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文化祭1日目

 日にちの流れはあっという間のようで、ついにこの日がやってきてしまった。あの日から何度もラテアートの練習をし、簡単なものなら作れるようになっていた。とはいっても、山辺君ほど上手いわけではないけれど。まぁ今はラテアート用のシートも豊富のため、それももちろん活用するけれど。


「おー。葵、似合ってるよ」


 私はクラスTシャツに制服のスカート、それからカフェエプロンをつけただけの姿。Tシャツにはカフェらしくコーヒーカップが描いてあるけど、白くて涼しげでとても着やすく動きやすい。清潔感もあってとても好みである。


 しかし……。


「メイド服着た葉月に言われてもねぇ……」


 褒めてくれること自体はありがたいが、ものすごくメイド服が似合っている葉月に言われても微妙なのである。


 メイド服は本当にありきたりである。黒いミニのワンピースにフリフリの白いエプロン。首には黒いリボン。靴はローファーに白いタイツ。そして頭にはこれまたフリフリの白いカチューシャ。美人な葉月にはよく似合っている。クール系メイドだな。


「何言っているのよ。なんか、スカートが短くて落ち着かない……」


「足がスラッとしているんだからいいじゃない。それより、もうすぐ開店……」


「楽しそうだな」


 葉月と話していると声をかけられた。葉月と一緒に振り向くとそこには、執事姿の山辺君が立っていた。執事服は本当に漫画やアニメの中で見るような服であった。見た目はスーツのようだが、スーツとは違う。黒をベースにした服で、後ろは長く、2つにわかれた状態。そして上着の下からグレーのベストが覗き、ネクタイがしてあった。そして手には白い手袋がしてあった。ただ、メイド服とは違い長袖なので暑そうに見えるが、そう思わせないほどの立ち振る舞いだ。


「なんだよ」


「いや、あなたって執事服も似合うのね。馬子にも衣装って感じ」


「それ褒めてるのか?」


「一応」


 相変わらずの会話だな。まぁ先輩ほど冷たいわけでもなく、嫌っているわけでもないからいいけれど。これが葉月の素だから。


「それはお前もだろ。空輝に見せたら喜ぶんじゃねぇの?」


「そんなことないでしょう。それより、さっさと行くわよ。そろそろ開店なんだから。葵、頑張ってね」


「うん」


 私との会話もそこそこに、葉月は山辺君を連れて行った。山辺君は何かを言いたげにこちらを見たが、葉月に邪魔をされ何も言えなかったようだ。気にはなったが、私もやることがあるのでそっちに集中することにした。


「これから開店です。それぞれの仕事お願いします」


 時間になり開店した。するとすぐにお客さんでいっぱいになってしまった。宣伝用のチラシを作ったのだが、そのモデルはもちろん葉月である。そしてもう1人……。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


「あ、あの、カッコいいですね」


「ありがとうございます。では、お席に案内いたしますね」


 そう。ミスターコンで優勝した山辺君である。葉月と山辺君のおかげで、開店直後から大繁盛である。


「こっち! アイスコーヒー!」


「こっちはケーキお願い!」


 開店直後から私たち裏方は大忙しだ。本当は交代制なのだが、裏方全員で回している。自分たちの教室を飲食スペースにし、隣の空き教室を調理場にしている。簡易的な水道場、カセットコンロなどたくさん設置してある。ちょっとした調理室状態だ。


「誰か氷お願い!」


「私が行くわ」


 私は教室を飛び出して調理室に向かう。さすがに氷は教室で保管できないので調理室の冷凍庫まで取りに行かないといけないのだ。


「これくらいか」


 氷を小さいクーラーボックスに入れ、私は教室に走って戻る。葉月と山辺君のおかげで大忙しだ。1日目でこれだとしんどいかもしれない。2日目大丈夫だろうか。


 この学校の文化祭は2日に渡って行われる。クラスも多く出し物も多いため、一般のお客さんもたくさん来る。ここを受験する子供の家族やここの卒業生も遊びに来るほどだ。それに学校側も力を入れているため、出し物や飾りにも力が入っている。

 

 また、どのクラスの企画がよかったかを決める投票も行われるため、みんなの士気も上がる。優勝したクラスには焼き肉がプレゼントされるのだから当たり前か。

 私は氷を運びながら色々な店を見る。お化け屋敷や絵の展示、それからたこ焼きにフライドポテト、ベビーカステラと本当お祭りに来ているようだ。


「さて、急ぐか」


 葉月と一緒に回る予定だったのだが、この忙しさで回れるのかと不安になってくる。まさかここまで大繁盛するとは……。


「ブラックだ」


 そう言っても仕方がないので私は戻ることにした。

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