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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
1章 地上の楽園の太陽
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6話 旅に出よう

国家権力は恐ろしい。



半年の間に、軍艦が四隻造られた。

 強襲揚陸艦 1隻 駆逐艦型 2隻、高速艦 1隻

情報があれば、改修で即時対応する。さすが国家権力、圧倒的でない?

既存艦の改修らしいので、早かった。新造でも焼き直しになるだけで1年もあれば出来るらしい。


 潜水艦と空母、ミサイルは、未知の産物なので、あと3年はかかるらしい。



 核融合炉も早速2方式追加で、というかトカマクとレーザーが優先になり、レーザー核融合は、軍用レーザーと制御システムを応用し、半年で爆縮に成功してしまった。超すごい技術力というか、レーザー力。


 現代より断然早い。というより、レーザーパワーが強すぎて、あまり気にしなくても爆縮出来てしまう。いきなり小型だし。ただし、核融合で得られる出力より、コストが上回っている。


 軍用目的で、超高速飛行とか、爆発力を使う用途なら十分効果的ではあるのだが、そんな力を使う場面がない。まだまだ実用には程遠い。






 ある程度の戦力が整えられたので、来月の7月から2ヶ月の外洋クルーズが決まっていた。

 表向きは新造船の初公開記念として、(裏の目的は日本および周辺大陸の調査)一般人の乗船が許された。

 もちろん、僕と姫とチコメは決定だ。それでは少ないので、関係者家族、友人として、妹、ウェル、オシホ、他の参加者も基本的には、研究者とその家族が同伴する。



 ”旅行”の準備と、姫に生ものを食べさせる約束をしていたので、仕入れも兼ねて遠出することにした。


 手荷物は、基本的に一人スーツケース一つとダンボール箱(20kgくらい入る)4個が許される。

 私物でも、研究に必要な機材などは持ち込みが許される。まあ一般人には無いんですけどね。


 とりあえず、朝一で漁港の市場に寄る。その後ショッピングモール、ホームセンター、薬局などに寄る予定で、休日の1日使って買い物して、食材の仕込みをして、その翌日にパーティを開こうという予定でいる。



