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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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56旧世界の終わり

 海原の根の国は和睦を申し入れ、フツとカズチはアクロポリスの王宮内へ入る。


 テヲとイナンダ、カズチとフツの再会は最悪の会見。


「久しいな小僧。貴殿が王になるとは。」


「何年ぶりでしょうか。私はいまだに身震いします。」



 フツは講和条件を連ねた書状を持ち、海原の根の国には受け入れがたい条文がある。

 国外への退去、軍事技術の放棄、もちろんレヴィアタンの譲渡。




「国を明け渡す代わりに、条件があります。」


「この期に及んで要求があるというのか?」


「船を頂きたい。遺跡の船にも劣らない船。永久に海を渡る事ができるような。」


「そんな破格な要求が通るとでも思っているのか?」


「遺跡の仕掛けを解く方法は教えられません。」


「ここで荒事にでてもよいのだが?」


「遺跡に太陽炉の燃料を大量に保管しています。それを開放してもよいのですが?」


「…本国に掛け合おう。」



 海原の根の国と天の根の国の一次交渉はこうして幕を閉じた。



 サルベージ船はすでにアクロポリス沖に停泊している。浮きドックに門型クレーンが設置されている。

 上陸部隊の重機(パワーローダー)が待機している。

 船はすべて軍艦で、空母(レールガンとレーザー砲門でかためていて、戦闘力は戦艦だが空母)、巡洋艦、駆逐艦、高速艦、潜水艦、補給艦、強襲揚陸艦、飛行艇、の空母打撃群1ユニットであり、これらの次の任務はピラニヒラのベヒモスまでレヴィアタンを輸送するため待機している。

 ナイルを下ったホバークラフトは、強襲揚陸艦に合流して同じ任務に就く。征服部隊とは別の人員の入れ替えが行われる。

 陸戦部隊と航空部隊は撤収、カズチ達は空軍基地より天の根の国に戻る。



 第二次交渉では、若干の譲渡をが認められ、国内に留まれる人の条件が緩和され、王族などの責任を免れない人々へは船が準備される事となった。


 西サハラ地方には、海をさまよっていた人々を救助した避難所が開設されており、その対応が問題となっていた。

 難民には、海原の根の国由来のムー人だけでなく、様々な出身地、人種がいた。その帰還に船を用意する案もあったので、海原の根の国まで送り届けたのち、海原の根の国に譲渡する計画が立てられた。


 輸送艦をベースに客船仕立て2500人を収容可能な一つの町を船の上に作った。



 帰還事業には現地での対応のため、電気文明に頼らなくても生活していた、ミミたちアークエンジェルスが派遣される。非戦闘事業は女性の任務に適していると判断された。


 ククは一足先に技術解析事業のため講和が成立したのち、海原の根の国入りが予定されている。






 講和が成立しテヲたちが国外退去する前から、レヴィアタンのサルベージが開始された。

 遺構の土が除かれ、仕掛けが解かれ、潜水艦が姿を現す。


 大型の潜水艦は表面のチタンはの酸化層が腐食を防いでいる。チタン以外の装甲のある部分は、何らかの理由で破損したのだろう。再びチタン板をゾルゲル処理(酸化チタン層のセラミック化、車のガラスコーティング、アルミなどと同じ)、プライマー、リベット打ち、シーリング、トップコートを行えば機能回復するだろう。


 内部は機能を損なっていると思われたが、トリウム原子炉は最新型に改修されていた。もともと、トリウム溶融塩増殖炉は、燃料供給がなくても永続的に運用できる。そしてメルトダウンがない。燃料も豊富にありインドではすでに商用利用されている。

 そして、プルトニウムやほかの核種も燃料にして、消費が可能。そういう点では、現代世界は半永久的な燃料を手に入れている。戦術核弾頭はプルトニウムである。

 小型化が可能なので原子力航空機の試験機がアメリカで飛行している。半永久的に空を飛ばす計画だったらしい。



 マイクロマシンのチャンバーは生きていた。電子機器はほぼ壊滅していたが、チャンバー内に基板がいくらか投入されていて修復され、ASSY交換をして動力制御盤が維持されている。


 ククは調査団の一員として、垂直離着陸機でアクロポリス入りした。

 テヲは同じアクロポリスにいるが、王宮に幽閉されている王族とムー一族は隔離されている。


 ククはテヲが王としてカズチと交渉していると知ってはいるが、未だに信じられない。ただ、調査しているとテヲの持っていた物品が発掘されるので、テヲの出自はここだと思い知らされる。


 会ってみたいと思っても叶わない。



 解析調査よりもサルベージが目的だったので、さっさと掘り出されサルベージ船に積み込まれ、解体が始まった。核融合トーラス以外に用はない。サルベージ船と護衛の船団は早々に旅立っていった。船団がピラニヒラにつく頃にジズとヒルメは船団の空母に着陸する予定である。



