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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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40逆襲の悪代官

「あ~生き返る~」


 ミミ、ガガ、ララの三人が湯船につかり温まっていた。

 三人が入っている間リリが荷物番をしていた。唯一リリは、一人雨がっぱ(重装備)でしっかりガードしていた。さすがヤンデレ(偏見)である。


「はやくしなさいよー。わたしも入りたいんだからー。」

 浴場の外からリリが中の三人に話しかけた。


「もうちょっとー。体を洗ってからでるー。ククさんからもらった石鹸とってー。」

 リリは石鹸をガガに向かって放り込む。



「しょうがないわね。貴重なもんなんだから、それにわたしの分も残しときなさいよ。」


「わかってるって。ククさんの事だから材料も持ってきてるだろうから、作ってくれるんじゃね?」


「ククさんは私たちと違って、7日もいないじゃない、そんな都合よく作れるかしら?」


「私たちは、基地の設営で3ヶ月はいないといけないから、たくさん作ってくれないかな?」


「仕事中は無理でしょ?少ない休暇に作ってもらうにしても、その休暇は今日しかないし。実家に帰っているみたいだし、無理でしょ。それより早く出てきなさいよ。わたしは広間で待ってるからね。」


 リリは、脱衣所をでていった。





「あの娘、忘れもしない。あの小娘だ。」

 ミミたち特殊部隊ご一行は、無防備にも拡張儀体群エクステンションアームズを装備したまま、公衆浴場までやってきたのである。普通なら、珍しい格好しているなで済むのだが、それを見たもの、体感したものにとってはトラウマものである。

