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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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44卒業

「ユーキー。なんで起こしてくれなかったんだ。遅れちまう。」


「だって~、ミミちゃん怒るもん。」


「でも今日くらいは、ちゃんと起こしてくれてもいいじゃないか?」


「いつもは~、ククさんが~起こしてくれるけど~、今日は特別だしぃ~。頼めないしぃ~、ミミちゃん怒るしぃ~。」


 ミミはいつも通り、寝坊していた。ユーキもいつも通り、ミミの起床には手こずっていた。


 今日は、ククが起こしに来なかった。そして、今日以降も無い。


 今日は、ククの教育課程が終了し、次へすすむ日だ。


 ミミは普段から制服を着崩しているが、さすがに他の生徒たちはきっちりしている。


「ミミ?その格好で行く気か?」

 ガガがいすにもたれ逆反りの格好で、遅れて食堂に入ってきたミミの乱れた服装、というか寝ぼけて半裸状態を見て面白そうに言う。


「だめよガガ、あの状態では何を言っても無駄。」

「あれはー、正装なのよ。彼女の部族の。」

 ララとリリも若干おふざけ気味で、あおる。


「しょうがないから、今日は前は閉めるわ。」

 ミミは、今日は胸を盛る時間かなかったので、見せないつもりだ。


「前はって、他はそのままか?」


「ちょっとは地味にするわよ。」

 準備が間に合ってないので、メイクなしのナチュラルで、アクセも合うものがないだけだ。メイクばっちり、かわいくしている普段と違い、ピンクの髪色とも合わずなんとなく野暮ったい。


「それより~、早くご飯食べないとおくれるよ~。」

 珍しく、ユーキに急かされる。


「わかってるって。」

 言葉より先に手が食事に伸びる。そしてガツガツはしたなく食べる。


「私たちは先に行くから、早く来なよ。」

 ガガたちは、セレモニーホールへ向かった。ばらばらと他の寮生も向かっていった。





「ミミちゃん~速いよぅ。もう少しゆっくり歩いて~。」


「遅れるんだよ。今急がなきゃいつ急ぐんだよ。」

 いつか見たような光景だ。


 体育5のミミと体育1のユーキが、どっちが保護者なのかわからないが、補いあっている。



 多少遅れ気味にセレモニーホールに入ると、すでに学位授与式は終盤に差し掛かり、ククが壇上で学位証書を受け取っていた。他の修了者の代表である。ここら辺は大学と同じらしい。ということはククは首席だったということか。精神年齢は高校生×2だから当然といえば当然だ。



「あーあー。だいぶ遅れたけど~、ククさんの晴れ舞台に間に合ったみたい~。」

「ちょうどだるい説教が抜けてよかった。」

 ふたりが、入り口付近で背を低くしてこそこそと進入している。

 その入り口には教官が控えており、すぐに見つかってしまい。見せしめみたいに教官の横に座らされてしまった。そのまま説教ルートに突入してしまった。




 学位授与式も、学長兼理事長のヒルメの挨拶が終わり、解散となった。

 あとは、各々で集まったり、連絡先を交換したり、勤務地へ移動したりと様々だ。


 ククは、学校の事務を担っていたので教務室に戻り、教官に別れを告げ、激励を受けたりと忙しい。


 ようやく、ククの学生以外の部分も卒業して、寮に帰ってきたのは夕刻だった。

 寮では、送別会の準備が進められていた。


「ひっく。準備はい・・・かし・・・ら。ひっく、ククお姉さ・・・の門出・・・す・・・で、ひっく、盛大に・・・ひっく。」

 ククとの別れを惜しむ、”妹”たちがすでにべそをかいて準備していた。ミミも多少感傷的になって、もらい泣きしないようにしていた。


 べつにククだけの送別会ではないのだが、かなり特殊であった事に代わりがない。

 長身で白い肌を持ち、黒人でありながら文字を身につけていて、化学の学位を修めた。これは現地の人にも驚異的にとらえられ、後に続く”妹”たちも現れるほどだった。


”「ふう。とりあえず荷物をおいてから着替えましょう。」”

 ククは荷造りしたためずいぶんと殺風景になった部屋にもどり、一休みしていた。

”「やっと卒業ね。これからは自分の欲しいものを作る事ができるのね。はじめは文明のかけらもなかったのに、たまたま王都に呼ばれて、えらい目に合ったけど、何とかここまで来れた。過去の本も手に入れたけど、今はそれ以上の事が出来そう」”


 彼女が、西サハラに生まれ、過去生に覚醒したときから、不便で仕方なかった生活が、王都に来て一変した。電気や機械、薬もある文明があった。しかも宇宙まで行くことができるなんて夢にも思わなかった。そして宇宙には研究所がある。そこには更なる技術が発達した世界がある。




”「分子マシンプラントを使えば、あらゆるプロセスを無視して分子を作りだせる。逆に地上設備が設置できない宇宙ならではの発想。分子マシンプログラムは無重力か液体の中でしか不可能。そんなものがあるなんて夢のようだわ。」”




 現代でも3Dプリンタで色々なものが作り出せるようになった。分子マシンプラントではそれを原子単位でつまんで、結合させる。(原子間力顕微鏡や磁気力顕微鏡は原子一つを動かして、文字を書いたり出来ます。)通常、酸化、還元、重合など、混ぜたり、沈殿させたり、加水により長鎖の分子に結合させたりするプロセスが、従来の設備なしで実現可能。

 物理化学で予想される(スーパーコンピュータで計算される)トンでも構造(とてつもない威力の火薬なんて、さいころにカビが生えてるような構造で、複雑。)の分子も作り出せる。大量生産ではコストが高くて使えないが、試作やプロセスが確立していない物質には向く方法。時間とエネルギーがあれば何でも作れるだろう。



 ククは、コロニーでの仕事を頭に浮かべ、興奮していた。

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