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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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34石の魔法

「下るときは見逃したが、今回は許さない。」

 上エジプトを勢力圏に置くホルスは上ってくるホバークラフトをにらんで言った。

 しかしながら、下るときは10機編成で、しかも飛ぶ”天使”たちがこれでもかと武力を誇示し、かなう筈もなく指を咥えて見ていたのである。




「ここらあたりはヤツらの居所だ。来るときは攻撃されなかったのか?」

 セトは乗員に聞いた。

「いいや。なにもなかった。在ったとしても殲滅しただろう。」

 平然と言いのけた。レールガンやレーザー銃、まして”天使”が居てはそれも当然。石のやじりや槍では歯が立たない。




 ホルスは、敵が移動する速度が速いため、あっという間に通りすぎてしまう。そこで川の岸に弓矢隊を配備し、包囲網を張って対処する予定だ。



 無駄な抵抗だった、あっという間だったのだ。数キロの隊列であろうとも、時速100km/hで水面を疾走する物体なんてねらえるはずがない。

 それに天使による迎撃が待っている。この時代に制空権などという概念はありはしない。


「本当に面白いように無駄な抵抗だな。」

 セトは脅威に思うと共に、同じ目にあわなくてよかったと思った。




「あれは何だ?空を飛ぶ羽虫は?」

 ホルスはなす術もなく、怒る気持ちも起こらないくらい、下りと上りで自分の庭を素通りされる様を快く思うはずもない。





 無事、セトは女王への親書を手に携え、城塞都市へたどり着いた。

 しかしながら、親書がでたらめだったのだ。

『この親書は、このセトにだまされ書いています。早急に捕らえて処罰をお願いします。そして下流で私は、囚われの身です。早く助けに来てください。』


 ホノヒコも、字が読めないことを良いことに、あることないこと書いているのである。

 審査に入るのだが、セトは捕らえられることも無く、城砦外の町に足止めされた。


「ホノヒコめ、嵌めよったな。しかし、ヤツも信用が無いとみえる。」

 確かに、親書を持って、わざわざ捕らえられに来る者もいないし、テロリストの様に身代金目的の人質交換をしている訳でもないので、当局としては実際に言葉に発している、女王陛下への拝謁が目的だろうと思ってはいるが、簡単に出来るはずもない。


 そんなこんなで、宿泊費は負担で、事務的な質疑応答をして、やり取りをする形式で情報交換する日々が続き、セトの苛立ちがピークに達した。


「いつまでこんな事をしているんだ。」


「セキュリティ上の問題で、簡単に中には入れないんです。それに女王陛下はわれわれの言葉も話しますが、もともとは別の言葉や文字を使うので、方言とかは謁見しても理解してくれるかは別です。」


「しかし、話は通じるのであろう。面と向かって話せばわかるだろう。」


「いえ、それは話をまとめます。面と向かっても、意味を違えては話は通じません。」


「そんなわけ無いだろう。言葉には(ントゥ)がある。」


「言葉の力は文字変えると、歴史が生まれるのだそうです。」


「なんだ、さっきから文字とは。そんなに大層なものか?」


「それは、私も文字を書けないのでわかりません。」


「なんなんだいったい。文字とは?」


 話し言葉と文書に残すのでは、文書力も然ることながら、話すときのジェスチャーや、熱意を、文字の表現で意味を頭で画像として展開できる事が出来ないといけない。”話が見える”というヤツだ。これが単に学校で習った通りや、文書の引用ではなかなか出来ない。ほんと難しい。エジプトは後に象形文字のヒエログリフと原始の紙パピルスを発明する。何かを伝えたいという熱意が生み出したのだろうと推測される。




