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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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37基地外活動

「基地を作りましょう。」

 ヒルメは謁見の間で突拍子もないことを言い出した。

「ホノヒコを送り出して、はや3年が経とうとしています。消息不明です。洪水被害があって、その被害を調べましたが、当の船だけありません。さすがに外海にでたか、敵に捕縛されたかを疑わなければなりません。そこで、かの国を懐柔するため、通商ルートで通達を出したいのですが、ホノヒコのように国に入る前に手を打たれてしまいます。そこで、武力による後ろ盾が必要です。そのためいつでも攻めることが出来るという、威嚇が必要です。」


 防衛のため武器を用意するのは当然だが、石器時代に鉄器があれば十分だった。しかしながら、今回の敵は鉄器をもち、アルミ、チタンをも持っている。ただの鉄のやじりだけでも強力な時代で、それを防ぐもしくは、凌駕する武器を持っている相手は手ごわい。


「海は、かの国の独壇場でしょう。造船はしますが、実用するまで期間がかかるでしょう。それよりは飛行部隊を組織して当たった方が無難でしょう。そのためには、かの国を射程に収める範囲で基地が必要です。」


 この時代、スエズ運河がない。有史ではナイル川と紅海をつないだという記述もある。

 船を作ったとしても大陸の東たとえばザンジバルから大陸の北西、ジブラルタルに運ぶだけで相当の時間と労力が必要なだけでなく、航海の技術も内陸国では発達もしていまい。 空母とかあればなんとかなるかも知れない。でも地中海全域をカバーしようと思ったら。空母打撃軍がいくついるだろう。それより基地を作ったほうが無難だろう。


「御前会議の結果、ワカヒコを向かわせることになりました。」

 ワカヒコは宇宙軍人である。ククより小さいが、だいたい日本人の平均身長くらいの大きさで、カズチほどの体躯はないが、文明の兵器の扱いに長けている。ムー人の文字が読めるという特質である。


 ちなみにムー人は小さい。比較対象がなかったので気づかなかったが、150cmくらいしかない。大きいといっても170cmくらいである。その中でダントツに小さいヒルメは120cmくらいである。アフリカ人でもそんなに身長は高くなく、男性の平均で170cm、熱帯に住むピグミーは150cmくらいしかない。ケニアの2mを越す人たちは結構レアな人たちである。



「西サハラには、交易ルートがありますが、山賊たちの密輸ルートですので、潜入捜査員による地道なパイプ作りによって、かの国の実情がわかってきました。」


「かの国の言語は、ムー語を元にしており変化をしており、我々の言語の変化も合わせて、かなりの違いがありますが、対応できないレベルではありません。それはかの国の者と接触した者が対比した言語によって、解析されています。」


「技術的には後退しているのですが、熱力学や圧力技術に於いて発達しています。ただし燃料に石油を発掘できていないため、動物油や木炭が主なエネルギー源ですので、大した出力ではないでしょう。」


「しかしながら、かの国にはレヴィアタンがある。あの地上の太陽(核融合炉)に火が入れば、レヴィアタンの兵器(ミサイル)が脅威になります。あれを沈黙させるには、空から飽和攻撃出来る戦力が必要になります。」


「石油の産出する地域を押さえます。タッシリナジェール周辺に石油が出ると、オモイカネ文書にありそこを補給基地とし、ケロシン(航空燃料でいわゆる灯油が主)を調達します。」


