話し合いの場に
メリークリスマス!
今年ももう数えるほどとなりましたね。今年も忙しなく日々が過ぎていったように感じられます。
今年中に完成させたかったのですが、何分私生活が忙しく、また、無駄に話を付け加えてしまったため長くなってしまいました。いつ終わるとは言い切れませんが、最後まで書き上げることをお約束します。
1月から2月は、少々立て込んでしまいますので、投稿をお休みさせていただきます。落ち着き次第投稿を再開いたしますが、新生活シーズンということもあり、投稿時期が大幅にズレる可能性があることをご了承ください。投稿再開については、X(旧Twitter)【mijukunagisa】で報告させていただきますので、確認して頂けたら幸いです。
皆様、今年も私の未熟な作品にご興味を持っていただき、誠にありがとうございます。来年も精進して参りますので、何卒よろしくお願いいたします。
それからも私たちは、時間を見つけてはユウ君の家に訪ねていた。私は毎日のように、風間先輩は受験勉強の合間を見つけては私と一緒に、または1人だけで訪ねていた。風間先輩だけのときや、私と2人でいるときは少しずつ話してくれるようにはなったけれど、私にはなかなか接触してくれない。
気が付けば残暑は減り、秋風を感じられる日が増えてきた。毎日の服装に悩まされる頃、ある日風間先輩から連絡が入った。
『今日の放課後、何か用事がある? おばさんから2人で家に来てほしいって』
連絡が届いていたことに気が付いたのはその日の昼休憩。学校ではなるべく会わないようにメッセージを送ってきてくれたようだ。
「どうしたの?」
「何かあったのか?」
一緒にお昼を食べていた葉月と山辺君が反応する。一緒にお昼を食べる光景も見慣れたものだ。
「明日、叔母さんが私と風間先輩で家に来て欲しいって」
「何かあったのかしら」
「分からない。でも、2人で行ってみる」
「何かあったら言ってね。すぐに駆けつけるから」
「ありがとう」
急に改まって何かあったのだろうか。それも風間先輩も一緒にというのも気になる。
今日の授業は放課後のことで頭がいっぱいだった。
放課後、公園で待ち合わせた私たちは、一緒にユウ君の家に向かう。
風間先輩も、急に呼び出された理由は分かっていないようだった。
――ピンポーン
風間先輩が家のインターホンを鳴らすと、叔母さんが出て来た。
「え……?」
しかし、出て来たのは叔母さんだけではない。見慣れた人物も隣に立っていたのだ。
「お母さん……?」
「え?」
風間先輩は隣にいる人が気になっていたのだろう。私の言葉に驚きを隠せていない様子だった。
「ごめんね、葵」
「どうして? どうして、お母さんがここにいるの……?」
私は驚きを隠せなかった。私がここに通っていることは一度だってお母さんに言ったことはないし、バレないように通っていた。心配をかけたくなかったから。
……いや、私の自分勝手で自己中心的な行いを知られたくなかったのかもしれない。自己満足な行為だと、自覚していたのかもしれない。
「とりあえず、2人とも上がって。話はそれからよ」
私たちは叔母さんに仏間のある和室に案内された。和室にある仏壇にはユウ君とお父さんの写真が飾られてあった。こうやってユウ君の仏壇を見たのは、これが初めてかもしれない。風間先輩もここに案内されるのは初めてなのか、どこか落ち着きのない様子であった。
「2人とも、今日は急な呼び出しでごめんなさいね。小百合さん……いえ、葵ちゃんのお母さんが今日話をしようと提案してくれたの」
小百合とは私のお母さんの名前である。私のお母さんとユウ君のお母さんはお互いを名前で呼ぶほど親しかった。ユウ君を亡くしてからは、2人の交流は途絶えていたと思っていたが、まさかまだ連絡を取り合っていたとは思いもしなかった。
「葵が香織さんの家に何度も訪問していたのは知っていたわ。そして、風間流星君のことも教えてもらった。私たちはあの日から連絡を控えていたけれど、久しぶりに連絡をもらったときは驚いたわ。香織さんのご迷惑になっていないか心配したわ」
香織さんとは叔母さんの名前である。まさか叔母さんからお母さんに連絡がいくとは思わなかった。
「葵がここに通い出した理由は聞いていないの。直接私が聞きたくて。葵、どうしてここに通うようになったの?」
私がここに通い出した理由までは知らされていないようだ。お母さんは私の目をしっかり見つめる。心配しているような、不安そうなそんな目で見つめる。その視線に少々罪悪感がある。
私はチラッと風間先輩を見る。この場で一番戸惑っているのは風間先輩だ。案の定、私と目が合った風間先輩は不安そうだ。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「私もここに来るつもりなんてなかった。風間先輩が私を家に送って来てくれたときに、伯母さんと遭遇したのがきっかけ。風間先輩は私の高校の先輩であり、ユウ君の親友だった。私はユウ君のことがあって風間先輩を避けていたし、原因を作ったことも打ち明けなかった。でも、あの日伯母さんに一緒にいる理由を問い詰められたの。風間先輩にも知られてしまった以上、この状態に嫌気が差したの。だから、話がしたくて通い出した。私の自己満足で」
こうなった経緯と自己満足という答えも添えて説明をした。お母さんはそうと少し寂し気につぶいた。
「今度は私の番よ。どうしてお母さんがここにいるの?」
お母さんがここにいる理由が分からない。私のやってきたことが迷惑だったからお母さんを呼んだのか。だとしても、ここにはもう何度も通っている。今更、私のお母さんを呼んで止めさせようとするのもおかしいし、何より風間先輩と一緒に来させるのも変だ。
お母さんと伯母さんは顔を見合わせた。
「これ以上、私の心をかき乱さないでほしいの」
口を開いたのは伯母さんだった。私が聞いたのはお母さんだったのに、どうして伯母さんが答えるのか不思議だった。
「正直、私はあなたのことを許せないわ。あの猫のことも。あの猫と引き換えに、優月はいなくなった。原因を作ったのは、紛れもなくあなたなのよ」
少々震える声は、怒りなのか悲しみなのか分からない。私はスカートをギュッと握りしめながら伯母さんの言葉を受け止める。
「それだけじゃないわ。今日だって、小百合さんに来てもらったのは、兄さん……あなたのお父さんのことについても話したかったからよ」
急にお父さんの名前が出てきて私は混乱する。
どういうことだろうか。ユウ君の話のために呼ばれたと思っていたのに、どうしてお父さんの名前が出るのか私には分からなかった。
お母さんはずっと下を向いて黙ったままだし、風間先輩も何か思い当たる節があるのか、私と目を合わせようとしない。この場で何も知らないのは私だけだった。
「あなたの自己満足に付き合わされているのだから、こちらの都合にも合わせてもらうわよ」
そう言うと伯母さんは、私がお父さんが亡くなった日のことを話し始めた。




