夢遊酸欠病
酸欠状態で死なない私はごっこ遊びにいそしんでいる。
鳥のはばたく音だけがする。惑星みたいにうるさいばたばたは、空を飛ばない。
窓の外は透明、白もどきの色がゆらゆら。
雨が降ったらくらげの世話をしなくちゃ。
フロー。指先から目の奥まで、ぐんにゃり混じる。
雲の下には経過観察中の鳥がいる。
うろこが何枚かはがれた金魚の真似をしてエラ呼吸をする。とろんとろんと酸素じゃない要素が流れてくる。頭に、指先に、心臓の近くに。
まどろみのかわりに、ふんわりしたシフォンケーキをたらふく食べさせられる。お腹の真ん中よりちょっと下に沈む。浮かぶように。
深呼吸のように転がる、起きる。
ひざから下を浸す全能感で、私は踊る。足が千切れるまでは簡単だ。雑草たちによる伴奏は優雅なのに、蛾と花の合唱はとても聴けたものじゃない。
とん、たたん、とたたん、とん、たん。
それじゃあドレスアップしなくちゃ、となにかが言う。
赤ワインのかわりにりんごジュースを頭からかけられる。お祝い。歓迎せよ。
窓を開けてくらげとあいさつ。うがいは忘れずに。
夢は布団の中以外で見ましょう。たとえば月光の下で、サンドイッチを食べながら。やっぱり玉子がなくっちゃと、うさぎたちが唱和する。
なにか足りない。
口が開かないの。