「サハラ湿原、ナイル下流地域の協力者を通じ、ミサイル基地と空港を秘密裏に準備をしています。」


「戦力に関して、航空戦力の試験が完了しております。最終局面において十分な成果を上げる事でしょう。」


 ヒルメが、長口上を述べると、批判や不満などを無視して、さっさと奥へ引っ込んだ。


 さてどうしたものかと周りは騒ぐが、幹部たちはすでに通知済みであり、代官たちは蚊帳の外である。

 すでに決定済みの国家事業は実施されるのみである。






「俺がいけば一発だ。」

 ワカヒコが、誘導弾を前にイキっていた。戦車も一撃で撃沈する、でもワカヒコの力ではない。

 偵察ヘリなどに搭載可能なサイズで、ハンドヘルドできる無反動砲、対地対空両方に対応可能。

 発射架台付のものは、あまりに目立ち輸送も難しい。それなら遠距離から弾道ミサイルを打つか、ミサイルキャリアーから投下したほうが安全。



「西の輪中には、エージェントがいる。そこから密輸ルートを通って、アクロポリスに入る。米や麦、鉄をやつ等の必需品だ。その輸送隊は、中間点で荷物を引き渡すと引き返すが、敵の商隊に雇いいられる予定になっている。密輸ルートは身元が割れると危険だ、途中までは黒人として振る舞い、後半はムー人として振舞うのだ。都に着いてからは協力者を通じて、王への謁見を実現する。」


 カズチは、ワカヒコに作戦の概要を伝える。黒人では、かの国では目立つため、黄色人種が出向く。そのためカズチは不満ながら、作戦実行を譲ったのである。


「大丈夫さ。うまくいくさ。」

 ワカヒコは気軽に答える。現代でも武力が圧倒的だとそんなものか。







「かの国に次なる動きがあるようです。」

 イナンダ王妃とテヲが辺境からの報告を受ける。

「かの国からの物資の流入量が調整されている様で、通商の交渉で人の流入が頻繁になっており、素性の知れぬ者も紛れ込んでいる様です。それに伴って、周辺で人と物が集まっています。」


 イナンダ王妃は握りこぶしを鼻の前に構え、考え込む。


「確かに、何らかの準備をしている。物資と人の流入を続けて監視。」


「はっ。では監視に戻ります。」

 諜報員は、任務に戻っていった。


「どう思います。テヲ」

 イナンダ王妃はテヲに意見を求めた。


「人と物を集めていると云う事や、敵のスパイが紛れ込んでいるという事実から、戦いの準備をしているのでしょう。」


「テヲには、この書簡を読んでもらいたい。」

 イナンダ王妃は、傍らのかばんより木箱を取り出す。


「これは?」


「かの国よりの書簡です。それには、国交正常化、通商の自由、人的交流としてワカヒコという者を遣わすと書いてあります。」


「国交樹立を望んでいると。しかし周辺の動きが気になります。」


「相手も無条件にとは思っていないでしょう。それに武力でいえば圧倒的な差があります。いくらでも条件をつけられるでしょう。しかしこちらも唯で受け入れる気はありません。」


