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気になる過去 陽人side

 1人取り残された教室で、ボーッと水野が去った後を見ていた。


「何ボケーッと突っ立ってるの?」


 どれくらいボーッとしていたか分からないが、立花の声で我に返った。


「葵は? もう帰ったの?」


「あ、あぁ……」


「何もなかった?」


「別に。っていうか、お前クラブは?」


「まだあるわよ。ここには忘れ物取りに来ただけよ」


 そう言うと立花は、自分の席でゴソゴソ探し物を始めた。


「あ、あのさ、立花」


「何?」


「その、水野の過去について、お前何か知っているのか?」


 先ほどまで動いていた手が、俺の言葉でピタリと止まった。


「……なんでそんなこと聞くの? 葵に何か言われた? それとも、ただの興味本位?」


 いつもの立花とは違い、ものすごく真剣な声。自然と心臓の鼓動が速くなる。


「いや、何であいつが、風間先輩を露骨に避けているのか気になって……。後悔するって言われただけで、避けられたら、理由が気になると言うか、何と言うか……」


 いつもならスラスラ出てくる言葉さえも、なぜか詰まってしまう。聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。


「私からは話せない。葵が自分から話すまでは、私は何も言わない。でも、私から言えることはただ1つ」


 今まで俺に背を向けていた立花が、振り返って俺の目を見据えた。


「葵の過去について、詮索しないで。どんな理由があろうと、絶対に。聞くのも調べるのも、そういうことは一切ね。私から言えるのはこれだけ。じゃあ、また明日ね」


 立花は忠告を残し、水野と同様に教室を後にした。


「水野の過去に、一体何があったって言うんだ……」


 心の閉じようから、相当なことがあったはず。


「あいつは、俺に心を開いてくれていないのだろうか」


 俺はふと水野の席を見た。夕焼けで赤く染まった机には、もちろん水野の姿はない。

 俺はふと、水野が顔を赤くしたときのことを思い出す。


「何を考えているんだ、俺は。でもまぁ、知られたくない過去ぐらい1つや2つあるよな」


 俺にだって、暗い過去がないわけではない。初恋の葵のこと、空輝以外に話したのは水野が初めてだ。


「さてと、俺もクラブに……。って、ん?」


 俺は水野の机の下に見覚えのあるものが落ちているのを見つけた。


「大事な物なんじゃねぇのかよ」


 それはあいつが大事にしている、生徒手帳だった。


「届けてやるか」


 俺はそれを大事にしまい、教室を出た。

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