 そう、あの悪代官とその一味だ。ミミが相当姿が変わっても、強化外骨格(アーム)の力は見逃さない。


「あの小娘め、この世の地獄を見せてやる。」

 元悪代官は、悪そうな顔をさらにゆがめた。


「おい、いるか。」


「なんだい?親方。」

 あの代官屋敷の騒動に居あった野党である。

「あの小娘が、風呂に入っている。」


「なんだって?」


「あの小娘だお前投げられただろう。それに白い娘のクク。こっちにいるらしいぞ。」


「あのデカ女か。じゃああの男もいるのか?」


「それはわからん。とりあえず、ククは実家に帰っているらしい。お前いってこい。」


「え?いやですよ。だって魔法を使うんでしょ?」


「お前が駄目そうなら先生にいってもらおう。」


「他のやつを呼んで来い、まずは風呂に入っている間に襲う。」


「へっへっへっ。娘が無防備に裸でいるんですね。じゃあヤるんですね。」


「ああ、好きにしろ。この世地獄と天国を見せてやれ。」


「じゃあ好きにしますぜ。」


「コッチとアッチに分かれるぞ、わしはククの所に行く。」


「先生はデカ女好きのだといいな。」


 元悪代官一味は二手に別れ娘さんたちにひどいことをして、さらにひどい運命を背負わせる準備に取り掛かった。





「あーさっぱりした。そろそろ出るか。」

 そこに、3人の男たちが棍棒や縄を持って入ってくる。

「お嬢さんたち、いい体してるね。おじさんたちといいことしよう。」

 ミミたちはすっかりきれいになった体をさらしていた。とっさに隠すところ隠すが、あまり意味がなかった。


「は?あんたら誰よ?」

 ガガは男たちに警戒の目を向ける。


「ああ、あんたには怨みはないが。そこのピンク髪には昔世話になってな。お礼をしにきたのさ。」


「ミミ、あんたの知り合い?」

 ララがミミのほうを向いた。


「さあね。でもこんなの道端で蹴飛ばしたかもしれないね。」


「おまえが覚えてなくても、こっちは忘れるなんて出来ないんだよ。」


「そうね。あんときはヒキガエルみたいに伸びておもしろかったわ。」


「畜生!!言いやがって!!お前なんか犯すだけ犯して、奴隷にしてやる。一生。」


「やれるもんならやってみなさいよ!!」


「おう、てめえら、好きなだけ遊んでやりな。あの奇妙な服も着てないんだ、危険はない。」


 男たちはミミたちに襲い掛かった。



「びたーん。」


 男たちは宙を舞った。

 何が起こったか、わからなかった。


「あら、勢いはよかったわね。あいにく裸でもあんたらより強いのよ。」

 さすがに軍隊仕込のCQC相手では敵うまい。ひっくり返されて、とどめを刺される直前だ。ちょうどいい具合に縄も持っていたので、縛ってやった。


「さあて、私たちをどうするって?」


「いやー、姉さん。あっしが姉さんに逆らうわけないじゃないですか。」


 先ほどとはまるっきり立場が逆になってしまった。


「湯冷めしちゃうから早くでようよ。」

 ララが恥ずかしい部分を隠しながら言う。


「そうね。さっさと出ましょう。その前に。」


 ガガは、転がっていた棍棒で男たちを意識を失うよう殴打した。


「ミミ、こいつら何もんだ?」


「こいつらは、子供のわたしを手篭めにしようとしたのよ。それで、アームをつかって懲らしめたのよ。」


「人に過去ありってこったな。」




「リリ、風呂上がったぞ。」


「なにやってたのよ?まちくたびれたわ。」

 リリはとっとと浴室に入っていった。





「きゃーーーーーーーーーーーーー」

 リリが取って返ってきた。


「あれはなに?」


「始末しといてくれる?」


「いやよ。」


「まあしばらく起きないだろうけどね。」


「そういう問題じゃない。」


「だいじょうぶだって、結構いい体してるけどちゃんと縛ったから。彫像だと思えばいいって。」


「生じゃないの。それにあの・・・・・・いえなんでもない。」

 リリは、浴室に引き返していった。





「先生、こちらです。」

 元代官は、輪中でもはずれにあるククの家のある輪中についていた。


 ククは、自分の荷物の整理や、挨拶まわりをするため、ご近所をうろうろしていた。


「あれはデカいな。頭一つ飛びぬけているぞ。」

 185cmもある。男だって大きいほうなのに。


「まあ、中身は普通の女ですよ。ちょっとミルラケムが使えるだけで。」


「そうか。そのミルラケムとはどんなものだ?」


「火を使ったミルラケムで、火が勢いよく宙をとぶんです。」


「ほう?いったいどうやって?」


「なんか筒をもって、人に向けると出てくるんです。」


「なるほど、銃か火炎放射器の類か、なら撃たれる前に接近すればよいのだな。」



 男は見るからに屈強な体をしていた。

「武器など必要ないな。顔を知られてなければ近づくのは簡単だ。」

 一応ナイフなど携帯しているが、それは誰でも持っている。それに女性相手には過剰な装備だろう。



 男は、ククを追った。

 ククはご近所に雑談しながら周っている。ふと物陰に入っていく。

 男は、見逃さず物陰に入っていく。


「あんた、見慣れない人だけど、私に用があるの?」

 そこにはククが待ち構えていた。


「気づかれていたとはな。お前何者だ?」


「そりゃ、あんだけ熱視線を送られれば気づくわ。」


