38摂関王テヲ
摂政。古代からある役職で、天皇の変わりに政治を行う職。
摂政の歴史は聖徳太子に始まり昭和天皇で終わる。間に藤原氏の摂関政治があるが、帝国憲法では皇太子、皇族の就く役職。
テヲの即位は伏せられていた。表向きは関白として執政する。それは海原の根の国を手中に治めるという、ワカヒコの野望をあきらめさせないための措置である。
新兵器のお披露目もお預けであった。
「本年の軍事費ですが、やはり国外派兵費が財政を圧迫しています。」
「駐留費用は現地に負担させていますが、装備の整備は任せるわけにはいきませんので、アーム、と機動兵器の同時運用は強力ですが、交換部品供給も鉄が足りません。西サハラから得られる鉄は限られているため、機動兵器ではないもっと安価な制圧兵器が必要です。」
「開発費を捻出させるためにも、軍事費を抑えなければ、天の根の国に匹敵する武具を造ることは叶わない。」
「しかし、各地の統治にも限界があります。協力的な国であればいいのですが、国の体も成していない地域に期待できない。それに、従うそぶりもない下ナイルなどは、天の根の国からの支援があるとのうわさがあります。」
「上ナイルには敵対する勢力があると聞きます。それを利用したいのですが、交易ルートもなく、サハラ平原の勢力圏はあちらにあります。敵勢力を割るには、危険が伴います。」
今日も今日とて密室会議。テヲとイナンダの、義母-娘婿会議が行われていた。傍から見れば不倫現場である。
「空気圧と熱源確保が同時に可能な機関を得られたので、天の根の国への潜入も意味があったのですが、二度目はないでしょう。あの鍵穴のない壁に入るには、我々の理解を超えます。」
「さすがに、もう一度拷問は受けたくないです。」
「そういえば、この間来た使者はどうしているのですか?」
「ワカヒコは、タキリ姫がたらし込んでいます。いやあ、彼がいい男でよかったですよ、気合の入り方が違う。それにワカヒコも乗り気で、よっぽどあちらの国での待遇が悪かったのだと。」
「タキリ姫がお気に入りとは、どんな面構えか見てみたい。」
「シュッとした細面で、体つきも細マッチョで、服のセンスもいいので、女性受けはいいかもしれません。」
「しかし、それだけですか?気に入るのは理由があってしかるべきでは?」
「彼は礼儀正しい。それに行動スマートで無駄がない。しかし女性の押しに弱い。男性相手では積極的ですが、女性には結構聞き役に回って要望を受け入れます。タキリ姫が王位継承権のある身分である点が、彼の中で打算的に働いているおかげかもしれません。」
「何にしても、こちらの駒にする。監視は怠らないように。」
「はい。」
テヲは王と云うよりも、イナンダ王妃の傀儡であった。しかしながら、決して操られているという実感はない。なぜなら理にかなっているからだ。決定権をイナンダ王妃が絶対的に保持しておらず、二人の合意の上で成されている。まるで長年よい沿った夫婦のようだが、ある程度の条件で予測すると、おのずと同じ結論にたどり着く。論理的思考で先を読む同士だと、話が早い。
「ワカヒコは無事かの国に潜入したようですね。」
「はい。先方も交渉を受け入れる準備をしてると報告があったので、よい知らせを持ち帰ることでしょう。」
「かの国が、条件を易々と受け入れるでしょうか?それに使者が無事帰る保障はありません。」
「逮捕拘束される可能性についてホノヒコの例があります。裏交渉の返答には、ホノヒコの処遇もありました。現在かの国で保護しているとの事で、救難救助と保護に掛かった費用と受け渡しの条件があり、これは受け入れがたい条件があります。人質としての価値があると見込んでの事だと思われます。」
「規模が小さいといえ、少数精鋭のワカヒコの部隊はむざむざ捕まるとは考えにくい。しかし、敵の懐に入ってしまっている以上は犠牲を覚悟しています。」
「またしても人質をとられて人間の盾にされては、人権派にたたかれます。」
「議会を説得するにしても、平和的解決が第一ですから、下手に攻め込む事も出来ませんし、どうしたものかしら。」
天の根の国では、ヒルメが悩みに悩んでいた。なにせブレインになる人物がいない。3000歳のヒルメにタメ口いえる人物は少ない。だから、過去の記憶を持つククが頼みの綱なのだった。今年教育課程を卒業するククを宇宙の研究所に放り込む。なんとしても育成を早めたいと思うのだった。