 朝から忙しい、だいたい3時ぐらいに起きた。包丁とクーラーボックスを持って、車で出発。

 朝早くて、チコメはと妹は起きてこない。



「ふぁ~、いくら新鮮な食材がほしいからって、市場まで行く必要あるの?」

 助手席のウェルは、眠たそうに言った。

「冷凍保存する前に欲しいんだ。生で食べる事を想定していないから、冷凍すると組織が壊れてしまう。」

 当然、現代日本では、冷凍してもうまさを保つため、魚を締めたりして鮮度を保つが、この世界では、食すときはたいてい加熱するため、たいした処理をしていない。

「本当に生で食べるのですか?」

 姫は疑いの目で僕を見ている。

「大丈夫ですよ。だから朝早く出かけてるじゃないですか。」


 そして僕とウェルと姫で暗い夜道を走ること2時間、太平洋側の漁港に到着。


 朝5時でも市場は騒がしい。そろそろ競りが終わり、市場に店をだす仲買業者が準備をしだす。

 別に競りに参加してもいいかもしれないが、市場は殺気だっているので、一般人は小売されているものを買ったほうが、無難だろう。


 市場の店をていねいに探す。やはりこういうのは、目で見て確かめないと。

「そこの、お嬢ちゃんたち、珍しいな。こんなべっぴんさん俺と・・・・・!!」

 市場のおっちゃんが声をかける。しかし次の瞬間、それがヒルメ姫であると判ると硬直してしまった。無理も無い。だって姫だもの。

「この市場で、質のいい魚介類を置いている店はありますか?」

姫は、店主に尋ねる。

「へえ。この市場のもんはすべて新鮮で質がいいです。うちのお勧めは、この鯛なんてお勧めです。」

「鯛か。鯛も刺身で食べると食感がいい。」

「兄さん。刺身ってなんだい?」

「ああ。刺身は、血抜きした魚を身と骨を離して3枚におろして、生のまま一口大の大きさに切りそろえて、わさび醤油をつけて食べる。コレが旨い。」


「ええっ!!兄さん。生で食べるだって!!それはやめといた方がいいぞ。死んじまうぞ。」

「いえいえ、だから取れたてを買いに来たんです。それにわさびがあれば殺菌してくれるので、大丈夫です。」

「だいたいわさびって何だい?」

 あ、わさび無いのか。

「いや、気にしないでください。つーんと辛いものなんですけど、北方のものなんで、ここいらでは、馴染みないと思います。」

「ふーん。魚を生でたべるとはねぇ。なかなか肝が据わってるな。ほかに欲しいもんはあるかい?」

「かつおとかまぐろ、えび、かに、貝類なんかはあります?」

「ああ、あるよ。サバなんか結構いいぞ。貝類は、もうちょっと向こういくといいのが置いてる店がある。そのへんは、そっちで買ったほうがいいぞ。」

「ありがとう。じゃあ、そのかつお1本、マグロは切り身でもらえます?」

「あいよ。そこのべっぴんさんに免じて、まけてやるよ!」

「ありがとうございます。わたくしからもお礼申し上げます。」

「そんな滅相もございません。私の店で買い物して頂けるなんて、恐れ多い。」

 姫がしゃべるといろいろ面倒だ。さっさと立ち去ろう。

 他にホタテとかアサリとかエビを仕入れた。



 鮎とかニジマスとか淡水の魚で塩焼きにするとおいしいのに、いかんせん地域性として清流が無いので仕入れることが出来なかった。おいしいのになあ。



 市場の食堂で、朝食をとったが、やはり姫は目立つので、いろいろいい待遇を受けた。

「こんな汚いところに来てくださるなんて・・・・・・」と、みな口々に言う。連れて来てしまったのは僕だが。

 市場のめしは旨い。そしてボリュームがある。何より安い。この辺は現代と同じ。



 そして、9時ごろ帰宅。とりあえず、保存処置をして冷蔵庫に食材を入れる。

 そのころには、みんな起きて来ていて、仕入れした魚介類を観察しながら、ちょっと休憩。


 午前中は、ご近所の薬局や雑貨店で揃えられるものを買い。午後からショッピングモールで、まとめて買い物する。


 午後、早めの昼食をとり、僕、姫、妹、オシホ、ウェル、チコメ、寮母さんと出発。

 僕やオシホは必要なものを揃えにいったが、女性陣が所々留まる。確かに欲しいものがあって、他人とかぶるのは嫌なのは分かるが、駆け引きが長い。

 水着選びもけん制しあっていた。

「あ、コレかわいい、あれもいいよね。」

 いいから早く決めろよ。

「うーん。コレどう?」



 そんななか、やはり水着選びに悩んでいる女がいた。

「水着買っても、プールか海に誘うのはちょっと勇気が・・・・・・」

 同じショッピングモール内で水着を選んでいたのは、チャンティコだった。

「おーい、チャンティコ。」

「あれヤゴロヲ君?なんで女性用水着の売り場にいるの?」

「妹たちの買い物に付き合っているんだよ。」

「へえ、妹さんいっぱいいるの?」

「いや妹は一人だが、他にいろいろあるんだよ。」

「ふーん。あ、そうだ、この水着、わたしに似合うかな?」

 白のビキニで、この娘のふわっとした、安心できる雰囲気に合いそう。

「ああ、似合うと思うよ。」

「じゃあ、ちょっと試着してみるから待ってって。」

 そうして、しばらくすると、姫が試着室から頭を出して話しかけた。

「ヤゴロヲ、あの女だれ?」

「同級生の娘だよ。」

「なに、同級生の女の子には、みんなにイヤラシイ目を向けるの?」

「い、いや。べつにイヤラシく見てたわけではない。」

「ぜったい。下心あるでしょ!なにあの態度。」

「下心なんて無いよ。絶対。」

 そんなやり取りをしているとチャンティコの着替えが終わった様で、試着室のカーテンが開いた。

「ヤゴロヲ君、どうかな、似合うかな?」

「ヤゴロヲ、この女なんなの?」

 すかさず姫がカーテンを開け口を挟んだ。

「ヤゴロヲ君、この人いったい?・・・・・・ヒルメ姫様!?」

 あ。これはヤバイ。なんかごまかしたい。

「ヒルメ姫!!その水着とてもお似合いです。」

 姫は、真っ赤なビキニを身にまとい、豊かな胸がゆれていた。

「そう、ありがとう。ヤゴロヲはこの水着がいいの?」

「はい。とっても気持ちが高揚します。」

 チャンティコは若干引きつつ、空気を読んでいた。

「姫様、まるで、天女が降りてきたようです。」

 チャンティコもお世辞を言わなければ、危険だと察したようだ。

「そう?で、あなたはヤゴロヲの何なの?」

 危険球が帰ってきた。

「わたしはヤゴロヲ君のクラスメイトで、チャンティコといいます。先ほど偶然ヤゴロヲ君とお会いしたので、選んだ水着の感想を尋ねていました。」

 とりあえずよけた感じだ。

「でも、さっきそうは思えなかったんだけど。」

「いえ、でもなんで男の人がこんなところにいるのかな?とちょっと嫌かなと思いました。」

 ひどい言われような気がする。でもコレでなんとかなりそう。

「たしかにそうよね。でもわたくしの御つきの者ですから、問題ありません。」

 これも結構ひどいな。



 水着選びは、

 姫は赤のビキニ、チコメは紺のビキニ、妹はピンクの水玉ワンピース、ウェルはビタミンカラーのパレオのストライプ、そしてチャンティコはスカートと上着がセットになった白のビキニに決まった。


