愛……」
「葵ちゃんも、いつかそんな人が現れたらいいね」
「いえ、私なんかにそんな人現れませんよ。そろそろ行きますね」
「あのさ、葵ちゃん。あまり触れないほうがいいんだろうけど、優月君のことはあまり気にしないでいいのよ?」
おばさんもユウ君のことは知っている。ここの花屋さんのことを教えてくれたのはユウ君だしね。
「大丈夫ですよ。まだ引きずる面はありますが、昔よりは落ち着いたほうですよ」
「そうかい……。じゃあ、気を付けてね」
「はい。ありがとうございます」
代金と引き換えに、ピンクのチューリップを受け取る。
私なんかより、好きな人にもらうのが一番なんだろうなと思いながら、私は花屋さんを出てお墓に足を向けた。