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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
1章 地上の楽園の太陽
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7話 ラストリゾート

 本来、学生の本分である。勉学はどうだったというと。

 夏休み前の試験はかろうじて及第点であったとだけ言っておこう。


 さて、この夏は、2ヶ月の外洋クルーズが決まっていた。

 表向きは新造船の初公開記念として、(裏の目的は日本および周辺大陸の調査)一般人の乗船が許された。


 もちろん、僕と姫とチコメは決定だ。それでは少ないので、関係者家族、友人として、妹、ウェル、オシホ、テペヨロ(なぜか妹たちに気に入られている。荷物もちには最適だが)チャンティコが招待された。他の参加者も基本的には、研究者とその家族が同伴している。



 船は、学園近くの港に停泊しており、そこから乗船し島伝いにフィリピン沖に抜け黒潮に乗って日本近海に到着の予定である。途中、勢力圏内にあるフィリピン沖にある自然海岸の残る島を基地にし、補給地兼休憩地として利用する予定であった。



 大きさに余裕のある強襲揚陸型新造艦に乗り込み、姫たちと合流したとき、あこがれの風景が・・・・・



 白のワンピースに麦わら帽子の少女が・・・・・・

 この世界に洋服はない・・・・・・はずである。

「あら、着いたのね。」

「いらっしゃ~い」

 姫たちのお出迎えを受けた。

「素敵な服ねっ。どこで買ったの?どう着るの?なになに?」

 ウェルは、とてもうれしそうな顔をして話しかけた。

「コレは、ワンピースという服で、まだどこにも売ってませわ。オーダーメイドですのよ。」


 姫は、僕の情報を元に一番的確に、男心をつかむ方法を実践してきた。



「わぁー。わたしも着たい。ねえねえ、あとで着させて。」

 チャンティコは言った。


「大丈夫、人数分用意してあります。ヤゴロヲの分も用意してあります。」

「遠慮いたします。」

「あら残念。お似合いだと思いますよ?」



「冗談です。部屋に案内します。早く荷物をおいて、艦内食堂に集合してください。艦内の注意点などいろいろ説明がありますので。その前に、女性陣はわたくしの部屋に来ていただきます。わたくしの部屋は来賓室を当てられていますので。」



 そうして、食堂では、すばらしい光景が広がっていた。

 白い、とても白い。


 姫はロリ巨乳。

 妹は年相応の体形。うん、大きく育てよ。

 チャンティコは、普通のかわいい女の子だった。恋に落ちそう。

 チコメは、大きい、全体的に大きい。いろいろ大きい。

 ウェルは、手足が長くスタイルがいい。少女特有の透明感を漂わせており、一番目を引いた。


「みて、みて、どお、かわいい?」

 開口一番、ウェルは、ひらひらと裾をはためかせ、踊るように回って見せた。

 うお、見えそう。


「ほほう。馬子にも衣装ってか。」

「なによぉ、素直にかわいいって言いなさい。」

 妹は、不満そうに言い返した。


「ねえ、ねえ、ヤゴロヲはどうおもう?」

 ウェルが僕の腕を引っ張ったり、くっついたり。

 あったってる、あったってる。

「うん、とってもかわいい。」

「素直でよろしい。」


「こほん。そんなことより!!、航海のスケジュールを説明します。!!」

 姫はとても不満そう。というか怒ってる?


 こうして、われわれの航海は始まった。航海自体は順調で、もともと原子力船なので、常時30km/hくらいで巡航している。

 昼夜問わず航行すれば、3000kmはなれた、沖縄くらいまでは、4日あればついてしまう。

補給島までは、余裕をもって7日、3日休息し、そこから30日かけて陸沿いに日本海を一周して、再び補給島に戻って、母港へ帰港する。

 

 夏休みはほぼフルに使いきってしまう。




 問題は船酔い。それはもうのたうちまわって、吐きまくり。

「し、死ぬ。いっそ殺して・・・・・」

「うぇ~。もう出ないよ。」

「みんな食欲ある?」

「食いたいけど食えねえ。」

「みなさん、だらしないですね。船旅くらいで。」

「これ、普通の船じゃないし、快適にはいきませんよ。」

「まあまあ、そのうち慣れますので。」


 補給島に着くころにようやく慣れてきて、補給島のリゾートは本当に休息だったが、船酔いに打ちのめされて遊ぶどころではなかった。



 補給基地は基本的に野営地であったが、簡単な格納庫や、宿泊施設、補給部品の加工施設など、一通りの装備が用意されていた。


「やっと陸か。」

「ゆれないってすごい!!」

「やっと慣れてきたから、船の中でもよかったけどね。」

「陸だ。もう何もかもがなつかしい。」



 とりあえず、休息して、体力回復に努めた。ここに誰とも知れぬ影がこちらをのぞいているとも知らずに。





 休息中に、姫が不意に近づいてきた。

「ヤゴロヲさん。」

「はい。なんでしょう?」

 いつも、ヤゴロヲと呼び捨てなのに。こんな神妙なのは怒っているか、含みがあるか。


「おはなし、お聞かせ願えませんか?」

 やさしい顔で、そんな風に言われると怖い。でもいつもの威圧感が感じられない。

 雰囲気が若干”ほわん”としている。それにすこしやせた?着やせかな?


