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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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54巨人の闘い

 ゲーム(アナログを含む)を含め娯楽は戦争の代替品、ゲームに中毒性があるのは戦争に中毒性があるのと同じで、テレビゲームだからといって特別に中毒性があるのでなく、勝ち負けあるものに対して生き物は惹かれる。

 ゲームが下手な奴はたいがい仕事もできないし、批判するのは思考が浅い。ゲームする前から、定石調べたり、パスの練習したり、相手の出方を読んだりしないで、簡単操作で最大効力という勝負にならない理論を持ってくるからである。


 筋書きのないドラマが人間は好きであり、次の展開を考えるのが好きであり、それは人間に限らず生きるもの全てが持つ、未経験の状況を生き残るために必要な本能である。


 戦争は問題を解決する一種の手段、殺し合い以外にも解決法はある。

 クラウゼヴィッツの戦争論にもある様に、秩序と想定から外れた不確定を解決するための手段は、逃避、交渉、技術革新、制度、とあるが、原初よりある解決方法は戦争、闘争である。








 スーサの軍はジブラルタル海峡を挟み陣を敷いていた。


 カタパルトが並ぶ。壮観な光景で中世の城塞攻めなら無双できただろう。

 しかしながら、それは城壁に囲まれ、平原にて白兵戦が尊ばれた世界では攻める場所と人がはっきりしている場合に限られる。

 現代戦の世界では、大国軍隊は超性能で基地設備単位の攻撃しかできず、市街戦のように細かいモザイク状の戦況になってしまった現状では決め手に欠ける。


 古代においてはまだまだ戦略というものが練られていないため、人のいない地域で集団形態によるぶつかり合いが主体である。人もまばらで、全人口(宇宙コロニーを除く)は100万人前後であろう。地中海沿岸は乾燥しているため、森もあまりない。


 スーサ軍とカズチ軍は、生真面目に真正面から対峙していた。

 海側には、大砲を側面に抱えた軍艦と、レールガンを正面に構えたホバークラフトが海戦の時を待っていた。


 軍艦なんて、対艦ミサイルの餌食であろうが、フツ軍の方に空母と飛行艇が割り当てられて、カズチ軍に航空戦力は、輸送機ヘリやエクステンションアームズの飛行ユニットくらいしかない。それであっても空からの攻撃は、圧倒的有利になる。



 夜が明けた時、開戦のカタパルトが発射された。

 一斉投射された、質量兵器は平原のカズチ軍へ襲い掛かる。


 カズチ軍はすぐさま回避行動を行う。誘導装置のない岩や鉄の塊なので、メジェド様ヘッドに組み込まれたコンピューターで軌道計算は容易であった。



 沿岸のホバークラフトからレールガンが投射され、カタパルトを潰していく。


 沿岸からほど近いカタパルトは破壊したが、それを見越したのか内陸部のカタパルトは健在だった。むしろ内陸の方が多く設置されていた。


 カタパルトからの2射目がその証拠に、飛距離が長く強力な砲弾が送り込まれた。

 砲弾には火薬が詰められ、殺傷能力が高められていた。


 着弾は、後方に下がったカズチ軍に直撃した。それからは射程を別けカズチ軍を平原中央と本陣に分断するよう、投石と砲弾が混合して投射された。


 分断を受けた中原のスフィンクスは逃げ惑う。これを支援するため後衛から迎撃弾(レールガン)が発射された。


 スフィンクスは自動で投射物(主に石)をくぐり抜けて、敵陣に食い込んでいく。そのとき、敵陣から小さな飛来物があった。


 潜んでいたスーサ軍のスナイパーがスフィンクスライダーに射撃を当てた。さすがに鉛弾は応えたため、スフィンクスから落馬?した。


 しかし、防弾仕様のため致命傷には至らなかった。


 命中を避けたスフィンクスライダーたちは、敵陣に切り込むため、飛行ユニットを展開する。試験機と異なり厳つい仕様となっており、女性でなく男性でも(それでも小柄な)扱えるよう、予備電源はスフィンクスから空間伝送で供給されるため、長時間ハイパワーの機動を可能にした。


 女性はカズチ軍には参加していない。理由は単純襲われるから、いろんな意味で。陸軍では筋力で仕事の差をつけられない機械装置や軽作業が割り当てられない。したがって、海と空の仕事か後方に限られる。



 メジェド様ヘッドが狙撃手をサーチして、レーザーライフルで狙い撃つ。


 狙撃手を沈黙させ、本陣へ切り込むが、銃弾の嵐が待っていた。


 いくら防弾仕様でも耐えきれず、撃墜されていく。



 海側においては、ホバークラフトの高機動に対応できない点と射程の違いにより、軍艦はレールガンの餌食となった。

 順調にジブラルタル海峡を回り込むと、そこには長距離射程のカタパルトからの砲弾が狙いをつけていた。


 初めの一隻が砲弾により撃沈され、以降のホバークラフトからレールガンの一斉射撃をするがカタパルトには届かない。

 ホバークラフトは上陸に移れず、挟み撃ちで一網打尽の作戦が取れなかった。



 一時、膠着状態に陥ったため、カズチは高高度からの敵陣降下を指示する。輸送機には強襲用エクステンションアームズを装備した特殊部隊が搭乗する。総勢10名、その中にカズチもいた。


