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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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36王様と私(わたし、わたくし、あたし)たち

 ククは、衛星軌道上の”宇宙ホテル”で、はるか彼方のプラント、居住地(スペース・コロニー)(コロニーというのは欧米ではいいイメージでないから、セツルメントと言うらしい)からに帰りの便を待っている間に、暇つぶしがてらトーラス(ドーナツ状の筒)を周る。一周6km。一分間で1回転する事で1Gを発生している。散歩すると元の位置に帰ってくるのに1時間くらいかかる。

 トーラスには、居住区、農地、工場があり、ここで暮らしている人もいるが、ごく少数であって、地上、宇宙ホテル、居住地の勤務を交代で行っている。





 順調に帰りの便が来れば、10日間の滞在になる。静止衛星軌道上までは3日かかったのに、宇宙エレベータの端っこ10万km先には1日、さらにコロニーまで1日で往復でも4日しか掛からない。残りの6日で物資の積み替え、搭乗員の交代など済ませるのである。




 コロニーでは火が使えない。内燃機関が使えない。宇宙では決まりを守らないことは死を意味する。計算された循環により大気、水、栄養素が決定され、それを乱さない人間でなければ生きてはいけない。したがって非常に規律が重視され、独創的な発想を考えなしに実行すると即死刑である。そのため新たな理論が生まれにくい。

 タバコが吸えないとか、麻薬が使えないとか、健康上の問題ではなく、宇宙で生き残るための規律である。それをしたい場合は地上に降りる。その反面地上の自然は過酷である。




「ヒルメ様、まだ終わらないのですか?」

 ククは、三日目にして退屈していた。ヒルメに食堂街で愚痴を垂れる。

「まだですよ。データ転送して、データストレージに記録がされるまでです。磁気記録ですから、地上に戻ったらすぐサーバーに落として、ガラスディスクに転写してそれでやっと完了です。かなりの容量ですから時間が掛かります。」

 ヒルメは、事前にもしたと説明をククにする。転送予測は予測なので、少しは早いかもしれないが、うまくいくこともあんまり無い。


「でも、これだけ時間があると退屈です。本は目の前で寸止めされているし、娯楽といっても、この宇宙ホテルは文化が違って、慣れません。」


「退屈なのは解ります。仕事も娯楽も無いのはつらいです。しかし、だからといって惰眠をむさぼるのはお勧めしません。研究機関をたずねてはどうでしょう?」


「研究機関があるんですか?」


「この宇宙ホテルは、地上とコロニーの橋渡しをするのと同時に、居住区では出来ない異常な事をするためにあります。万一事故が起こっても、地上に逃れれば命は助かります。その場合、このトーラスは衛星軌道上から離れ、宇宙の彼方に飛ばされます。ここの住人は、その覚悟あって居留しています。農地や工場も大半が研究のためにあります。まあ娯楽施設は精神衛生上のためですが、娯楽も研究の一環です。」


「へえ?ここ全部なんですか?」


「そうですよ。ですから優秀な技術者や研究者がここには揃っています。ですので感情だけで行動する人が少ないです。芸術性には欠けますが、女性も少ないですから、華やかさに欠けますよね。」


「そういえば、女性はあまり見かけないですね。」


「女性が論理的に働こうとすると、脳の橋梁(バンドバス)の数が邪魔をするので、非論理的になりがちです。女性が成果を挙げるためには、計画的行動、ルーチンワーク、芸術的思考、家政科の延長の仕事をすると挙げ易い。しかしながら、論理が別の結論に結びつかない様、丁寧にビルドアップすることができれば、非論理的に横に行ったり斜め上に行かなくなるので、決して出来ない事じゃありません。3000年かけても出来ない人は出来ないし、出来る人は瞬時にできる。あなたはどちらかしら?」


「すみません。意識したことが無いです。」


「それは、男勝りだからかしら?」


「そんな、私がそこらの男より大きいからといって、女ですよ。女なんです!」

 ククは、デカイ男勝りのあつかいは慣れているつもりだったが、女であることに変わりなく、やっぱり女扱いしてほしいし、さすがに頭にもくる。


「男とか女とかは関係ありませんね。しかし能力が無い者は評価されません。世界は残酷です。わたくしも能力無くして女王とは思われたくない。やせ我慢です。」


「能力が有るかと言われると、比べるものも無いので・・・・・・」


「そうですね。ではやはり打ってつけですので、研究所に行ってみてはどうでしょう?といっても、この宇宙ホテルは研究所だらけですから、歩けば当たりますどね。」






 というわけで、ククはトーラスを一周、また一周と周っているのである。

 あたりを付けて、飛び込みをし、見学しては離れる。を繰り返している。テーマパークのすべてのアトラクションを制覇、する様などう考えても1日じゃ無理という数だ。


「あしたは、乗り物を用意しよう。」

 一応電車は走っている。環状線右回り左回りが走っているので、目的の場所があれば利用したほうが早く着く。一区間ごとが短いので歩いたほうが周囲確認できるので、つい歩いてしまう。重量バランスをとるため、農地、工場、住居と間を空けて立地している。だから結構建物までの距離が開いていたりする。