「そのワカヒコという使者。懐柔することが出来れば、人質にする事が出来ます。あのホノヒコのように。」


「二のテツは踏まないでしょう。今度こそ強靭な人物を派遣してくると思われます。」


「いくら強靭でも、弱い部分があります。今回もうまく引き入れます。そのために包囲網を緩めて入国させましょう。油断させて付け入る。」


「うまくできますか?」


「はい。そのための同盟であり、そのための後宮ですよ。この3年で多くの交わりが成果を挙げるときです。」


「では、任せましょう。」


「はい。では早速。」


 テヲは、イナンダ王妃の御前を離れた。





 そんなことは露知らず、ワカヒコはまんまと王都まで、すんなり入城してしまったのである。

「簡単じゃないか。ガバガバだな。」


「早速ですが、王城からの書状がございます。」


「なに?着いたばかりだぞ。」


「それは、事前の準備があってこそです。」


 書状を読むと、イナンダ王妃からの招待状である。王に会う前にホノヒコの件で話しをしたいという内容で、王城ではなく、少し離れた離宮での会談の申し出だった。


「あやしいな。だまし討ちされないか?こちらも準備してかからないとな。」

 ワカヒコは、テロがいつでも出来るよう配下に申し付けた。




「来ますかね。」


「来るさ、人質もいる。それに情報も知りたいだろう。」

 テヲは、会場の準備をしていた。


「タキリ姫様には無理言って同席いただく。この策略に協力してくださる。」

 タキリ姫はスーサ王の娘だが、イナンダ王妃の娘ではない。スーサ王の親戚筋にあたり、現在のリビア周辺を治める諸侯から側室を娶り生まれた娘である。







「来たな」

 ワカヒコは来た。従者を数人連れた若者である。たくましくもあるがシュッとしている。


「テヲ君。わたしじゃないとだめ?」

 上目遣いでテヲに甘えた声で話しかける。タキリ姫も女である。いい男には目がない。


「ええ、タキリ姫にうってつけですよ。いつもやわらかい雰囲気に包んで話が霧散してしまう。」


「人聞きのわるい。別に話をうやむやにしているのでなく、雰囲気が悪くなるのが嫌なのです。」


「それがいいんです。無理に結論をつけてはいけない時もあります。」


「そうですか?あんまりいいことでは無い気がします。」



「こちらでございます。」

 ワカヒコを会談の場へ導く係員が、扉を開けた。


「よく参られました。ようこそ、海原の根の堅洲国へ。」

 テヲがワカヒコを迎えた。


「恐悦至極に存じます。お招きありがとうございます。」

 ワカヒコが返答した。


「本日、お越しいただいたのは、わが国と貴国の情報共有と行く末を話し合うためです。」


「それは、同意します。私の同じ目的で参りました。」

 テヲとワカヒコは、共に目を合わせ、意思を確かめ合った。


「私は、イナンダ王妃の名代であるナムチ・テヲ、こちらにおわすのは、スーサ王の娘、タキリ姫であります。」


「ごきげんよう。ただいまご紹介賜りましたタキリでございます。」

 タキリ姫も挨拶をするが、ワカヒコが意外と若い男であり、幼さがのこるが美少年である。さすがに女である。いい男には弱かった。


「ワカヒコさまは、この国をどう思われますか?」

 タキリ姫はワカヒコにぐいぐい食いつて、話を始める。


「到着したばかりですが、にぎやかな都市で、活気に溢れている。私のいたところは規律が厳しく活力に欠けていまして、面白みがありません。しかしこの都市は明るい。」


「それでしたら、後で繁華街に行かれませんか?私が案内しますよ。」

 テヲは早速、飲み屋のレパートリーを頭に浮かべた。


「あら、テヲ、わたしにもその・・・・・・ご一緒にできないでしょうか?」


「ええ、それは構いませんが・・・・・・」

 テヲはタキリ姫がいけそうな所へジャンルを切り替えると、酒が無いのでちょっと困った。


「では、私の屋敷で宴を催しませんか?」

 タキリ姫が切り出す。


「いきなりいいんですか?」

 テヲは驚きを含めてたずねる。


「いいんです。時間は関係ありません。」

 テヲは、スーサ王の血統はみんな猪突猛進なのかなと。


「まずは、会合を始めましょう。」

 客人であるワカヒコから突っ込みが入った。


「はい。話を戻しましょう。後日、王に拝謁するとき、合意された内容を持って条約締結式を行うための事前調整です。数日の期間がかかるでしょう。」


「いくつか案がおありで?」

 テヲとワカヒコが真剣な話をし始めると、タキリ姫は自前の煙に巻く戦法をはじめる。


「テヲ、ワカヒコ様、その話はわたしの屋敷で行いませんか?」


「え?でも警備がうすくなってしまいますよ。」

 テヲは、実質これをねらっていた。


「大丈夫です。浜の離宮ですから、入り口を固めればかなり堅守になりますから。」

 逆に海に出るためには、タキリ姫をたらしこむしかなくなる。タキリ姫もなんかヤル気まんまんだから、ハメることが出来そうだと。


「では、宿舎はどうしますか?」


「そんなの、わたくしの屋敷でよいではないですか?何か不満でも?」


「いえ、姫の離宮であれば申し分なしです。」


「よろしい。では今行きましょう。すぐ行きましょう。」


「気が早すぎますよ。」


 会合が進み、夕刻になると姫はワカヒコを連れて、離宮に急いだ。


 それからの会議はといえば、連日の宴会と夜に寝かせない姫の攻めで、ワカヒコはヘロヘロである。


「将来は、お父様に頼んで、属州の王になってくださいまし。ワカヒコ様」


「それはいい。なるほど、明るい大地を治めるのも悪くない。」


 ワカヒコはすっかりいい気分であるが、彼も軍人なのですんなりもらおうとも思っておらず、少なくとも母国のために、この国を占領する足がかりにしようと思うのだった。

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