「なかなかの観察眼だと見える。しかしこんな人目につかない所で待ち伏せとは、さすがに女だな。」


「そうね、でもこれはどうかしら?」

 ククは右手を左袖に掛ける。


「はっ!!そんなものお見通しだ!!」

 男が拳を構え、腕を殴りにかかる。


 ククはバックステップして、袖から筒を取り出す。


「ばかめ、正面にいなければ当たるまい!!」

 男がククの側面へ回りこむ瞬間。


「ぷしゅー」

 ククは筒の上にあるボタンを押した。


「ぐは!!なんだ、目にしみる!!」


「制汗スプレーよ。何かと勘違いしたのかしら?」


「制汗スプレーだと!?この時代にそんなものあるか!?」


「この時代?あんた何か知ってる?」


「知ってるだと?貴様こそなぜスプレー缶を持っている!?」


「それは秘密よ。」


「貴様も飛ばされてきたのか?この時代に。」


「貴様も?あんたもムー人?」


「ムー?それは何だ?ムーなんてオカルト話だぞ!!」


「え?何で、わたしは3000年前のムー連合王国から転生したのよ?」


「ムー大陸なんて、作り話のオカルトだ。1万2000年前のな。」


「うそ?あなた未来から来たの?あのオモイカネと同じで。」


「オモイカネ?誰だそれは?それに未来だと?」


「未来から来たということは、あなたは・・・・・・」


 男は目がようやく見えるようになり、ククに向かって構えた。


「長話しすぎたようね。」

 もう一度ククはスプレーを構える。


「あまい!!」

 男はローキックを放つ。ククの腿にクリーンヒットした。


「・・・・・・・・・・・・っつ!!」

 ククの足に激痛が走る。スプレー缶が地面に落ちる。とっさに衝撃方向をそらし受身をとる。折れてはいないようだが、相当のダメージだ。


「これは・・・・・・空手?」


「貴様。空手を知っているのか?それに受身をとったな。柔道か合気道か日本の武術か。」


「なぜジュードーのことを?」


「俺が日本人だからだ。」


「ニホンジン?」


「貴様知らないで柔道を使っていたのか?」


「オモイカネの故郷の技と聞いています。」


「オモイカネが如何な者であったにせよ、まともな武芸者ではないな。」


「そうね。彼は技術者だもの。!!」

 ククは、受身をとったあとのしゃがんだ姿勢から立ち上がり際に奥襟をねらった。

 すっと男はよけ、わき腹に突きをいれる。


「げほ!!」

 ククはわき腹を押さえる。ろっ骨が折れたか定かではない。


「たわいもない。女相手に技を使うまでもないな。」


「っ・・・・・・なぜ・・・あなたは・・・未来の記憶・・・で、発明を・・・・・・しないの?」


「未来の記憶なんてあったって、この世界では無駄だ。何もない。文明レベルが違いすぎる。この時代は力こそ正義だ。幸いに俺は空手の黒帯だ。この恵まれた体では敵はいない。現代日本の生活は出来ないが、力で何でも手に入れることが出来る。いい時代だよ。」




 ククは立ち上がる。

「間違ってるわ。だって、どんなに知識があったって、技能があったって、それを生かすのは、自分よ。形にしようとする執念よ。あなたにはそれが感じられないわ。ただ与えられたおもちゃで遊んでいるだけで、困難を克服しようとしていない。」


「えらそうなことを!!いったい何が出来るんだ!!天才でもないって云うのに!!」


「天才だがらできるんじゃないの!!。欲望なのよ!!。したいからするのよ!!そのために生きているのよ!!」


「小ざかしい。貴様はこれから一生奴隷だ!!おっさんのおもちゃだ。貴様も人のおもちゃになれるんだぞ!!」


「そうはさせないわ!!」

 ククは再び飛び掛る。


「あまいと言っているだろう!!」

 男は再び脇に拳を向ける。


「かかった!!」

 ククは腕に向かって足を向ける。そのまま両足の間に足を挟み、腕をつかむ。飛び関節だ。


「なんだと?」

 そのまま、男を地面にねじ伏せる。そして腕ひじき逆十時が完成する。




「女の力など跳ね飛ばしてやる!!」


「観念しなさい。このまま折るわよ。」


「折れるもんか!!。女の力で!!」


 ククは力を入れる。ばきっといい音がして間接が外れる。


「がぁぁぁぁぁ!!」


「もう一本いっとく?」


「畜生!!貴様生かしておくものか!!」


「それはわたしのセリフよ。」

 ククは懐から注射器を取り出す。

「しばらく眠ってもらうわ。」

 注射を男に打ち、すぐにコテンとおとなしくなった。


 元悪代官はすでにどこかに消えていた。




 ミミたちは基地に戻り平静を装っていたが、勝手に装備品を持ち出したのはバレていた。

 仲良くみんなで廊下に正座させられていた。


「ほら、行かないほうがよかっただろ。」

 ミミは、当初の昔なじみの問題が解決したので、次からは行こうと思ったが、今回はほら言ったこちゃないという感じで反論していた。


「いや、いいもの見ました。」

 リリは何かの収穫があったようだ。


「ちくしょう。いい男もいないし、さんざんだ。」

 ガガは悔しがる。


「そのうちいいのが来るって。」





 ククは、今回の顛末と、新たな未来人の確保の報告書を書いていた。

「思わぬ成果ではあるけれど、役に立つかしら、あの男。」

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