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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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33人生墓場(独身貴族)

 テヲたち、交渉部隊は10日かけてやっと現在のアレキサンドリア沖へやってきた。


 この時期ナイル川にはカノプス支流が存在しており、アレキサンドリアに流れるラシード支流よりも西に河口が一つ多かった。


 このカノプス支流は海への玄関口としての役割があり、ラシード支流より人の出入りは多い。

 アレクサンドロス大王(アレクサンドロス大王、マケドニア系ギリシャ人。征服したペルシャ周辺の言語でイスカンダル。)にちなんだアレキサンドリアはもちろん後世のものである。


「つまらない船旅もひとまず終わりか。」

 ギビルは振るう所もなかった、石斧を振り上げる。


「おい、危ないじゃないか。ただでさえ狭いのに人のいる所で振り回すな。」


 テヲが、船底にある狭い船室で体操座りでじっとしているのに、いきなり立ちやがってしかも鈍器を振り回す奴があるかと苦情を申し立てたのだった。


「ああ、悪いな、でも体がなまってしょうがない。」


「そうかも知れないが、狭い船なんだ。陸に上がってからにしろよ。」


 船自体はあまり大きくない。せいぜい15mあるかという所。古代の技術でフェリーなみのものは作れない。素材はレバノン杉で浸水防止のため天然コールタールで船底をコーティングしている。外洋に出るには心もとない、したがって、よく沈む。



「もうそろそろナイル川の河口だ。ここらは、ナイルの民の支配地域だ。そろそろ準備しないとな。」

 ギブルは、そう言って武装を整えているのである。


「ここらは、支配地域じゃなかったのか?」

 テヲは、てっきり年貢が入ってくるので、勢力圏内だと思っていた。


「ところがだな。ここいらには砂嵐の化身と呼ばれる凶悪な領王がいて、そいつが強い。そいつの振りかざす杖が(いかずち)を起こすと言われるほどだ。」


「そんなのが居るけど、友好的なんだろ?」


「それがどっこい、そこいらの島や半島や砂漠の連中とのいざこざには負け無しさ。でも、スーサ王の軍勢には一方的に負けている。従っているのはスーサ王だけさ。」


「それは厄介だ。平和的に領土に入れてくれそうにない。使者だけでなく、地域の支配者まで懐柔しないといけないのか。」


「貿易目的を装えばまあ大丈夫だと思うが、そしたら、カノプスの方だな。ラシード方面で漁村くらいしかないから貿易には見えないな。」


 だいたい陸沿いを航行しているので、近いほうに行ってそうと思いきや、クレタ島方面へ寄って補給を行って来ているのである。距離的にはラシードが近い。



「ギブル様、変な船がこちらにやってきやすぜ。」

 監視役の船乗りが報告を上げてきた。船の方向を指差し、豆粒ほども見えない。よくもまあ見えるなと思う距離だ。


「どこだ。ナイルの民か?どんな船だ?」

 ギブルにも見えない、船乗り特有の能力だろうか?