 カズチは静かに輸送用VTOL機に乗り込む。ティルトローターが回転数を上げ上空に昇っていく。


 輸送機を援護するため、迎撃ミサイルが発射される。敵のカタパルトでも鉄は感知が容易である。逆に石は光学解析なので当てにくい。しかし射程が短いため上空に揚がってしまいさえすれば問題にならない。


 スーサは陣地の上でちょこまかと飛び回る、ハエに業を煮やしていた。銃弾が効かない、カタパルトは射程が合わないし真上には打てない。卑怯だ下りてこいと言うが聞くはずもない。


 スーサが空を見上げていると、黒い影が近づいてくる。



 カズチが敵陣上空に到達した。部隊は降下用にしつらえた盾に寝そべり、降下に備える。安全フックを掛け、合図とともにガイドレールを下り、後方ハッチから機外へ放出される。その姿はサーフィンボードで波を待つ様だ。


 最後にカズチがひときわ大きい盾を置き、エクステンションアームズのハードポイントへの接合を確認し、フックを掛ける。

 降下の合図があり、レールを下りハッチを離れたところで安全フックが外れ、空のサーフィンに漕ぎ出す。


 スカイサーファー達は、地上に一直線に向かう。着陸が近くなると角度を調整し翼を広げ、ジェットエンジンに点火する。


 ライフルを構え、敵陣に照射した。



 上空から強襲を受けたスーサ軍は、取り乱し銃を上に撃つ。簡単に当たりはしない。そして、それがあまりに一斉射撃だったので、撃った弾がそのまま落ちてきて、銃弾の雨を降らせた。自分たちの撃った弾で死傷者がでた。


 混乱の最中、スーサはアームを展開し、マントを羽織り剣を構えた。


 そこに、天の根の国の兵士がレーザーライフルで打ち込むが、マントにさえぎられた。

 先のワカヒコの件があったので、アルミ、銅、金の箔を用いた反射材を用いた防具を用意していた。高価なので数は無い。


 その姿にカズチは確信した。これはこの軍の大将だと。


 カズチは、部下に援護を頼み、スーサの前に下りた。


「われは、天の根の堅巣国の将軍、カズチ、汝、この軍の大将とお見受けするが、名をなんと申される。」


「よくも俺の前に易々としゃしゃり出て来やがったな。俺が海原の根の堅洲国のポセイダル・スーサと知ってのことか?」


「貴公がかの国の王のスーサであらせられるか。」


「てめえ、俺に逆らって生きていられると思うなよ。のこのこ馳せ参じた褒美だ。その首打ち取って、ライオンのエサにしてくれる。」


「穏やかではないな、当方とて首は取られたくない。しかし私の首を取ったところで勝敗は決している。周りを見ろ。」


 周辺は特殊部隊による殲滅戦が繰り広げられ、カタパルトの無効化をオペレーターを狙っていた。投射数が減り、スフィンクスライダーが攻め入るのも時間の問題だ。


「俺は負けん!!軍は負けても俺は勝つ!!」


 スーサは天叢雲剣でカズチを指し、特製のアームのトルクを見せつけた。


「その剣は、我が国から奪った機動兵器の武装だな。よくもでたらめな使い方をする。」


 スーサとカズチ。2mをこす巨人が対峙する。方やコナン・ザ・グレート、方やブレイドの映画に出てくるような体系と肌色。


「では、その流儀に付き合うとしよう。」

 カズチは盾より、鞘をとり剣を抜く。その剣は片刃で湾曲している。刀身は鉄だが刃はタングステンカーバイド。佐々木小次郎の物干し竿のように長い日本刀だった。それでもカズチにとっては短く見える。


「故合って、切れ味の良い剣を知り、その扱いを知った。なかなかの業物。貴公に使うに相応しかろう。」


「生意気な!!俺が勝ったらそいつをもらうぞ!!」


 スーサがバスターソード(天叢雲剣)を振り上げ叩きつける。

 カズチはシャーと音を立てる刀の側面で受け流す。

 すぐさまスーサは方向を変え、縦切りに移る。

 カズチがバックステップでよけスーサに上段から切り込む。

 マントが翻り、切っ先が逸れる。


「なかなかやるじゃねえか。」


「貴公もその重い装備でよく動く。」


「お前みてえなヒョロ長とは違うんだよ!」

 スーサがすかさず剣を振りかぶる。


 まともに受けては刀が持たぬと体をずらしながら、刀身でいなす。


 二人は全く違うスタイルで、互角に渡り合っている。


「おめえ、あきらめたのか?」


 カズチは、刀を鞘に納め中腰で構えた。


「貴公はこの技により絶命する。」


「剣を収めてどうやって切るってんだ。ふざけんな!」

 スーサは天叢雲剣を大振りしてカズチに叩きつける。


 瞬間、スーサの胴が空きカズチがスーサの背後にいた。


「貴様、何をした……ぐふっ」


 スーサの胴は二つに割れた。アームは硬度がある素材だが。

 スーサの巨漢が音を立てて崩れ去る。


「貴公の命運もここまでだ。戦いもじきに終わる。」


 カズチは静かに刀を鞘に納めた。



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