 調査団の真の目的は、アクロポリスの戦力解体である。

 空気式回路や、圧力を動力にした機械は解析すればするほど不思議であった。

 調査団の団長、ハーラーはとても気さくなひとで、この人に聞けば大体のことは答えてくれる。この人にして、不可解というのだからかなり特殊に発達しているのだろう。




 戦後復興や、産業の活性化を地中海世界にもたらす事で、天の根の国がネフェリムと戦う基盤を固める。そのために帰還事業を成功させなければならない。

 西サハラの難民キャンプは解体され、帰還船へ乗船する。一般人や海原の根の国人(ムー人)以外、また王族貴族で恭順の意を示したものは自由が約束されるが、それ以外は拘束対象。


 老若男女、羽振りのいいもの、貧しいもの、親のない子、姉弟のような他人のような二人。様々な人々が船に乗り込む。船には農場や家畜が積み込まれ、自給が可能になっていて、食事施設、娯楽施設、工業施設、当然客室がある。



 西サハラからの帰還船が到着し、それは転じて海原の根の国の民を載せる移民船となる。





 テヲ達、海原の根の国の民が船に荷物を積み込まれ、とうとう人が乗り込む。周囲は厳重に警備され、逃げられないし襲撃もできない。


 人々は、住み慣れた故郷を離れる寂しさ、また悔しさを顔にしていた。


「テヲ、どこに行くつもり?」

 セセリが尋ねる。

「西か北か、北には理想郷(アバロン)、ここから西に行くと大陸があると聞いた。」


「どちらに行くつもり?」


「奴らとは海を隔てた方がいい、西が良いかもしれない。ただ危険な航路だ。北なら陸沿いで行ける。君ならどうする?」


「わたしはテヲと一緒ならどこでも、地獄の底でも。」


「ありがとう。地獄も楽園にしてみせるよ。」


 セセリはすすり泣いたが、顔を隠した。

 サーラ、国に帰る事もできたが、テヲについていく。そう決めた。

 ニーナは国に帰る。子供は取り上げられ、身一つになった。







 そんなある日のこと、月の山ルヴェンゾリ周辺は地震が相次いでいた。もともと火山帯なので地震はしょっちゅうなので、気にしたものではないと思われていた。


 しかし、それは最悪の結果をもたらした。


 ルヴェンゾリは音を立て、富士山のような形の山頂は咆哮をあげた。

 噴煙が上がった、そして山頂がはじけた。山は崩れ、溶岩が流れ出す。セキリム湖はせき止められ、溶岩は湖をエドワード湖とアルバート湖の二つに分けた。



 紀元前6000年ごろ、ルヴェンゾリ周辺に噴火があった。そしてヴィクトリア湖に迫る溶岩流がながれた。その対岸に同時代の遺跡(ナクル文明)がある。同様に対となる遺跡(インシャゴ文明)が被害にあったと思われる。



 湖を隔てた城塞都市シーバは溶岩にのまれ、宇宙エレベーターの根本が溶岩に焼かれた。

 支えを失った宇宙エレベーターは、調和を失った。


 宇宙エレベーター自体はとても軽い、たとえ地上に到達したとしても被害は少ない。

 それが衛星軌道上だとどうだろう。弦は荒れ狂い、ターミナルは揺れ動く。宇宙側の先は遠心力により飛ばされる。衛星軌道上のコロニーは巻き添えを避けるため区画をパージし、それが同時に救難船になる。それはムサシを格納する区画でも同じである。


 ジズはコロニーで降下の準備をしていた。またヒルメも待機していた。ヒルメはスクランブル出動して、ジズを地上に降ろそうとあがいていた。


 ジズが宇宙空間に放り出され、大気圏に突入した。ただ突入角度を保っているか、確認できない。





 通信がたたれ、天の根の国が存在しているか、海原の根の国にいる者には確かめる手段がない。


 クク達は文明から取り残された。


 すでに旅立ったサルベージ船も衛星の補助なくて航行ができないだろう。



 取り残された人たちは、独自に生きていくしかない。海原の根の国の民同様に。



 海原の根の国の民がもしアメリカ大陸にたどり着いていたらの話をしよう。

 このころ、氷河がまだのこっていた。ちょくちょく崩壊していたが、平野部に人が住めただろう。


 今から7600年前、地中海と黒海はつながっていなかったが、つながった事で周辺に洪水被害があった。同時期に北アメリカ大陸の氷河が崩壊している。そのためこれ以降、間氷期になり気温が低下し、サハラ砂漠が広がるきっかけになった。


 氷河崩壊してミシシッピ川を下った氷と水は、大西洋を越えて西アフリカや地中海に津波が到達したことが原因でないかとも思われるが定かではない。


 メソポタミアのあったペルシャ湾はこのころ水位が低下し平野が広がっていた。

 チグリス、ユーフラテスは真水をはこび、よい農地となっていただろう。







 ククは帰還事業指導の中、ある二人の姉弟らしき男女を見つけ、はっとする。


「あなたは?テヲ?」


「あんただれだい?だいたいテヲって、トトリもおんなじこと言うけど?」




「マイキ?どうしたの?」


「トトリ、それがこの姉ちゃんが、テヲってのとおいらを見まちがえたみたいでよ。」




「あれ?真っ白な肌のあなたは……、テヲの聞かせてくれた魔女はあなたなのですか?」


「そうね、魔女かもね。そうあなたはテヲを知っているの。」


「お話をしましょう。私とテヲがどんな旅をしたかを。」

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