「船の癖に帆も櫂もない。向かってきています。」


「なんだって?どうやって進んでいるんだ?」

 ギブルが、エンジンやモーターなど知る由もなく、まして飛行機に分類されるホバークラフトなど想像のラチガイである。


「形はどんなだい?」

 テヲが船乗りに尋ねると。


「なんか、船底が丸っこい。なんだいありゃ。あれですすむのか?」


 船特有の先端がとがっているのでなく、丸いとかテヲの持つ古代文明の知識にも無い。


「なんだい?それは船なのか?」


 その船?はどんどん近づいて、視認できるようになると、ますます不可解で、大きな羽音を響かせているのだ。うるさい。


「とりあえず、合図を送ろう。ぶつかられても困るし。」


 船乗りは、旗をふり存在を知らせる。左手の旗は上げ、右手はよける方向とわかるよう振った。


 ところが、その船一直線にやってくる。こっちがよけている方向にだ。


「なんだあれは、敵の船か?」


 ギブルは、セトの襲来かと警戒しだした。

「弓をもて、皆のもの船団を拡散させ、あの船をねらうぞ。」


 兵たちはあわただしく準備を始める。


 そうこうしているうちに、その船が目の前にやってきた、と思えばなんと目の前で船の速度が減退したのだ。急ブレーキなんて船に無い。逆噴射したのだ。

 現代の船にもスラスターや、逆回転なんてあるが、極端すぎる。



 その船?から声が響く。


「えー。わが名はホノヒコ。天の橋立よりきた天使である。汝らの旗印は聞き及んだ海原の国のものではないか?」


 漁具である、三又の釣針(現代風でなく骨に逆さに返りがついている)を意匠にした旗であり、先の事変にも残されていた。


「たしかに、われわれは天の根の堅洲国からやってきました。私は、テヲ、ナムチ・テヲと申します。」


 テヲは、相手が名乗ったので、名乗りを返した。


「やや、そなたは、かに聞き及ぶテヲ殿であるか。コレは奇遇な。」


「そんなに有名ですか?」


「そりゃあもう。あの要塞から逃げおおせた不埒ものは他に居りません。それにもう生きていないと思っているくらいで、普通なら生きて帰るなんてないですよ。」


 いきなり砕けた言いっぷりにかわった。


「そりゃ、王様にも死んだと思われていましたから。」


「それにしてもよく回復されましたね。医療がすすんでいるんですねぇ。」


「いやいや、まだ不自由があって、不便なところもあるんですが、日常生活は送れる位になりました。」


「完治はしてないんですね。わが国がしたことで申し訳ありません。こんなところまで来れるまでは回復してるとは驚きです。」


「まあ、今回天使様が川上から来られると聞きましたので、親睦を深めようと参じたしだいです。」


 答えるや否や、船から人が出てくる。


「それは、奇遇な私もその使命を帯びてやって来たのです。」


 ホノヒコが腕を上にあげ、武器を持っていないとわかる格好で出てきた。当の本人は単に話が通じそうだと喜んでいるだけである。



「話が早い。では早速交渉の準備をいたしましょう。」


 テヲが、まず交渉のため、どちらの船で会談するかを取り決めようと会話をすすめようとした。


「ちょっとまって。僕、帰ることが難しいんだ。だから交渉しても国に伝えられるか判らないんだ。」


「え?」


 さすがに困惑である。本当は天の根の堅洲国と平和的に技術を導入したいので、国と国との交渉にならないのでは意味が無い。

 帰れなければ受け入れるしかないが、この人物が解らない。技術を持っていればいいが、何者かもわからないうちに受け入れる訳にも行かない。


「あのー。帰れないって、どうして?」


「ああ、それは訳があって・・・・・・護衛の部隊が災害に巻き込まれてしまって・・・・・・全滅してしまって・・・・・・」


「あー。それはお気の毒に。でも使命を果たされれば、私どもが送り届けましょう。」


「それはありがたい。・・・・・・けど。」


「けど?」


「ほんとは9隻あった船を8隻失ってしまった責任が・・・・・・」


「仕方ないではないですか。災害ですから。」


「そうなんだけど・・・・・・やっぱりねえ・・・・・・」


「とりあえず、先のことは後で考えましょう。今はわが国へお越しくだされ。」


「・・・・・・じゃあ遠慮なく。」



 こうして、船は、海原の根の堅洲国を目指した。






「わが国に帰ったら、私は王女と結婚します。結婚式に国賓として出席をおねがしたいのですが。」


「え?」


 帰りの船で、ホノヒコの船に同乗したテヲが、結婚式への招待を頼み出た。


「それは、光栄なことだけど、僕でいいの?」


「ええ、国のお客様ですから。大歓迎です。」







 国へと帰ったテヲたち一行は、その足で王宮へ向かい、かの国の使者の存在と船、そして交渉の準備を報告する。






「よくやりました。テヲ。しかし運よく使者を捕まえましたね。」


「ええ。それはこれ以上ないタイミングで。しかも使者は御し易い(ぎょしやすい)うまく利用しましょう。」


 イナンダ王妃のみならずテヲも曲者である。この二人腹の中は真っ黒だ。


「使者の扱いは、テヲに一任しましょう。それにあの船にリアクターが積んであるのは幸いでした。」


「ええ、一から造らなくて済みましたね。」


「あとは、資料があればよいのですが、あの男使えるかしら。」


「一応は技術者みたいなので、技術の吸い取りに役立つでしょう。交渉は下手ですが知識はあるようなので。」


「では、骨の髄までしゃぶりましょう。」






 こうして、ホノヒコを真綿で首を絞めるように利用しつつ、結婚式の準備も進められ、結婚式前夜がやってきた。


「とうとう明日なのね。私たちやっと結ばれるのです。」

 セセリは、花嫁衣裳を前に涙ぐむ。とっくの昔に物理的に結ばれていないか?と思うが、親の反対を跳ね除けての結婚なので、感無量だろう。


「明日からは、王子様ですね。」


「あんまり性に会わないな。王子なんて。」


「呼び名なんて何とでもなるわ。大事なのは王位継承権。これで次の王の権利が与えられますわ。」


「でも、王なんて難しい立場。うまくいくんだろうか?」


「大丈夫よ。お父様はなにもしてないじゃない。」


「王妃様がやってる事をやらないと・・・・・・」


「あ、私、お母様の代わりをしないと・・・・・・」


「いや、その辺はうまくやっていこう。二人で力を合わせれば何とかなるよ。」


「そうね。がんばるわ。」


「明日からは、夫婦だ。それから考えていこう。」


「結婚。結婚。結婚。・・・・・・」


「そんな考え込まないで。」


 二人の夜は更けていく。






 次の日、二人の結婚式は盛大に行われ、途中、スーサ王の剣舞とか、戦利品の自慢とか横道にそれつつも行われた。


 サーラは虎視眈々と、跡継ぎをもうける手立てを画策し、ニーナ陣営は、子供特有の天真爛漫さと美貌を武器に取り入ろうとしていた。


 そんな中、トトリは都市の生活や、また大奥のような集団生活も幼女であるためなかなかなじめずにいた。


 集団生活に入るため、ジャンパースカートのような上からかぶるワンピース、統一した服にも慣れない。


 こうして、彼女たちの戦いも始まるのであった。

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