 ククは、電動自転車(ただし回生ブレーキのみで充電する。)を用意した。三輪車の形態なので誰でも乗れる。

「運動も義務だし、ちょうどいいよね。」


 研究所の調査をする事で、今後この研究ドーナッツに彼女が常駐することになるのだが、それは後のお話。





 さて、地上に、しかも海に話を戻そう。


 海原の国ではテヲと愉快な仲間たちが本日も大騒ぎだ。


「テヲさま。今日の実習で作った、あさりのスープをお召し上がりください。」

 サーラが、料理実習で作ったスープを持ってきた。

「私の牛肉の香草焼きをお召し上がりを。」

 セセリも負けじと料理を運ぶ。

「セセリ様、高貴なお方がわざわざお食事を作らなくても、料理人に任せればよろしいのでないかとおもいますが。」


「サーラさん、あなたも出自のハッキリした人ではないですか、料理なんて使用人に任せればよい事。」


「いいえ、これくらい出来なくては、女として示しがつきませんわ。」


「それは、同感です。妻が夫に尽くすのは当然です。」

 論理的とはかけ離れた闘争が繰り広げられていた。


「おお、スープにおかず、あと主食があれば。フルーツがあれば完璧だな。」

 とりあえず、メシのことだけにしようとしているな。


「パンは、今朝のトトリが置いていったのがあるから。


「なんであの子が!!」

 地味な娘。トトリは、サーラにとっては危険水域の外の外。危険なのはニーナと銀髪のその一族。そう思っていた。セセリは一応正妻なので平静を保っているが、8歳も違う子供でも心中穏やかではない。


「トトリはいい子だよ。節約のため自国からの仕送りの麦で自炊して、えらい子だよ。おいしいパンを焼くからいくらでも入るよ。」


「でもなんで、朝にパンを置いていくの?」


「一緒に朝食を食べているから。パンだけだと味気ないし、おかずは俺が用意して学校に寄る前に済ますんだ。」


「なぬ!?」


「朝の稽古して汗を流したら。一緒にお風呂に入って・・・・・・」


「はあ!!なんでお風呂入るの?昨晩入ったでしょ?」

 セセリが昨晩、床を一緒にしているので、分かっている。確かに深夜にはテヲが部屋に戻っていったのは知っている。しかし、子供相手にまさか。


「ああ、朝はススで汚れていて、きれいにしてあげないとかわいそうだろ?」

 テヲは素直に答えたのだが、納得されそうにない。


「子供よ?いったい何したのよ?」


「洗いっこして、髪を梳かして、結ってあげて、服を着させて。」


「服まで着させているの?なんで?」

 セセリもここまで優遇されたことは無い。


「あの子にシて、アゲてるの?」

 セセリの勘繰りが深いところまでイってしまう。


「だって、あの子はいい子だけど、色々不足しているものが多いから、面倒見てあげたくなる。ほら、保護者だって要るだろ?」


「何もあなたが面倒見なくても、わたくしの兄に頼んで従者を回しましょう。」

 サーラとしては、子供一人の面倒くらい容易いことで、それで障害が一つ減るなら安いものだと。美しさも勝っているので、何なら特産の宝石で飾っても子供は子供だと、大して気にしてなかった。


「では、ぜひ!!援助(サポ)してあげて!!」

 セセリは、珍しくサーラを頼った。


「いいですよ?大したことないですから。」


「いや。トトリが嫌がる。気持ちはうれしいが、貸し借り無しでないとトトリは遠慮してしまう。だから、パンと引き換えでおかずを提供している。」

 テヲは、なぜトトリがパンを届けるのかの理由を言う。


「おーい。テヲ!!ぶどうだよ干しぶどうもあるよ。」

 ここに騒ぎを大きくする問題児。ニーナがやってきた。歳は14、妖精のように育った。


「おお!!いいところにフルーツが!!サンキュー。」

 テヲは事の事態がややこしくなる事は忘れた。


「出た。」「きやがった」

 セセリとサーラはこんなときは気が合う。


「契約農地で出来たぶどうだよ。みんなもためしに食べて食べて。」

 ニーナは、自国から持ち込んだぶどうを、荘園をかりて栽培している。ちなみにアクロポリスで販売もしている。


「あなたも来たのね。」

 サーラは嫌な顔してニーナのほうを向く。せっかくの美人も台無しな。

「あなたもテヲに贈り物?」

 セセリは正妻の余裕を見せるがごとく、引きつった笑顔で振り向く。


「あのね。男をつかむなら、可愛い子より、上手な子がいいって。」


「おい!!上手って何だ!?」

 テヲはこれには突っ込みを入れざるを得ない。


「そう言ってたよ。料理がうまい子がいいって。」


「なんだ。そういう事か。」


「でも、床がうまいともっといいんだって。」


「ズコー!!」

 やっぱりか。


「用が済んだなら、ぶどうを置いてお帰りください。」

 セセリは、厄介を一つ減らすがごとく追い出したい。


「まあまあ、これだけの食材が揃ったんだから、一緒に食べよう。」

 テヲはなるべく穏便に済ませたい。


「まあ、テヲが言うなら・・・・・・」

 セセリはしぶしぶ従うことにした。


「そういえば、即位の準備はどうします?」

 セセリはテヲに確認する。


「そうだな。どの規模にするかもあるし、新しい空気機関(ヒートポンプ)のお披露目もあるし。」


「ここで、国力を誇らなければなりませんし、テヲの威厳を示さねば。」


 テヲはスーサ王のあとを引き継ぎ王に即位する。スーサは、退位後行政ではなく、国軍の大王将に就任する。もともと行政は好きでもなく、イナンダ王妃がしていたので、当然ともいえる。実はこれはイナンダ王妃に差し金である。軍事費を抑えるために決裁権をスーサから離し、テヲに裏から口ぞえするための人事である。




 こうして、テヲは王になり、ククは先進科学を身に着けることとなり、ステージが一つ上がった。






 時代が変わりつつある。そう予感させた。

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