 そんなやり取りがあり、結局謁見の許可が得られぬままセトは、下エジプトに帰ることになった。ただし、海原の根の堅洲国に対して、共同戦線を張る文書を得た。

 紙の文書をもらった所で何だと言うことで、恒久的に残る金属板へ刻印した。文字は意味がわからないが、それらしい証拠を得たのである。

 セトには鉄製の杖につける飾りが与えられた。装飾品であるが、石より硬い殴れば殺傷能力が高くなる。もちろん用途外であるが、鬼に金棒というやつだ。


 帰ったときには、洪水の惨状が待っていたが、それは古代ゆえに当たり前の光景であって、また立ち上がればよいと奮起することになるのである。










 ククは王都にきて3年が経っていた。


「見事に地獄のようね。」

 ククの言葉はティルトローター機から見るその眼下の、地獄のような赤い湖を見ての事だ。学校の遠足というには相応しくない。

 フラミンゴが飛ぶ。ビクトリア湖の南東にあるナトロン湖。

 新兵器完成の試験を、苛酷環境での使用を想定しての事だ。

 ナトロン湖は、塩湖である。その塩湖の具合が他と違う。炭酸ナトリウムを多く含む、苛性ソーダだらけだと思ってもらいたい。手で触ると溶けてぬるぬるになる。


「うっわ!!気持ち悪い!!赤がドギツイ。」

 ミミは見たまんまの光景への感想を言葉にした。


「さすがに、これは実験じゃなきゃ嫌だわ。」

 ククの言葉通り、塩分による影響を調べるための実験である。

 新兵器である拡張儀体群エクステンションアームズはまだ、未完成である。試作機は、先だってのナイル川下りで試験運用されたが、海原の国に対しては海での試験が出来なかった。そこで、代替案として強塩基の内陸湖のナトロン湖に白羽の矢が立った。


 ククは、実験をしにきた。それは、アルカリ性のミネラル分溢れるこの湖でソーダ灰を採集して、化学プラントに放り込む材料に適正か調べるためだ。目的が違うが行き先に興味があるので着いてきたのだ。

 天然に石鹸として使えるだろうが、紙の製造などに使う苛性ソーダがほしい。





「じゃあいってくるわ。」

 ミミは他のトップガンたちと一緒に、後部ハッチから降下する準備に向かった。

 現代飛行機の種別として輸送機の部類の”C”がつくような機体は後ろが開く。旅客機だって開くが、あれも一種の人を運ぶ輸送機。最近はティルトローターの”V”がなにかと話題にあがる。



「いってきます。」

 ミミは、フックを掛け降下準備をし、ある程度高度が離れると、飛行ユニットを展開し”ビーン”という風切音をたてて飛行する。


「調子はいいみたい。」

 ミミは自由自在に空を飛ぶ。


「あんまり調子にのるんじゃないよ。」

 この試験部隊に所属する、ガガという娘が無線で割り込んできた。


「え?なんだって?うるさくて聞こえないよ。」

 ミミは、聞こえないそぶりなのか、本当に聞こえないのか、難聴をアピールした。

 実際、うるさくて仕方がない。ローターが体重の軽い女性でも飛び回る事が出来るくらい回っているのだから。雷が至近距離で落ちるような音がする、音速戦闘機のジェットじゃないだけましだが。


