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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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48ブドウといしゆみ

 トトリの勤める農場はブドウが収穫期を迎えていた。

 農作物の病気から立ち直り、商業作物であるブドウもようやく実をつけるようになってきた。


「トトリちゃん。そっちの出来はどうだい?」

「いい出来よ。これならいい葡萄酒が作れると思う。」

「そうかい。じゃあ酒蔵に集めておくれ。」


 収穫が終わったブドウは、選別され葡萄酒を作る蔵にしまわれる。



「最近になって、ブドウで生計が立ってきたおかげで、かなり楽になった。これもあの姫さんのおかげか。」

 農場のおじさんは、失った損失を埋める商業作物を得たおかげで、生活が安定し人を雇って収穫量を増やしていた。


「おっさん。ブドウがかなり集まったぜ。」

 ワカヒコとタキリ姫の離宮は混乱していた。マイキはヤバい離宮を離れ別の働き口を見つけた。



「新入り、蔵までそこのかごの分から持っていてくれ、トトリちゃんが、娘がいると思うからその子の言うことを聞くんだぞ。」

 マイキは蔵までのブドウを持っていく。生きていくため働くのだが、命あっての物種。戦争の気配が漂うなか、郊外にある農場は格好の避難所で、しかも結構な稼ぎになる。だからこの農場を選んだ。



「ブドウ持ってきた。どうすればいい?」


「じゃあ、奥のほうからタルに詰めていってくれる?」

 トトリが作業者を指図している。年の割にしっかりしているのは相変わらずで、まさか赤飯前のお嬢さんとは思えまい。栄養状態の悪い時代では、生理は遅れがち14歳くらいが初潮の平均値なので、実際の結婚適齢期は17歳くらいだが、婚姻は幼少期に行われる事は多い。



「よっこいしょ。」

 マイキはかごからタルへブドウを移す。無造作に入れる。


「そんな風にあつかっちゃだめ!!もっと優しく。」

 トトリはたまらず注意する。せっかくの商品が傷ものになってしまう。


「ってテオ……じゃないわね。あんた誰?」


「俺か?俺は、マイキだ。」


 彼は、テヲに雰囲気が似ていたが、生意気な子供であった。





「こんなに潰れちゃって、まだお酒造りの準備前だから、その前に潰れちゃったら量が少なくなっちゃう。」

 トトリがタルの中を見てがっかりしていた。

「ダメになる前にわけなくちゃ。あんたも手伝って。」

 トトリがマイキに声をかけ、指図する。


「うっさいな。分かったよ。なんで俺が……。」


「文句言わないで、手を動かして。これが私たちの生きる糧になるのよ。」


「ダメになったブドウはあんたの今日の給料ね。」


「え?やだよ。ちゃんとパンとかがいい。」


「あんたがダメにしたんだから、責任を取って食べなさい。ブドウは貴重品なのよ。ありがたくいただきなさい。」


「ちゃんと腹の膨れるくいもんがいい。」


「それは、あんたの働き次第よ。」










 海原の根の国の首都アクロポリスでは、着々と戦争の準備がなされていた。機動兵器は改良され、圧縮空気による熱機関が導入された。これにより小型化されたが、アームを補助するような機構となり、パワーアシストスーツのような形態となった。

 大型兵器も開発され、ほぼ固定式であるが蒸気機関を直結したカタパルトを搭載した、機動兵器もある。

 王族に連なる諸侯には、新兵器を配備するため工業生産に国民を総動員していた。



 征服した地域では、未だ石器なので、歩兵の数を確保することはできても戦力差が歴然とある。戦略もないに等しく、職業として兵士が常設しているのでなく、戦うときに徴収される。人口の1%徴収できればいいほうで、古代の人口は数百万人程度と考えられるので、全兵士でも1万人程度でしかいない。






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 国家システム的に総動員を可能にするためには、戦争の論理化を必要とする。世界大戦を可能にしたのは、理論体系化と論理学、そして国際法である。


 中世から、捕虜の扱いとか身代金がとれそうな兵士の扱いは慣習法がありそこそこ優遇されていたが、農奴や国民はないがしろにされていた。国際法によって戦争のルールが決められて、上品ぶって戦ってたのが第一次世界大戦と第二次世界大戦である。そうあの大戦でさえ上品だったのですが、総力戦という何もかもを戦争につぎ込むという世情が悲惨だった。それは敗戦国だけでなく戦勝国であっても同じで、植民地の独立は避けられなかった歴史となった。


 昨今はそれが崩れて、ゲリラやテロの時代で、また元にもどってやりたい放題になりつつある。ちなみに大きな戦力はこの小さな戦力に弱い。核があろうとこの小さな戦力に勝てない。なんせ神出鬼没で、拠点を潰しても湧いてくる。ハイテクも大量破壊兵器もくそもない。

 総力戦は、国同士であってかつルールがあって可能であり、もう世界大戦を起こす事は不可能だと思うのですが、未だ帝国主義チックな思想を持つ国が時代錯誤に宣戦布告すれば、ありかも。

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 それでも、戦に参加する国家はいくつかあった。大体は本国に逆らえないので兵を出すか、よっぽどの戦が好きか、ありえないがゲリラ戦を得意とし、近代戦の穴を突くことを知っていたかである。



 そんな国の大将であるギブルは、今でいうカナンの地へ兵を向けていた。

 天の根の国が陸上部隊を差し向けるとすれば、ナイル川以外にあり得ない。ナイル川は渓谷に挟まれているため、両岸から狙い撃ちすれば一網打尽である。(航空戦力や”天使”で迎撃されるのがオチだが)

 しかしエジプトにはセトが陣取っていて、昇ることを許さない。先ずはセトをたたくためエジプト前で終結していた。



 セトは、かねてよりの盟約により、天の根の国から支援を受ける代わりに、エジプトへの他国侵入を拒む兵を国境に(支流)配備していた。

 大半は石器で、ただし内訳はほとんどが矢、弩というべきか、機械式の弓矢(バリスタ)で武装されていた。

 人間の強さは、飛び道具の強さに比例する。現代戦で剣や槍がなく、飛び道具が主兵装であり接近格闘術、タクティカルトマホーク、ナイフ、スコップが近接戦に使われる程度である。



 こうして弓矢が古代から近代まで卑怯な兵器と呼ばれるに至ったのである。



 カナンの地でギブルは立ち往生していたのだった。弓矢が強いからで、相手のほうが飛距離があり、貫通力も高い。(戦艦大和のアウトレンジ砲撃を大戦初期からずっとやってれば……)近づけないということと、少数でゲリラ的に近づいても、なぜか全滅する。生還した者からは、天使か悪魔かがという荒唐無稽な話が返ってくる。


 一体どうしたことだと、頭をひねるばかりである。



「たしか、機動兵器にカタパルトとかいう、石を遠くにとばすのがあったな。投石器(スリング)をでかくすれば届くかな?」


 ギブルは何かしら壮大に脳筋でとんでもない事をしでかそうとしていた。




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