 せっかくなので遊んでいこうということになって、最上階にあるアミューズメント施設に立ち寄ると、人だかりが出来ていて、その中心にテペヨロがいた。


「おーい。テペヨロ。なにやってんだ?」

 人垣の彼方から、話しかけた。返事は無かった。

 どうやら、対戦ゲームで連勝しているらしい。

 どんなゲームかと言うと、分野的には対戦シューティングで、ドローンの様なユニットで、フィールドを駆け抜ける。MMOみたいだがちょっと違う。現代では対戦ロボットゲームに近い。

 対戦で、連勝している中、話しかけると。

「テペヨロ、調子どうだ?」

「ヤゴロヲ君、もうちょっと骨のある相手がほしいわ。」

「相手はあんまり強くないのか?」

「そうね。攻撃が直線的だわ。場所的にコアなゲーマーが少ないのね。」

「そうか。」

 いったんテペヨロからはなれ、ちょっと乱入してみようと思った。

 順番待ちをして、対戦の順番になった。

 僕は、設置型装備を持っていて、固めたところを狙い打つ装備を持つ機体を選択した。マインをばら撒いて、ファランクスとか、上空からミサイルとか、そういう戦法が得意だったので、たぶんいけるだろう。

 そうして、対戦が始まり、弾はチョンよけでよけつつ、トラップを置いていく。敵もさながら、トラップをつぶしてくる。さすがに自分のペースに出来ない。

 なかなか、機体になれる事が出来ず、負けてしまったが、多少はてこずらせたと思う。



 テペヨロもようやく連勝ストップし、僕の前に来た。

「ヤゴロヲ君。このゲーム初めて?」

「うん。でもなんとなく、戦法は判ったかな。あとは慣れればいいとこ行くかもしれない。」


「このゲームでは、僕全国でも上位に行くけど、あんまり見ない戦法だったわ。参考になったわ。」

「そうかい!?対戦シューティングはさすがに久しぶりだったから、うまくできなかったよ。」

 ゲーマー仲間が出来た。ホモっぽいのは置いといて、友達にはなれそうだ。



「テペヨロ、チャンティコ。あした、パーティーを開くんだが、一緒にどうだ?」

「え、明日?でも僕行くよ。今日の戦法の事、聞きたいしね。」


 チャンティコは、豆鉄砲をくらった様な表情をしていた。

(「ヤゴロヲ君がワタシを誘った?ヤゴロヲ君にもっと近づきたい。プールに誘うチャンスもありかも。」)


「え、あ、うん。わたしも行きたい。」

 姫が若干険しい表情をした。

 チャンティコは、普通の娘だ。あまりに周りがキャラが立っているので、安心できる。ふつうってすばらしい。一服の清涼剤だ。大事にしたい。よく見るとヒロイン顔。


 





そして翌日。

 かねてより生ものを食べさせる約束をしていたので、かつおのたたきやマグロの刺身などの下ごしらえをして準備していた。



 調味料は、チコメが用意してくれた。しょうゆの試作品のうち一番合いそうなものを選んだ。

 野外パーティの形式で、かつおを炭火であぶり、香ばしいにおいが漂う。

 久しぶりの和食、いや刺身。早く食べたい。


「お兄ちゃん。こんなの食べられるの?生だよ?死なない?」

「ひどいな。新鮮なら大丈夫だよ。漁師だって捕りたてならたべてるよ。」


「本当に大丈夫かよ?食いもんだろうな?」

 疑い深いな。まずたべろ。


 表面を焦がしたマグロを刺身におろしていった。

 そうして、僕は切りたてから、しょうが醤油につけて食べていた。

「げぇ!!ほんとに食べてる!!だいじょうぶなの?」

 マヤ・ウェルは本気で嫌そうだった。


「大丈夫だよ。しょうがが殺菌してくれるから、それにしょうがとネギが絡んで、うまみが倍増する。さあ食べて食べて。」


「じゃあ、頂くか。本当にいいんだよな?」

 オシホもビビッていた。


 そんな中、チコメは躊躇無く、食っていた。

「ん~。うまいよ。」

「大丈夫なの。たべていいの?お兄ちゃん?」

 みんな半信半疑だが、意を決して食べようとする一人の女の子がいた。

(ヤゴロヲが大丈夫って言ってるから。大丈夫なのかな?チコちゃん大丈夫なの?)

 姫は、表向き動じないで、かつおのたたきを口にほうりこんでいた。

「あら!?おいしい。」

 この一言で、みな驚いて、ためしに一口おそるおそる食べてみた。

「あれ、おいしい。今までない食感。」

 皆、信じられないという感じで食べ始めていた。


 エビや、お吸い物、アサリの酒蒸しなど、さまざまな和食が並び、久しぶりに食を堪能した。



 ああ、これで夢の和食生活が送れるのか・・・

 と思い始めていた。


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