 ジェットエンジンを搭載する、滑空型のフライトユニットを搭載する、ララは上空から様子を眺めていた。

「いいわねー。自由に空中停止ができて。わたしは飛びっぱなしよ。それに姿勢も変えられないし。」


「我々は、我々の職務を果たせばいい。」

 同じく滑空型を装備するリリが最後尾からやってきた。


 飛行ユニットの試験として、回転翼と固定翼の2種類が用意された。


「あっちのほうが速いよね。キーンって。」

 ミミが上のほうを向いて、ガガに話しかける。

「あれはあれで、大変みたいだぞ、あの体勢から動けないらしい。それに浮かべないし、一度降りると飛べないからな。あれは強襲用だ。」


「あれはあれで、面白そうじゃん。」


「それはそれだよ。それより湖面近くまで降りて影響を確かめよう。」


 ミミとガガは湖面近くまで近づくとその禍々しい湖面がさらにいっそう際立つ。

 でもフラミンゴはいる。フラミンゴは、近づいてくる物体から逃げるように一斉に飛び立つ。


「鳥がたくさんいるぞ。ピンク色の。私のカラーだ。」

 ミミは、ピンクの髪とパイロットスーツを指して言う。


「わー鳥の群れに入ったみたい。」

 ミミはわざわざ逃げているフラミンゴに追走するように飛んだ。


「び~ん ぅぅぅ」

 快調に見えたが、ローターが異音を吐き出した。

「あれ?なんか落ちてない?」


 若干回転数が落ちている。


「おーい。速度がおかしいぞ?わざとか?」

 少し間を置いて見ていたガガが異変に気づいた。そして近づこうとすると、自らの機体も異変が起きていた。

「回転数が電流値の割りに上がっていない。どうした?それに、重たい?」


「揚がれ揚がれ!!」

 ミミは上空に一旦戻ろうと出力を上げるが、なかなか上昇できない。


「おーい。助けてくれよー」

 ミミはガガに助けをもとめたが。


「異常が発生したか。奇遇だな私もだ。」


「だめじゃん!!」


「おーい、リリ、ララ。聞こえるか。」

 ガガが冷静に上を飛んでいる仲間に通信する。


「聞こえるわ。」

 リリが応答する。


「機体の異常が発生した。救援求む。」


「分かったわ。速度を維持してなるべく岸に寄って。湖面が浅いから落ちたら死ぬわよ。」


「了解。聞こえたなミミ。」


「ちょっとー!難しいって。こいつゆうこと聞かないんだよ。」

 ミミは低空を飛んでいたため、影響が大きいようだ。



「速度をあわせるから。フックをつかむんだよ。」

 リリが、高度を下げ速度を合わせガガの前方へ出る。


「軸あわせOK。アンカー射出!!つかめよ。」


「こい!こい!きたー!!」

 ガガはフックをつかんで、そのまま牽引される。


「このまま、輸送機まで行くよ。」


「了解。」



「ミミ!次はあんたよ。」

 ララが、ミミに近づく。


「おおっと!!やべえ!!。あがんねー」

 ミミは、一つづつローターが固まって動かなくなる恐怖と戦っていた。


「とにかく、全力で飛んで!!」

 ララは救援に向かい、高度が湖面すれすれになる恐怖と戦っていた。


「やべえよ!!、足がついちまう!!」

 もう、湖面ぎりぎりだ。


「もう少しだから!!」

 ララが後ろから高速でせまって追い抜く。


「もうだめだー!!」

 ミミの足が湖面を叩く。


「アンカー出します!!つかんで!!」

 ララがアンカーをミミに直接当てて引っ掛けるように射出した。


「うが!!」

 アンカーが飛行ユニットのアームをつかむ。ミミは衝撃に耐えながら、引きずられるようにそのまま岸の方向に牽引された。



「これ、どうやって降りるんだよ。」

「さあ、どうやって降りる?」


 ミミはこのまま地面に叩きつけられるんじゃないかと、ララはとりあえず、燃料切れまで上空で滑空することにして時間を稼ごうとしていた。



「うーん。石灰化してる。」

 ククは、ユニットを診て石化していると見た。

「温水とナトリウムの蒸気圧のせいで固まったのね。」

 食塩でも水に目いっぱい溶かすと、飽和蒸気圧で75%rh相当の相対湿度を表す。結構湿度としては高くなる。当然、塩が析出しているので、塩化物の蒸気だって発生している。



「とりあえず、あれを何とかしたいわね。」

 ククは上空を見て言った。上空でミミを引っ張って旋回しているララの機体があった。



「おい!!ちょっ!!、もっと大きく!!酔いそう!!」


「贅沢言わないで!!」


 上空では違う意味で切羽詰っていた。


「一応、落下に耐えるシステムあったでしょ?」

 リリがガガに言うと。

「あれ。使った事ないんだけど。」

 ガガは使った事はないが、滑空ユニットはパラシュートで降りるしかない。

 高層ビルの緊急脱出パラシュート、某リアルロボットアニメで大気圏突入するアレと同じである。


「ミミ!!脱出装置を使え!!」


「え?でもどうやって使うんだっけ?」


「飛行ユニットをまず外します。」


「まず外す。」


 ハードポイントをパージして、人が落ちてくる。


「バカ!!こんなところで外すな!!」


「あれ落ちてるよ?あたし死んじゃう!!」


「引っ張ってるのはユニットのほうだから当たり前だ!!はやく、胸のところにわっかがあるだろ!?それを引っ張れ!!」


「死ぬのはいやぁぁあっぁぁぁあ!!」

 輪のついた紐を引っ張るとバックパックからパラシュートが出た。


 仰向けになりパラシュートにより地面にぽよんと着地した。



「・・・・・・助かった。」



「よかったな!!生きてるぞ。」

 ガガはミミのヘルメットをとり、ピンクの髪がふわっと広がる。


「ううぇぇ・・・えぇぇっ・・・」


「泣くなよ。」


「だっっで・・・」





 リリも降りてきた。

「おー生きてる。生きてる。」


「あんたもひどいわね!!」




「やっぱり機械ものは塩分に弱いのね。塩害対策どうしようかしら、コーティングとかフィルターとか、蒸着しにくくするか、表層が剥がれるほうがいのかしら。」

 ククは、化学的に対策とる方法を考えた。




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