 基本的に世間話や、最近楽しかった事とか、なんでいまさらそんな事を聞くのだろうと思う内容で、ゆっくり首を、うん、うん、という感じで、振っていた。


「ありがとうございます。とても楽しかったです。またお話してくださいね。」


 と、めずらしい感じで去っていった。






 再び船にのり、いつもどおり、ウェルのボディタッチ激しい。

 とても姫が不機嫌。



 姫は不機嫌ながら仕事なので、調査を始めていった。

 海洋の生物の調査。もずく。わかめ。こんぶ。などの出汁が取れるものか、海産物しか僕には興味が無い。


 当然、表向きは、生物、鉱物ふくめ、海洋資源調査が目的で、調査員は誠実に仕事をしていった。

 陸に関しては、ドローンのような遠隔調査、ヘリコプターによる実見調査を経て、上陸するという慎重さで、推し進めていった。


 テペヨロはなぜ呼ばれていたかが、ここで分かった。

 ドローンの操縦がとてもうまい。もともとゲームでやっていた事が、大会に出られるほどうまかったため、今回の調査に参加となったのである。



 妹たちは研究に来たわけではないので、つまらなそうと言うか、やる事が無い。

 僕も半分遊びに来たみたいなもんなので、一緒に遊んでいる事が多く、コレも姫が不機嫌になる要因だった。



 日本以外にも、朝鮮半島、中国大陸も調査したが、先住民が点在しており、なかなか上陸が難しかった。

 そうして、調査を終え、補給島へ帰ってきた。



「やっとのびのびできるね!」

 ウェルはうれしそうだ。

 女の子たちはきゃっきゃ、うふふの展開で遊んでいる。

 ビーチには、色とりどりの水着を着た女の子たち。と男たち。



 基本的に軍隊だからね。マッチョにつぐマッチョ。女性隊員も居るがマッチョ。




 筋属バットがうなる。飛び散るプロテイン。超兄貴達の宴。

 うほっ。いい胸、いいけつ。

 さあ、別世界へにげだそう。




 そんな、見苦しい(とある趣味の人には理想郷)からぬけだし、姫と一緒に森の奥へ歩いていた。



「ヤゴロヲさま、久しぶりの休息ですね。今日は何をお話しましょうか?」

 雰囲気が違う。深窓の令嬢みたいだ。どういう戦略だ?

「ヤゴロヲ様のこと、もっと知りたい。どんなことを思って、どんなことが楽しくて、どんなことがすきで・・・・・・」

「いまさら・・・・・、なんで?」

「表面的な知識ではなくて、こころが知りたいのです。もっともっと。」



「そういえばヤゴロヲは?」

「そういえばいねえな。でもさっき姉ちゃん自身とどっかいってただろ。なんでわかんねんだよ。」



「は? わたしはここにいるわよ。何かの見間違い・・・・・・あ。」

「あの子が居るの?あの子ナニ考えてるのよ?」

「オシホ、どこに行ったかわかる?」


「ああ、アッチの森の方だが、危なそうだから一緒に行くか?」

「なに、なに、お兄ちゃんなんかあったの?」

「ヤゴロヲそういえばいないねぇ。探しに行く?」

「ヤゴロヲ君、女の妖怪に連れて行かれた?それは許せないわ。」


「早く追いましょう。」

 姫たちは、森の中へ入っていった。

 そんな中、チコメはマイペースだったので取り残されていた。





「ヤゴロヲさま。なんだか暗くなってきました・・・・・・。お傍によってもよろしいですか?」

 いつもなら、そんな事聞かないし、強引にひざに乗ってきたりだというのに。今日はどうしたって言うんだ?

「ガサガサ」

「きゃっ!!」

 不意に、音がして、姫に抱きつかれた。

 顔と顔が近い。姫の顔が紅潮して妙に色っぽい。

「ヤゴロヲさま。わたくし、このまま・・・・・・」



 そのとき。


「あんたら!!!!ナニやってんのよ!!!離れなさいよ!!」


 そこには、水着に上着を羽織った姫がいた。


「お姉さま。そんな血相変えて、いかがしましたか?」

「いががしましたか?じゃ無いわ。あんたなんでここに居るの!?」

「だって、お姉さまの意中の殿方がどんな方か知りたいではないですか?」

「べっべべつに意中なんかじゃ無いんだからね!?そいつはヒルメの奴隷なんだからね!!」

「奴隷だったのか?」


「そうじゃないのか?」

オシホは口を挟んだ。というか、そういう扱いだったのか。


「じゃあ、この娘はだれ。」


「ご質問にお答えしましょう。私はティカル・キン・ワカメ、第8王女です。」


「ワカメちゃん?、ワカメならたくさんとったよ。って、姫とそっくりだよ。」

 思わず。日曜アニメを思い出してしまったが、ほんとそっくり。双子か?と思ったが、第8王女では、年齢が違いそう。確かにちょっと細いし、胸が小さい。


「ヤゴロヲ様、ワカメと呼んで下さるんですね。わたくしうれしい。」

 といいながら、抱きついてきた。


「なに言ってんのよ!!ヤゴロヲはヒルメのモノなんだからね!!さっさとどきなさいよ!!」


「ささっ、ヤゴロヲ様、ここでは人目が多すぎます。もっと人気の無いところへ移動しましょ。」


 と、もう一人の姫に手を引かれ、というか僕もとりあえず逃げないと命に係わるので、森の奥に消えていった。



「まちなさい!!!!さあ、さっさと追うわよ!!」

「どこへ行くっていうんだ!!遭難しちまうぞ!!なにかないか?」




 すっかり森の奥まで来てしまった。

 ここはどこだろう?結構まずいんじゃないだろうか?

