39魔女たちの里帰り
比較的小柄な少女たちが戯れる。天使の黒色の肌が踊る。
彼女たちの一時の休暇を彩る水彩画のような、湧き水がきれいな池。
彼女たちは温泉で体を温めていた。
西サハラの大河。輪中が三角州の中に無数に存在する。
そんな中の一つ。ククの生まれ育った輪中がある。
「ただいま。お母さん。」
「あ、ああ、クク!!今までなにやってたんだい?」
「女王様に会いに行って、ちょっと学校に。」
「話は聞いていたんだけど、なにかやらかしたのかい。それで丁稚奉公してたんだろ?」
「丁稚奉公じゃないって。学校。ミルラケムを習っていたの。」
「女王のミルラケムかい?どんな特別なもんだい?」
「特別というか、かまどやカメで出来るようなものではなくて、もっと大掛かりな機械が必要で、あっちじゃないと出来ない。」
「機械ってなんだい?」
「ああ、そうか。あのね機械ってのは、糸巻きあるじゃない。あれが自動で動くのよ。」
「それこそミルラケムじゃないかい。どんなントゥで動いているんだい?」
「蒸気だったり、電気、うんと雷の小さいのね、だったりいろいろよ。」
「水の力、火の力、雷の力。いろんなントゥが使えるんだね女王様は。」
「そうね。あ、そうそう、私、宇宙にいったの、空の上の。」
「空の上って、神様の国かい!?それが宇宙って名前なのかい?」
「まだ入り口だけどね。あっそれから、また宇宙に行くから。もしかするとずっと住むことになるかも。」
「は?あんたが?神様の中にまじるのかい?あんたが?笑っちゃうね。」
「神様じゃないわよ。人間よ、みんな。肌が白い以外は。」
「あんたと一緒だってのかい?」
「こんな真っ白じゃなくて、赤みが刺さっているから、明るいらくだ色かベージュぐらいかしら。」
「じゃあ、あの婿くらいかい?ところで婿は連れてきたのかい?」
「あの婿ってなによ。」
「いい歳して男も捕まえないでいていいもんかい。お前と同じくらいの背丈で、顔のバランスのいい。なんていったかね。」
「ああ、あいつね。あいつはね・・・・・・」
まさか敵国の者だとはいい難い。
「どうしたんだい?調子でも悪いのかい?」
ククの母は、歯切れの悪いククの様子を察したのか、それ以上は尋ねなかった。
「ほんといい歳なんだから、ほれ、近所のゴザいただろ?あいつで手を打って結婚しちまいな。」
「いやよ。それにいい男なら、アッチにもいるわ。」
久しぶりの里帰り、やぶへびな話だらけだ。久しぶりの再開というのに感動もありゃしない。
西サハラ湿原に基地を造るため、いち早く輸送機でククはやってきた。ククだけでなく、造営部隊、折衝部隊、特殊部隊とさまざまな分野のエキスパートが集まっていた。
ククとミミは西サハラ出身ということもあり、地の利を生かしたガイドを期待されていた。
「ミミよ。このあたりのプレイスポットはどこなんだよ。」
ガガがミミにたずねる。
「プレイスポットなんて、男遊びでもするの?そんなのないよ。せいぜい市が立つぐらいよ。」
ミミの記憶では、繁華街は川上の代官屋敷のある輪中くらいで、他にはない。特に今いる河口付近は港町なので、漁師が相手なら男ならいくらでもいる。
「ねえ。いい男いないの?ララはカズチ様みたいな人がいいな。」
「がっちりしたのなら、そこらじゅうにいるじゃん。」
ミミは漁師町の男たちを想像して言った。
「いや、ああゆうんじゃなくて、かっこいいの。礼儀ただしっくって、しかってくれそう。」
「おまえMか?」
「ちがうわよ。だって、あんな強い人で、人格も正しいなら言う事聞くしかないじゃない。」
すでにメンヘラ入ってそうだ。
「わたしは褒められたい。死ぬほど褒められたい。だって褒められて伸びるタイプだし。」
リリは、ララとは違い、普通のようだが、攻めタイプな気がする。
「じゃあさ。どこ遊びに行く?」
ガガは、ずっと遊んでいたい。
「ここじゃなくて、上に行かないとないよ。それにしょぼいよ。田舎だし。」
ミミは、地元のしょぼさをアピールしている。だいたいが自分の仕事場だったので、昔の仲間とも会いたくない。あんまり乗り気でない。
「上に行くにはどうやっていくの?」
リリがミミにたずねた。
「川上に向かって、舟を自分で竿を川底挿して進むか、陸を歩くか。それでも1日かかるわ。馬車とか使えば早いけど。」
「じゃあ馬車を借りるか。」
「馬がいるかが問題だ。周りにいたか?」
ガガは行く気まんまんだが、手段に乏しい。やはり徒歩が一般的な方法だろう。
「じゃあ、やっぱりあきらめましょう。やあー残念。歩いていくには遠いし、今日の休暇が無くなっちゃう。」
ミミは、残念と言いたげに、町に行くのを否定した。
「いや、飛んでいけばいい。」
「まさか、拡張儀体群を使うのか?」
ガガの提案と、ララの思惑は一致した。
「でも、長距離は飛べない。それに装備を勝手に使ったなんてバレたら、ただ事でなくなる。」
「ミミ、お前らしくない言葉だな。いつもなら進んで面白いことしようとするじゃないか。」
「いや、無理だろ。バッテリーがなくなる。」
「でもぉ、飛ばなければ歩くより早くいけるよ。」
リリは現実的な解を出してきた。
「そういえば、ちょっと疲れるが走るか?」
ガガは、走ってでも行く気がありそうだ。 時速40km/hで1時間ちょこっとだろうか。日帰り可能だ。
「だいたい、汗を流したあと遊べるか?」
あまり疲れてからの遊戯は控えたい。
「じゃあさ、舟の上でローター回して舟ごと動かせば。」
「それだ!!」
意外と安易な、危なそうな方法である。
そして冒頭にもどる。
「だれよ。ローターまわして舟を押すっていったの。」
はじめこそよかったが、水しぶきやら転覆やらでびしょぬれ。泥水で汚れてしまった。
多少の汚れは覚悟していたが、とても激しく水がかかり滝の水を浴びたようだ。
「寒い!!早くあったまりたい。」
「あそこに温泉があるみたいよ。」
「はやくはやくぅ。」
少女たちはすっかり意気消沈していた。




