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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第4節 海と天はふたたび交わる
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39魔女たちの里帰り

 比較的小柄な少女たちが戯れる。天使の黒色の肌が踊る。

 彼女たちの一時の休暇を彩る水彩画のような、湧き水がきれいな池。


 彼女たちは温泉で体を温めていた。







 西サハラの大河。輪中が三角州の中に無数に存在する。

 そんな中の一つ。ククの生まれ育った輪中がある。





「ただいま。お母さん。」


「あ、ああ、クク!!今までなにやってたんだい?」


「女王様に会いに行って、ちょっと学校に。」


「話は聞いていたんだけど、なにかやらかしたのかい。それで丁稚奉公してたんだろ?」


「丁稚奉公じゃないって。学校。ミルラケムを習っていたの。」


「女王のミルラケムかい?どんな特別なもんだい?」


「特別というか、かまどやカメで出来るようなものではなくて、もっと大掛かりな機械が必要で、あっちじゃないと出来ない。」


「機械ってなんだい?」


「ああ、そうか。あのね機械ってのは、糸巻きあるじゃない。あれが自動で動くのよ。」


「それこそミルラケムじゃないかい。どんなントゥ()で動いているんだい?」


「蒸気だったり、電気、うんと雷の小さいのね、だったりいろいろよ。」


「水の力、火の力、雷の力。いろんなントゥ()が使えるんだね女王様は。」


「そうね。あ、そうそう、私、宇宙にいったの、空の上の。」


「空の上って、神様の国かい!?それが宇宙って名前なのかい?」


「まだ入り口だけどね。あっそれから、また宇宙に行くから。もしかするとずっと住むことになるかも。」


「は?あんたが?神様の中にまじるのかい?あんたが?笑っちゃうね。」


「神様じゃないわよ。人間よ、みんな。肌が白い以外は。」


「あんたと一緒だってのかい?」


「こんな真っ白じゃなくて、赤みが刺さっているから、明るいらくだ色かベージュぐらいかしら。」


「じゃあ、あの婿くらいかい?ところで婿は連れてきたのかい?」


「あの婿ってなによ。」


「いい歳して男も捕まえないでいていいもんかい。お前と同じくらいの背丈で、顔のバランスのいい。なんていったかね。」


「ああ、あいつね。あいつはね・・・・・・」

 まさか敵国の者だとはいい難い。


「どうしたんだい?調子でも悪いのかい?」

 ククの母は、歯切れの悪いククの様子を察したのか、それ以上は尋ねなかった。


「ほんといい歳なんだから、ほれ、近所のゴザいただろ?あいつで手を打って結婚しちまいな。」


「いやよ。それにいい男なら、アッチにもいるわ。」


 久しぶりの里帰り、やぶへびな話だらけだ。久しぶりの再開というのに感動もありゃしない。







 西サハラ湿原に基地を造るため、いち早く輸送機でククはやってきた。ククだけでなく、造営部隊、折衝部隊、特殊部隊とさまざまな分野のエキスパートが集まっていた。


 ククとミミは西サハラ出身ということもあり、地の利を生かしたガイドを期待されていた。



「ミミよ。このあたりのプレイスポットはどこなんだよ。」

 ガガがミミにたずねる。


「プレイスポットなんて、男遊びでもするの?そんなのないよ。せいぜい市が立つぐらいよ。」

 ミミの記憶では、繁華街は川上の代官屋敷のある輪中くらいで、他にはない。特に今いる河口付近は港町なので、漁師が相手なら男ならいくらでもいる。


「ねえ。いい男いないの?ララはカズチ様みたいな人がいいな。」


「がっちりしたのなら、そこらじゅうにいるじゃん。」

 ミミは漁師町の男たちを想像して言った。


「いや、ああゆうんじゃなくて、かっこいいの。礼儀ただしっくって、しかってくれそう。」


「おまえMか?」


「ちがうわよ。だって、あんな強い人で、人格も正しいなら言う事聞くしかないじゃない。」

 すでにメンヘラ入ってそうだ。


「わたしは褒められたい。死ぬほど褒められたい。だって褒められて伸びるタイプだし。」

 リリは、ララとは違い、普通のようだが、攻めタイプな気がする。



「じゃあさ。どこ遊びに行く?」

 ガガは、ずっと遊んでいたい。


「ここじゃなくて、上に行かないとないよ。それにしょぼいよ。田舎だし。」

 ミミは、地元のしょぼさをアピールしている。だいたいが自分の仕事場(テリトリー)だったので、昔の仲間とも会いたくない。あんまり乗り気でない。


「上に行くにはどうやっていくの?」

 リリがミミにたずねた。


「川上に向かって、舟を自分で竿を川底挿して進むか、陸を歩くか。それでも1日かかるわ。馬車とか使えば早いけど。」


「じゃあ馬車を借りるか。」


「馬がいるかが問題だ。周りにいたか?」

 ガガは行く気まんまんだが、手段に乏しい。やはり徒歩が一般的な方法だろう。


「じゃあ、やっぱりあきらめましょう。やあー残念。歩いていくには遠いし、今日の休暇が無くなっちゃう。」

 ミミは、残念と言いたげに、町に行くのを否定した。


「いや、飛んでいけばいい。」


「まさか、拡張儀体群エクステンションアームズを使うのか?」

 ガガの提案と、ララの思惑は一致した。


「でも、長距離は飛べない。それに装備を勝手に使ったなんてバレたら、ただ事でなくなる。」


「ミミ、お前らしくない言葉だな。いつもなら進んで面白いことしようとするじゃないか。」


「いや、無理だろ。バッテリーがなくなる。」


「でもぉ、飛ばなければ歩くより早くいけるよ。」

 リリは現実的な解を出してきた。


「そういえば、ちょっと疲れるが走るか?」

 ガガは、走ってでも行く気がありそうだ。 時速40km/hで1時間ちょこっとだろうか。日帰り可能だ。


「だいたい、汗を流したあと遊べるか?」

 あまり疲れてからの遊戯は控えたい。


「じゃあさ、舟の上でローター回して舟ごと動かせば。」


「それだ!!」

 意外と安易な、危なそうな方法である。





 そして冒頭にもどる。


「だれよ。ローターまわして舟を押すっていったの。」


 はじめこそよかったが、水しぶきやら転覆やらでびしょぬれ。泥水で汚れてしまった。

 多少の汚れは覚悟していたが、とても激しく水がかかり滝の水を浴びたようだ。


「寒い!!早くあったまりたい。」


「あそこに温泉があるみたいよ。」


「はやくはやくぅ。」


 少女たちはすっかり意気消沈していた。

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