 一応まっすぐ来たつもりだが、森の出口はどこだろう?



「参りましたわ、どうやって帰りましょう?」

「えっっ!!分からないの!?真面目に遭難じゃない。何か目印とか、発信機とかないの?」

「そんな準備必要ないと思っていましたので。でも居場所を告げる発信機はあったはずなので、助けは来ると思います。ほらコレを引っ張れば。」



「ヤゴロヲー、ワカメー、居るなら返事しなさい!!」

 遠くからヒルメの声が聞こえる。とりあえず遭難にはならなさそうだが、後が怖い。

 とりあえず声のする方に向かってみると、とある異物を発見した。



 それは、小型の重機というべきか宇宙服というか、全長が4mくらいでキャタピラがついていて、上半身に人のようにアームがついている。ガンタンクみたいだがずいぶん小さい。



 それが数体転がっていた。一応屋根のようなものが設けられ、雨風はしのげるようになっていた。

 コクピットらしきものが開いていたが、ずいぶん小さい。身長120cmくらいの人が入るくらいで、ワカメ姫でも入るかどうか分からない大きさだった。


 そこには、しばらく生活したような形跡があるが、人影は無かった。



 少し離れたところに墓のようなものがあり、小さなものと5mくらいの大きなものがあった。


 こんなもの想像できない。それに人型である必要がない。


「なんだこれは?」

 オシホたちが追いついた。そして言葉を放った。


 まったく同じ感想だ。

「これはなんですの?」

ヒルメ姫は、一体何なのか興味が沸いた様である。

「周囲を調べなさい。何らかの痕跡があるかもしれません。オシホとシシュチルは浜に戻って、応援を呼びなさい。」


「テペヨロとウェルは周辺に異常がないか確認してください。」

「わたくしとワカメ、ヤゴロヲ、チャンティコ、はこの集落を探索。」



「ヤゴロヲ、コレに何か見覚えはありませんか?」

 僕には、ロボットに見える。でもこんなもの製作可能なのか?


「・・・・・見覚えは無いですが、ロボットですかね。人がのる機動兵器のような。」

「こんなものが、人類で製作可能でしょうか?」


「可能でしょうけど、合理的でないと思います。でもコレを必要とする種族。相対する生物がこのサイズのため、対応するために必要だったとか。」

「やはり、人類とは異なるものが残したと考えるべきでしょうか?」

「そうでしょうね。でもこの大きさ、姫なら入りそうですよ?」


「バカにしないで。いくら小さいからといってこんな中に入れるはずが・・・」

「ずるっ、ガタッ、あっ!!」


 姫は意外とするっと入ってしまった。

「サイズが違っても意外と入るものですね、お姉さま。」

「うるさい!!」

「私でも入るのかしら。えいっ、足が入らない。足が長いのが災いしましたわ。」

「・・・どうせ幼児体形ですよ。」

 ヒルメ姫はしょんぼりした。確かにワカメ姫は身長も少し高いようだ。大丈夫胸のサイズは勝っている。


「どうせ動きませんよ。ためしに起動方法を探しましょう。さあ動いてみなさい。」



「音声認識、入力言語を古代語に設定、イニシャライズ、生体情報を入力してください」

 ロボットが流暢にしゃべる。




「え、なに、しゃべったわ。それになにしろって!?」

「ロボットモノによくある、初期設定か?」

「とりあえず、従っていきましょう。生体情報とは?」

「操縦者の意思を読み取るため、脳の入出力機構を擬似構築するための遺伝情報が必要です。」


「粘膜とか?髪とか?」



「早急に構築するには、生体組織が多いほうが効率的です。」

 ロボットの癖に注文が多い。



「とりあえず。粘膜でお願いします。死んだ組織の髪よりはいいでしょう。」

「ちょっと少ないかもしれないから、血とか?ちょうど月の物だし結構でるし。」


「それはちょっと、倫理的に問題があるんじゃ・・・」

「しょうがないわね。」

 姫自身が言うんだったら、下ネタでも逆らえません。



「常に持ち歩いている自決用のナイフで・・・ 痛っ!!」


「初期認証まで、3600秒。」

「電力が足りません。ソーラーセイルを展開。」





「きゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 そこにウェルの悲鳴が、テペヨロも一目散に逃げてきていた。



 その後ろには、4~5mほどの巨人が追いかけてきていた。

 しかしその姿は、すでに満身創痍の姿をしていた。

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